はじめに  障害者職業総合センター職業センターでは、気分障害等の精神疾患により休職中の方々の職場への再適応を支援し、 離職の防止と雇用の安定を図るため「精神障害者職場再適応支援プログラム(JDSP:Job Design Support Program、以下「JDSP」という。)」を実施し、 職場復帰を目指す気分障害等を有する休職者に対する職場適応能力の向上や職務再設計によるキャリアを形成するための支援技法、 雇用する事業主に対する労働環境整備を推進するための支援技法等、これまで多くの技法の開発に取り組んできました。 その開発成果については、継続して、実践報告書や支援マニュアルに取りまとめるとともに、 職業リハビリテーション研究・実践発表会をはじめ様々な機会をとおして発信しています。  今般開発した「日常生活基礎力形成支援」は、復職準備の過程で適切な生活習慣を確立し、 その確立した生活習慣を休職者自身のストレス対処として復職後も自己管理のもと維持し、 引き続き健康に職業生活を営んでいただきたいとの願いを込めて開発しました。  開発に当たっては、「行動変容ステージ」や「動機づけ面接法」における支援方法を参考に、 習慣化ミーティングや個別面談を通じて、受講者自身の動機づけを強化すること、行動を継続することで得られる達成感による自信や 自己効力感の回復等も支援のねらいとして、取りまとめています。  また、本マニュアルには、支援者の方により分かりやすく、ご活用いただきやすいように「習慣化ミーティング」場面の映像(DⅤD)、 使用する配布資料などのデータ(CD-ROM)も添付しました。  本マニュアルが、気分障害等の精神疾患による休職者の方々の復職支援において活用され、職業リハビリテーションサービスの質的向上の一助となれば幸いです。    令和2年3月 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構   障害者職業総合センター職業センター     職業センター長    望月 春樹 目次 第1章 「日常生活基礎力形成支援」の開発 ・・・・・・・・・・1  1 開発の背景・目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1  2 「日常生活基礎力形成支援」とは・・・・・・・・・・・・・6 第2章 日常生活基礎力形成支援の内容・・・・・・・・・・・・・11  1 講座の概要と実施方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・11  2 行動ノートの概要と記入方法・・・・・・・・・・・・・・・60  3 習慣化のフォローアップの概要と実施方法・・・・・・・・・61 第3章 マニュアルの活用例 ・・・・・・・・・・・・・・・・・81   第4章 実施上の留意事項 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・85 第5章 支援効果と今後の課題・・・・・・・・・・・・・・・・・91 引用文献・参考文献・参考資料・・・・・・・・・・・・・・・・・94 付録 様式集・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・97  1 シート① 生活習慣自己チェック表  2 シート② 振り返ってみよう、生活習慣  3 シート③ 新しい生活習慣を身につけよう(様式・記入例)  4 シート④ 行動ノート(様式・記入例)  5 シート⑤ 行動リストアップ表(様式・記入例)  6 シート⑥ 生活リズム・生活習慣記録表(様式・記入例)   付属CD-ROM、DVDの内容一覧 ・・・・・・・・・・・・・109 第1章 「日常生活基礎力形成支援」の開発 1 開発の背景・目的 (1) ジョブデザイン・サポートプログラムでの取組み  職業センターのJDSPにおいては、職場復帰を目指す気分障害等を有する休職者に対する職場適応能力の向上や 職務再設計によるキャリアを形成するための支援技法の開発を行うとともに、雇用する事業主に対する労働環境整備を 推進するための支援技法の開発を行い、地域障害者職業センター(以下「地域センター」という。) で行われているリワーク支援等に資するために、その成果を伝達・普及しています。  JDSPでは、プログラム受講者(以下「受講者」という。)の障害特性や復職の目標に応じた個別カリキュラムを設定し、 グループワーク、ロールプレイ、個別・集団作業、個別面談といった方法を用いながら、受講者の活動性、ストレス対処、 集団適応、職務遂行、環境適応といった各種スキルの向上のための支援を行っています。  JDSPにおけるプログラムの内容は表1のとおりです。 表1 プログラムの内容 プログラム 内容 グループ ミーティング テーマに基づいてディスカッションを行います。他の受講者との意見交換を通じて、自分自身の休職原因に関連した 事柄について、様々な視点から検討・整理を行います。 SSTを 援用した 対人技能訓練 職場の対人場面を取り上げ、ロールプレイを行うことにより、柔軟なコミュニケーションスキルを身につけ、 普段から自分も相手も大切にする考えや自己表現の習得をめざします。 個別作業 読書やワークサンプル幕張版(OA課題・書類作成等の事務課題・商品管理等の実務課題)等を行い、 集中力、注意力、持続力の向上を図ります。 ジョブ リハーサル (集団作業) 職場を想定して、他の受講者と協力して仕事を進める練習を行います。受講者の一人がリーダー役を担い、 リーダーの指示のもとで、皆で分担して作業を完成させます。模擬的な仕事場面を体験することにより、 自分の仕事ぶりや課題、ストレス等について振り返り、復職後の仕事の進め方について準備します。 運動 ストレッチ、卓球等を行い、緊張の軽減や体力の増進を図ります。 マインド フルネス 毎朝、ミーティング前の10分程度で実施し、体験による感想を共有します。 呼吸法や食べる瞑想(レーズンエクササイズ)等を通し、「今、ここ」に意識を向けることに取り組みます。 個別面談 復職に向けた課題の整理や、プログラムを通じての気づきを踏まえた再発・再休職を防ぐための対処策等について検討します。 (2)開発の背景 ア うつ病と生活習慣との関連(先行研究結果、文献から)  近年、食事や運動といった生活習慣や、メタボリック症候群などの生活習慣病が、うつ病の発症リスクと 関連することを示唆する研究結果が増えています。  1万人超の日本人を対象としたうつ病と体格、メタボリック症候群、生活習慣の関連についての調査研究においても、 生活習慣やそれに基づく身体疾患がうつ病と関連することが明らかにされており、体重の適正なコントロールや、 メタボリック症候群への対処、規則正しくバランスのとれた食事の摂取、運動を心がけることといった生活習慣の改善が、 うつ病の症状改善や予防において重要であることが示唆されています1)。また、不眠がうつ病や不安障害の危険因子となる 可能性があることや、睡眠不足がストレスホルモンの分泌量を増加させることが、いくつかの研究によって報告されており、 睡眠もこころの健康を維持する上で重要であることが示されています2)。  さらに、生活習慣がストレス反応に与える影響を分析した調査では、仕事におけるストレス要因や周囲のサポートを調整した上でも、 「食事の不規則さ」、「就床30分前以降のディスプレイ使用」、「寝酒をすることがあること」、「起床時に寝室が暗いこと」、 「野菜類を毎日食べないこと」、「夕方以降のほぼ毎日のカフェイン摂取」、「毎日朝食を食べないこと」、 「就床1時間前以降の夕食」が、ストレス反応と有意に関わっているという結果が報告されています。このことからも、 ストレス反応を評価するには、職務や職場でのストレス要因や支援体制だけではなく、生活習慣も重要な要因であり、 生活習慣の改善が有効なストレス対策となり得る可能性あることが示唆されています3)。  そして、うつ病等の治療の領域においても、以前から取り組まれてきた①心身の休息、②環境調整(負担になっているストレスを減らす)、 ③心理療法(ストレスにうまく対処できるように指導・トレーニングを行う)、④薬物療法の4本柱に加えて、 五つ目の柱として睡眠、食事、運動などの「生活習慣の指導」が有効であることを示すエビデンスが増え、注目を浴びています4)。 イ 企業担当者、健康管理スタッフ、EAPカウンセラーに対するヒアリング 結果から  JDSPの支援の中で、職場復帰支援の企業側の窓口となる人事担当者や、産業医、保健師といった健康管理スタッフから、 休職者が職場復帰支援施設等を利用し、一時的には生活リズムが安定し生活習慣の改善が図られたとしても、 復職後しばらくすると再度生活習慣の乱れが生じ、再発、再休職に至るケースが少なくないという話がしばしば聞かれます。 このことからも、復職後の生活習慣の維持・管理が復職後の安定勤務の重要な要素であることが窺えます。 企業側は課題と認識していても、人事担当者や上司という立場では、業務外の日常生活上の課題や生活習慣の改善には介入しづらく、 休職者自身の自己管理の意識や取組みが必要になります。  一方、産業医の立場からは、睡眠や食事といった基本的な生活習慣がメンタルヘルスに影響を及ぼすことを休職者に説明し、 生活記録表を用いた規則正しい生活リズムの維持の促しや、生活習慣に課題が見られる際は改善のための助言等、 再発予防に向けた働きかけを行うことが重要と考えていることがヒアリングから確認されています。  また、複数の企業での復職支援に携わるEAP注)カウンセラーに実施したヒアリングにおいても、「 企業が休職者に一番に求めることは、復職後は休まず安定して勤務することであり、そのためには再発予防のための生活習慣の管理や セルフケアが重要となるため、休職者との面談ではそれらについて重点的に指導することが多い」という意見が聞かれています。 注)EAP(Employee Assistance Program:従業員支援プログラム)は、企業に対して、メンタルヘルスの専門家としてアドバイスをしたり、 社員の職場復帰に関する支援を企業の外から提供するサービス機関5) ウ JDSPの受講者の状況、地域センターに対するヒアリング結果から過去の受講者においても、不調や休職に至った経緯について分析すると、 残業や業務量の過多、人間関係等の職場で生じるストレス以外に、睡眠不足や生活リズムの乱れ、朝食・昼食の不摂取からくる集中力の低下、 肥満等の生活習慣病に起因する体調不良等、生活習慣に関連する要因が複数見られました(表2)。  JDSPでは、従来から「生活記録表」を活用し、受講者の生活リズムの安定や体調管理、セルフケアの力の向上の支援に取り組んでいます。 週1回実施する担当カウンセラーとの個別面談において「生活記録表」をもとにした振返りを行い、 生活リズムや余暇の過ごし方に課題が見られる場合は、具体的な対処法について相談し、 復職に向けて安定した生活リズムや適切な生活習慣が確立できるよう助言を行ってきました。  これまでの支援においては、JDSPを利用する中での気づきや、主治医や産業医による指導をきっかけに、 生活習慣の改善に継続的に取り組み、効果が見られる受講者もいる一方、課題は認識しつつも具体的な改善のための行動につながらなかったり、 休職中にいったん習慣にできたことが復職後に途絶えてしまうケースも見られました。  このことから、休職者自身が生活習慣を改善することに対しての必要性や意義を感じ、行動を起こす意欲を持てるようにすること、 また、休職中によい生活習慣を確立できた場合にあっては、復職後も継続していくための方法や工夫について検討しておくことが重要であると考え、 生活習慣の改善に向けた意欲の喚起と取組みの習慣化をテーマとした支援技法の必要性を認識するに至りました。 表2 受講者の不調や休職に至った生活習慣上の課題(一部) ・残業で帰宅が遅くなるが、趣味の時間を確保するために睡眠時間を削り(平均4時間程度)、日中の眠気や頭痛、吐き気などの身体症状につながっている。 ・平日と休日での起床・就寝のリズムや活動量が大きく異なり、生活リズムが整っていないことで、週明けに強い倦怠感がある。 ・ストレスを解消するための過度な飲酒や過食があり、睡眠の質の低下や肥満等の生活習慣病の悪化への影響が見られる。  ・朝食の不摂取や昼食をコーヒーのみで済ますことが習慣となっており、疲労感や集中力の低下につながっている。 ・食生活が、揚げ物や麺類、刺激物など、本人の嗜好に合ったものに偏り、胃腸の不調や高脂血症の症状が出ている。 ・ストレス対処として行っていた趣味で過活動となり、結果として睡眠不足や疲労の蓄積につながり、体調不良や突発休の要因となっている。 ・深夜までインターネットやゲームをしていることで、睡眠リズムの大幅な乱れがある。 ・日中の眠気の要因となっている睡眠時無呼吸症候群や生活習慣病の改善のため減量が必要だが、運動の習慣がなく、食事にも偏りが見られる。    また、職業センターが支援技法開発に関するニーズ把握のため実施している地域センターを対象としたヒアリング調査においても、 リワーク支援における実態として、生活習慣に課題が見られる受講者が一定数いるものの、睡眠、食事、運動等についての基本的な知識や 情報を知らない者も多いことや、休職中に十分な改善に至らず、復職を果たしても睡眠や栄養面に起因する不調で再休職に至るケースがあること等が分かりました。 一方で、健康管理をテーマとした講座やグループミーティングを実施し、情報提供や意見交換を行ったことが、 受講者の生活習慣の改善のきっかけとなったという意見もありました。 (3)開発の目的  前述の背景に加え、生活習慣に起因するストレスは、職場との調整が必要な仕事上のストレスとは異なり、 休職者自身が休職段階から改善に取り組むことで軽減できうるものであるものの、新たな行動を習慣化するまでには一定の時間が必要であり、 生活に変化を与えることでの負荷も少なからず生じるため、こういった点からも、数ヶ月間の職場復帰支援のプログラムで、 他の受講者との支え合いや支援者からのサポートを活用しながら取り組むことは有効であると考えました。  そこで、平成30年度から、心の健康を保つために必要な睡眠、食事、運動等の日常生活での取組みを継続し、 適切な生活習慣を確立・維持することが、復職後の安定勤務を支える大きな要素であるとして、これを「日常生活基礎力」と定義し、 その向上を図ることを目的とした「日常生活基礎力形成支援」技法の開発を行ってきました。  なお、本支援は、JDSPのロジックモデル(プログラムの目的を達成するまでの論理的な因果関係に関する図式)において、 図1に示す位置づけとなっています。       図1 JDSPのロジックモデル 2 「日常生活基礎力形成支援」とは (1) 目的  「日常生活基礎力形成支援」は、受講者自らが目的意識を持ち睡眠、食事、運動等の目標に取り組み、 最終的には自己管理のもと適切な生活習慣を維持することで、復職後に安定勤務が継続できることを目指す支援です。 また、行動を継続することで得られる達成感による自信や自己効力感の回復も支援のねらいとしています。 (2) JDSPでの位置づけ  JDSPにおける位置づけとしては、「講座」はグループミーティングの時間枠テーマの一つとして実施しています。 「習慣化ミーティング」は、実施結果や行動による効果、習慣化に向けた工夫等をグループで共有するもので、 毎週金曜日に実施しています(表3、4)。 表3 グループミーティングの内容 テーマ 内容 ストレス対処講習 ストレス理解 ストレスについて ストレス対処について セルフトークを考えてみよう アセスメント 認知行動療法の考え方 体験整理シートを書いてみよう 体験整理シートを使って話し合ってみよう 認知の工夫 コラムシートを書いてみよう コラムシートを使って話し合ってみよう 行動の工夫 問題解決能力を高めよう 問題解決プランシートを使って話し合ってみよう アンガーコントロール支援 怒りとうまくつきあうために  ワーク基礎力形成支援 価値観を確認してみよう 成功体験を振り返ろう 役割について振り返ろう 今後の働き方について考えよう 日常生活基礎力形成支援  講座①「心の健康を保つための生活習慣」   講座②「よい生活習慣を続けよう」 職場復帰   職場復帰における基本事項   復職にあたって確認しておきたいこと 表4 1週間のプログラム 月曜日  火曜日  水曜日  木曜日  金曜日 10:15~10:30   マインドフルネス、朝のミーティング、ラジオ体操 10:30~12:00   個別作業 個別作業 ジョブ リハーサル(集団作業)SSTを援用した対人技能訓練 習慣化 ミーティング 個別作業 12:00~13:00   昼休憩 13:00~15:00   グループミーティング  運動 ジョブ リハーサル(集団作業) 個別作業 個別作業 15:00~15:15   休憩 15:15~15:30   帰りのミーティング (3) 対象者  JDSPの受講者 ※生活習慣上の課題により通院中の方については、生活習慣改善のために取り組む行動目標について、必要に応じて主治医に確認をしてもらいます。 (4) 構成 日常生活基礎力形成支援は、生活習慣の改善に取り組むための導入としての2回の「講座」、受講者自身で取り組む行動を決めて実施し、 その結果を「行動ノート」に記録する「セルフモニタリング」、行動を持続(習慣化)していくためのモチベーションの維持や 必要に応じた軌道修正等を行うための「習慣化ミーティング」や「個別相談」の「習慣化のフォローアップ」で構成されています(表5)。 支援の流れは、図2の通りです。 表5 日常生活基礎力形成支援の支援概要 支 援 内 容   目   的 講 座 「心の健康を保つための生活習慣」 ・心の病気と生活習慣の関連について知る。 ・睡眠・食事・運動・その他のセルフケア(休日の過ごし方、体調管理、リフレッシュ等)についての基礎知識を得る。 ・自分の生活習慣について振り返り、改善したいことを整理する。 「よい生活習慣を続けよう」 ・習慣化のポイントを知る。 ・受講生が職業生活上の目標を認識する。 ・それを達成するために生活習慣の観点からできることについて  考え、各自取り組むことを決める。 セルフモニタリング   行動ノート」の作成と記録 ・受講者が具体的な目標をシートに記入する。 ・毎日、実施したかどうかの記録をつけ、状況を把握する。 習慣化のフォローアップ グループでの「習慣化ミーティング」 ・1週間の取組み状況や得られた効果について振り返り、次週の 目標について話し合う。 ・コミュニケーションやグループの力を活用し、受講者が行動を 継続する動機づけを行う。 ・行動の継続が滞っている場合は、改善点や必要な対策を考える。  個別面談 ・体調や意欲の確認 ・気分の変化や自責がないかを確認し、必要なフォローを行う。 ・復職後も受講者が適切な生活習慣を継続できるような、仕組み  作りを検討する。 図2「日常生活基礎力形成支援」の流れ (5) 支援のポイント  生活習慣改善の取組みを継続するには、受講者自らが取り組む目的や必要性を認識した上で、 取組みの効果を実感し、行動への意欲を持ち続けられることが重要です。 このことから、日常生活基礎力形成支援では、「行動変容ステージ」や「動機づけ面接法」における支援方法を参考に、 行動変容の準備段階に応じた関わりを行うことや、習慣化ミーティングや個別面談を通じて、 受講者自身の動機づけを強化することをポイントとしています。  なお、支援を進めるに当たっては、うつ病等の障害特性に配慮することにも留意します。  受講者の中には、うつ病等の症状によって気持ちの落込みや無力感が見られたり、休職を失敗経験と捉え 自信や自己効力感が低下している者もおり、行動を起こすことへの躊躇や不安が見られることがあります。 そのため、支援者は、受講者が継続する自信が持てる行動目標を設定することを促し、成功体験を積み重ねられるようにすることが大切です。 自分の健康にとってよいと考えると、難易度が高いと思われる目標を設定したり、複数の行動に一斉に取り組もうとする場合があります。 しかし、達成できない経験が重なると失敗感情を強め、自尊心を低下させるおそれがあるため、 計画した行動を着実に継続することが達成感につながることを講座内や個別面談の場で伝え、 無理なく続けられる目標設定を勧めることが重要です。 また、気力や体力が低下した時でも取り組める目標を別に設けておくことや、取り組めなかった時の気持ちの切替え方を検討しておく等、 気分や体調の波を想定した視点を持ち受講者が目標設定できるように支援をすることも必要です。  また、週1回実施している習慣化ミーティングでは、取組みについてのねぎらいや共感を示し、 できていることに焦点を当てたフィードバックを行うなど、受講者の自己効力感を高められるよう運営することを意識します。 ■コラム■ 行動変容ステージモデル  行動変容ステージモデルは、1980年代前半に禁煙研究から導かれたモデルで、人が行動(生活習慣)を変える場合は、 「無関心期」→「関心期」→「準備期」→「実行期」→「維持期」の5つのステージを通ると考えるものです。 行動変容ステージを一つでも先に進めるためには、それぞれの準備段階に合わせた働きかけを行い、変化への動機づけを行っていくことが必要になります。    日常基礎力形成支援においても、図3に示したとおり、受講者が生活習慣の改善に向けたステージを進んでいけるよう、 各段階に応じた効果的な関わりを取り入れています。  具体的には、「講座」において、情報提供と現在の生活習慣の振返りを行い、生活習慣改善への関心を引き出します。 次に、行動を実行しようと思えるように、改善の目的や必要性の確認による動機づけや、行動を継続するコツについての情報提供を行います。 そして、自己効力感を持ちながら実行してもらえるように、継続する自信のある適切な行動目標を設定し宣言してもらうことにより、 取り組むための準備を援助します。  取組みを開始してからは、「行動ノート」への記録による達成感の醸成や、グループでの「習慣化ミーティング」を実施しながら、 行動の持続とモチベーションの維持を支援します。グループでの振返りには、習慣化に役立つ工夫の情報交換ができる、 互いに取組みについてねぎらい励ましあえる、といったメリットがあり、行動の持続に不安がある受講者の動機づけにも効果的です。 図3 日常生活基礎力形成支援における各準備段階と必要な援助(諏訪1)に基づいて一部改変) 【引用・参考文献】1)諏訪茂樹:「行動変容ステージ」『講義と演習で学ぶ保健医療行動科学』日本保健医療行動科学会(2017) 第2章 日常生活基礎力形成支援の内容 1 講座の概要と実施方法 (1) 概要 目 的 【講座①「心の健康を保つための生活習慣」】 ・心の病気と生活習慣の関連について知る。 ・睡眠・食事・運動・その他のセルフケア(休日の過ごし方、体調管理、  リフレッシュ等)についての基礎知識を得る。 ・自分の生活習慣について振り返り、改善したいことを整理する。 【講座②「よい生活習慣を続けよう」】 ・習慣化のポイントを知る。 ・受講生が職業生活上の目標を認識する。 ・それを達成するために生活習慣の観点からできることについて考え、  各自取り組むことを決める。 実施方法 【時間】1回120分 (10分間の休憩を含む) を2回行います(講座①②)。 【メンバー】受講者2~10名程度 スタッフ数名 ※JDSPでは、3~5名で実施 【進行】支援スタッフ1名が講座の進行を担当し、受講者の人数に応じて複数の支援スタッフがサポートします。 ※人数が多い場合の発表については、3~5名の小グループで行うとスムーズです。 留意事項  支援スタッフは、事前に講座の流れや留意点を確認しておきます。説明用原稿とは別の【進行表】には、 講座の内容に関連する情報(進行方法、留意点、ポイント)を記載しています。支援スタッフは、 事前に目を通しておき、進行の参考にしてください。 (2)講座①「心の健康を保つための生活習慣」について 【進行表】 心の健康を保つための生活習慣 目的 ・心の健康と生活習慣の関連や生活習慣についての基礎知識を得る。 ・受講者自身の生活習慣について振り返り、理解を深める。 準備 ・レジュメ「心の健康を保つための生活習慣」 ・【シート①】「生活習慣自己チェック表」      (P98) ・【シート②】「振り返ってみよう、生活習慣」    (P99)   進行 留意点 1 講座の目的の説明(2分)  目的と進め方を説明します。 2 はじめに (3分)  「日常生活基礎力形成支援」の全体の流れについて説明します。 3 レジュメ「心の健康を保つための生活習慣」について説明  (70分) 4 【シート1】 「生活習慣 自己チェック表」記入(2分)  各自シートに記入してもらいます。 5 【シート2】 「振り返ってみよう、生活習慣」記入(15分)  各自シートに記入してもらいます。 6 【シート2】「振り返ってみよう、生活習慣」の内容発表 (15分)   シート2に記入した内容のうち、まず【できていること・工夫】を発表してもらいます。 他の受講生の発表内容も聞いた上で、【今後取り組みたいこと】について発表してもらいます。 7 まとめ(3分)  セッションの内容について簡単にまとめて伝えます。 次回のセッションでは、習慣化したい行動目標を立ててもらう予定であることを伝えます。   ・スライド16、29、31、46では簡単なワークを行います。所要時間の目安は、各スライドに示しています。 ・シート1については、生活習慣についての自己理解を深める目的であり、発表は行いません。 ・受講者に感想を述べてもらいます。 【留意事項】  本スライドに掲載している説明資料は、一般的に言われている内容であり、個々人の病状や疾患によっては当てはまらない内容があります。 ご使用になる時は、受講者の状況を踏まえ、必要に応じて主治医にも相談の上、適宜加工の上ご活用ください。 以下に一つの参考例として、スライドと説明文を掲載します。      これから「心の健康を保つための生活習慣」の講座を始めます。    この講座では、心の健康を保つために必要な生活習慣についての一般的な知識を 確認するとともにご自身の生活習慣について振り返っていただきます。          講座の受講にあたっての留意事項と私たちからのお願いです。  これから説明する内容については、皆さんの健康に大きくかかわるものがたくさん含まれています。   しかし、これらは一般的によく言われている内容であり、個々人の病状や疾患によっては当てはまらないものや  今取り組むことが適当でないものもあります。  ご自身にとって適切かどうかについては、主治医ともよく相談し判断してください。   目的と進め方は、スライドのとおりです。      本日の講座の内容です。  はじめに、支援全体の流れについて説明してから、スライドの3つの内容について、説明をしながら進めていきます。  講座の内容に入る前に、今後の支援の進め方等について説明します。  「睡眠」・「食事」・「運動」、「その他のセルフケア」等の日常生活の取組みや適切な生活習慣の継続は、  復職後の「健康的で安定した生活」を支える大きな要素です。本支援では、それらを「日常生活基礎力」と定義しています。    「日常生活基礎力」を向上させるためのこの「日常生活基礎力形成支援」の流れを説明します。  まず、生活習慣の改善に取り組むための導入としての2回の講座を受けていただき、  皆さんが習慣化したい行動を決めて、実際にやってみます。    そして、日々の実施状況を各自「行動ノート」に記録し、週1回、その行動を持続(習慣化)させるための 「習慣化ミーティング」に参加し、よい生活習慣についてより理解を深め、習慣化を目指していきます。  日常生活基礎力形成支援では、これら2回の講座と行動ノートの記録、習慣化ミーティングを通じ、  よい生活習慣の検討と習慣化を図っていきます。        休職中に生活習慣を振り返る意義について、説明します。  まず、1点目です。  休職に至る経過の中には、睡眠、食事、運動習慣等の生活習慣からくるストレス、不調等が大きく  影響している場合が少なくありません。  しかし、休職中に生活習慣の改善に取り組むことによって、睡眠リズムの安定、体調・体力の改善、  回復が見られている方も多くいらっしゃいます。    例えば、今までJDSPを受講していただいた受講生の休職前の生活習慣と取組みの結果の一部をスライドに示します。 (※スライドの(1)~(3)について、必要な部分をピックアップしてお伝えください。)   日々の生活習慣に取り組むことで、復職後の安定した職業生活への第一歩となることもあります。   よい生活習慣を身につけ、それを復職後も継続していけたらよいと思いませんか?        2点目は、うつ病の治療の分野で、「生活習慣」の改善の効果が改めて見直され、今まで以上に注目されていることです。  3点目としては、生活習慣は休職中の今、自分自身で変えられるものであるということです。    休職に至る要因は様々あり、改善のためには会社や他者との調整が必要なものもありますが   生活習慣が要因のものについては、「今」「自分で」取り組むことで改善が可能です。    休職中の今は、生活習慣改善のための取組みのチャンスです。      それでは、これから、睡眠、食事、運動、その他のセルフケアに関する「よい生活習慣」について整理していきましょう!    まず、「睡眠について」説明します。  よい睡眠を取ると、朝起きた時に脳内で作られる「セロトニン」の分泌量が多くなります。  セロトニンは、心を安定させて意欲を出させたりする役割があります。  うつ病は、このセロトニンが不足することによって発症すると考えられています。    また、睡眠中には、成長ホルモンなどが分泌され、成長の促進だけでなく、  身体の疲労回復や修復に重要な役割を果たすと考えられています。  風邪をひくと眠くなり、ぐっすり眠ると風邪の回復が早まることは日常生活で経験されたこともあるかと思います。  風邪の時の睡眠は体をリラックスさせ、血管拡張を起こさせるとともに、成長ホルモン等の身体の回復を促すホルモンを  増加させ病気の回復促進につながると言われています。    これ以外にも、精神機能の疲労の回復、記憶力・集中力・思考力の保持、ホルモンの調整による食べ過ぎ防止等の役割が知られています。     では、睡眠が不足するとどうなるでしょうか。              1日だけの睡眠不足では、さほど重大な影響はないかもしれませんが、日々の睡眠不足が重なると「睡眠負債」と言われる状態となり、  うつ病のリスクや生活習慣病のリスク、そして不注意等からくるミスや重大な事故につながるリスクが高まると言われています。?    それでは、質のよい睡眠のための3つのポイントを見ていきましょう。  一般的には、どのくらいの睡眠時間が必要と言われているのでしょうか?     「睡眠障害の対応と治療ガイドライン第3版」によると、実際に夜間眠っている時間を年齢ごとに分析した研究の結果は、  スライドの上の図の通り、加齢によって、睡眠時間が変化していきます。    一方で、厚生労働省が実施した平成29年の国民健康・栄養調査によると、睡眠で休養が十分に取れていないと回答した人の割合は、  30代で27.6%、40代で30.9%、50代で28.4%となっており、働き世代の3~4人に1人は、睡眠で休養が十分に取れていないことが分かります。  睡眠不足の解消は、勤労者の切実な問題といってよいかもしれません。  自分にとって必要な睡眠時間は、どのように知ることができるでしょうか?  「睡眠障害の対応と治療ガイドライン 第3版」によると、必要な睡眠時間は、人それぞれで、日中の眠気に困らなければ十分とされています。    ただ、各種の疫学調査では、6時間以上8時間未満程度の睡眠時間の人が高血圧、糖尿病、うつ病等のリスクが低いと報告されています。  では、みなさん、睡眠不足がないか、チェックしてみましょう。(30秒くらい時間を取る)  もし、一つでもチェックがついた方は、ご自身にとって必要な睡眠時間を見直してみましょう。  ポイントの2つ目は、質のよい睡眠につながる過ごし方です。    朝の過ごし方として大切なのは、 (1)毎日決まった時間に起きることです。  毎日一定の時間に起きることで生活のリズムが整いやすくなります。また、休日も同じ時間帯に起きることが大切です。  どうしても寝たい場合でも、寝坊は2時間以内に抑えることが大切と言われています。  起床が遅くなると、就寝時間もずれ、生活リズムが乱れる原因となります。 (2)朝起きたら、カーテンを開けて自然の光を部屋の中に取り込み、体内時計をリセットしましょう。  朝必要な日の光を浴びないと、体内時計のリズムがずれていきます。 (3)朝食を食べることも、目覚めを促進するのに有効です!  日中から夕方までの過ごし方としては、   (1)適度な運動をすることです。  自分にとって適度な運動量や運動方法を確認し、取り組んでいけるとよいでしょう。  汗ばむ程度の30分程度の運動は睡眠の質の向上につながりやすく、おすすめです。 (2)昼寝をすることも眠気の解消や作業能率の向上に効果的です。  ただ、昼寝をする場合は、夜の睡眠への影響を避けるためにも、30分以内にとどめ、15時までにするとよいと言われています。  夜から寝る前の習慣です。   (1)入眠時に胃腸が活発に活動していると、睡眠の妨げになるので、寝る3時間前には食事を済ませておくとよいと言われています。 (2)入浴で体を温めることもおすすめです。上がった体温が下がってくる時にスムーズに入眠できると言われています。  寝る直前に熱いお湯に入ると体温が上がったまま下がらず、入眠しにくくなるため、就寝前30~60分に入浴する際には  40度前後のぬるめのお湯に入るのがよいと言われています。 (3)寝る前にリラックスタイムを作ることもおすすめです。ご自身にあったリラックス方法を見つけ、  心身をリラックスさせることが寝つくために重要と言われています。   また、PCやスマートフォンから発せられるブルーライトには、睡眠の質や目覚めを悪化させることがあるので、避けた方がよいと言われています。     ポイントの3つ目は、「睡眠に悪影響を及ぼす」カフェイン、タバコ、アルコールについて知ることです。 (1)カフェインは摂取してから、4時間程度覚醒作用が続くと言われています。  個人差がありますので、更に覚醒作用が続く方もいらっしゃいますので、少なくとも就床前4時間のカフェイン摂取は避けましょう。  コーヒー以外にも紅茶や緑茶にもカフェインが含まれています。  飲みたい場合は、ノンカフェインの飲料に代えてみるのもおすすめです。 (2)たばこには、リラックス効果もありますが、同時に覚醒作用もあります。その覚醒作用は、吸引直後から数時間続くと言われています。  少なくとも就床前1時間の喫煙は避けましょう。 (3)「寝酒(ねざけ)」として、眠るためにアルコールを飲まれる方もいるかもしれません。  アルコールを飲むと寝つきがよくなることもある一方で、睡眠が浅くなり、利尿作用もあることから中途覚醒、早朝覚醒しやすくなると言われています。   不眠で悩まれる場合は、主治医に相談しましょう。      続いて、「食事について」です。  国立精神・神経医療研究センターが行った「うつ病経験のある群」と「うつ病経験のない群」との比較を行った  1万人以上を対象としたウェブ調査の解析結果では、「うつ病経験のある群」では、肥満・糖尿病、高脂血症などの  メタボリック関連疾患の割合が有意に高いことが報告されています。  また、同調査では、「うつ病経験のある群」では、「うつ病経験のない群」と比較して、  体重不足(BMI18.5未満)の割合も有意に高く、正常体格(適正体重BMI 18.5~25未満)の割合が有意に低いことも報告され、  体重のコントロールの重要性についても指摘されています。  同センターの精神科医 功刀浩氏によると、過去の研究を総合的に解析すると、「肥満・メタボリック症候群は、  うつ病のリスクを1.5倍に高め、逆にうつ病は、肥満・メタボリック症候群の発症リスクを1.5倍に高める」とされています。  肥満・メタボリック症候群・糖尿病等を治療するとうつ病の症状も改善する患者さんが少なくないと言われていることからすると、  食生活等の見直しがうつ病の回復および予防に効果的と言えます。      また、同調査の結果では、うつ病の経験がある人はそうでない人に比べて朝食を毎日食べない人が多く、   間食や夜食の頻度が高いこと、そして運動習慣も少ないという結果が示されました。  うつ改善のためのよい生活習慣として、朝食を食べる、日中は体を動かす、夕食は軽めで間食や夜食は控えることなどの   規則正しい生活が大切であることを示唆しているとの見解が示されました。    それらを踏まえ、健康的な食生活の3つのポイントについて一般的に大切だと言われていることを確認しておきましょう。    なお、食事制限のある方や疾患によって避けなければならない食品の指示を受けている方は、必ず医療機関のスタッフの指示に従いましょう。  ポイントの1つ目は、「必要な栄養素を知ろう」です。    厚生労働省の推進する「スマート・ライフ・プロジェクト」では、バランスのとれた適切な量と質の食事を、   1日3食規則正しく食べることが健康な体の土台となるとして、毎日3食、毎食「主食」「主菜」「副菜」を  組み合わせて適切な量の食事をバランスよく取るように推奨しています。    加えて、1日1回「牛乳・乳製品」、「果物」を取るとよいと言われています。     また、心を元気にする代表的な栄養素(タンパク質、食物繊維、鉄、葉酸)が紹介され、その頭文字を取って「タシテヨ」が推奨されています。  その他の心を元気にする栄養素として推奨されているものについても図にまとめました。  併せて、参考にしてください。    また、食事はよく噛み、ゆっくりと楽しみながら味わって食べることで、消化吸収もよくなります。  さらに、食べた内容を記録する、体重を計測する等で、食生活に意識を向けることができます。  食べる瞑想とも言われる「マインドフルネスイーティング」については、後ほど説明します。          ポイントの2つ目は、「必要なエネルギー量を知る」です。    1日のエネルギー摂取量の目安は、身長やその方の身体活動量によって異なります。  ご自身の目安について、例を参考に計算してみましょう。  (3分くらい時間を取る)  いかがでしたか?    ご自身が普段食べているカロリーについて、外食やスーパー等でのカロリー表示も参考にしてみましょう。         さて、太る原因について見ていきましょう。  それは、「消費エネルギーと摂取エネルギーとの収支バランスの崩れ」です。    摂取し過ぎたエネルギーは、脂肪となって蓄積され、肥満の要因になります。            ポイントの3つ目は、「適正体重を知る」です。    適正体重を知る方法として、Body Mass Index(BMI、体格指数)という指標があります。  厚生労働省による「日本人の食事摂取基準(2015年版)」では、目標とするBMIの範囲が定められており、  この範囲の体重が最も健康的と考えられています。    BMI 22は、目標範囲の真ん中の値であり、適正体重の目安とされています。  例を参考に、適正体重の目安を計算してみましょう。   (1~2分くらい時間を取る)  いかがでしたか?  ご自身のBMIについても時間のある時に計算してみると参考になります。    続いて、「運動について」説明します。  運動等の「身体活動を増やす」ことで得られる効果について確認しましょう。  「身体活動」とは、安静にしている状態よりも多くのエネルギーを消費するすべての動作を指します。  体力の維持や向上を目的として計画的・継続的に実施される「運動」と日常生活における労働、家事、  通勤等の「生活活動」との2つに分けられます。  厚生労働省の「健康づくりのための身体活動基準2013」によると、身体活動を増やすことは図のような様々な効果があり、  それによって私たちの生活の質を高めることができるとしています。  一方で、身体活動不足は、肥満や生活習慣病の要因であるとして、健康増進の観点から身体活動を増やすことを推奨しています。    なお、主治医より運動等の制限を受けている方は指示に従い行うようにしましょう。    また、厚生労働省「生活習慣病予防のための健康情報サイト」でも紹介されていますが、運動習慣がある人には不眠が少なく、  習慣的に運動を続けることによって、寝つきがよくなり、深い睡眠が得られるようになると言われています。  運動の強度や時間帯に留意しながら行うと効果的です。          では、身体活動量を増やすための2つのポイントについて説明します。  ポイントの1つ目は運動習慣を持つことです。    ※「運動習慣のある人」とは、厚生労働省の定義で「1回 30 分以上の運動を週2回以上実施し、1年以上継続している人を指します。    厚生労働省「国民健康・栄養調査(平成29年)」によると、運動習慣を持っている人の割合は  男性で 35.9 %、女性で 28.6 %と、3~4人に1人の割合です。    また、男性で30 歳代 女性では 20 歳代で最も低く それぞれ14.7 %、 11.6 %です。  若い世代は、深刻な運動不足と言われています。  先ほどの結果にある通り、運動習慣を持つのはなかなか簡単ではありません。  定着させるための5つのコツを示しましたので、参考にしてください。  ポイントの2つ目は、「生活の中で活動量を上げる」です。  厚生労働省の推進する「アクティブガイド-健康づくりのための身体活動指針-」では、「運動」でなくても、  今よりも10分多く体を動かすと様々なリスクを減らすことができるとして、体を動かすことを推奨しています。    また、毎日の「プラス10分」の取組みが積み重なり、1年間で1.5~2.0キロの減量効果も期待できると言われています。    まずは、取り入れられそうな活動から試してみることをおすすめします。  また、活動量を上げるためには「座位よりも立位で過ごす時間を増やす」ことも大切です。    なるべく座位を減らして立位、歩行、その他の日常生活活動を積極的に行うことも肥満を予防するポイントと言えます。  比較的負担なく取り組むことができるので、生活の中で無理なく取り入れられそうなことを探してみてもよいかもしれません。  続いて、「セルフケアについて」説明します。    セルフケアとは、「自分でできるストレス対処」のことです。   (※セルフケアの解説については、スライドの必要な個所をピックアップしてご説明ください。)    自分の体調に早めに気づき、積極的に「セルフケア」を取り入れてみませんか?  その他の(睡眠・食事・運動以外の)セルフケアのポイントについて2点説明します。  ポイントの1つ目は、「自分の体調に早めに気づくためのヒント」です。    生活リズムや気分・疲労を記録しましょう。    受講生の中には、なかなか自分の体調に気づきにくい方もいらっしゃいます。  大丈夫と思っていたら、突然体調が悪化して気づいた時には再発をしてしまう・・・といった事態は避けたいものです。    体調の変化は、睡眠・食事のリズム、活動や気分・疲労等に表れてくることが多いので、  日々、記録して、自分の変化に気づけるようにしましょう。    自分の体調に早めに気づくためのヒントとして、 「マインドフルネス」も参考になります。  「マインドフルネス」とは・・・  「今」に心を向けている状態を指します。  「マインドフルネス」では、体を使って「瞑想」することで、あちこちに向かう心を  「今この瞬間、この場に存在する自分の体」に取り戻していきます。    例として、お皿を拭いている場面を想像してみましょう。  まず、呼吸を整え、体が受け取る細やかな感覚を注意深く観察します。  目で観察します。  鼻で観察します。  耳で観察します。  手で観察します。  徐々に心と体が一体になり、マインドフルネスな状態になります。  「マインドフルネス」瞑想の方法の代表的な例を挙げました。  呼吸瞑想  ヨーガ瞑想  座る瞑想  食べる瞑想  ボディスキャン瞑想  歩く瞑想    等があります。  興味のある方は、様々な書籍等がありますのでご覧いただくことをおすすめします。  「食べる瞑想」は、食事についての説明の中にも触れましたが、五感に意識を向けながらゆっくりと味わうことで、  食への衝動をコントロールし、喜びと満足が得られるようになります。    瞑想を行うことで、徐々に微細な変化を感じ取れるようになり、自分の体調の変化に気づくことができるようになり、  早めのセルフケアへつながると言われています。  ポイントの2つ目は、心と体の回復のためのヒント 3つの「 R 」です。    3つのRとは、レスト(Rest)、レクリエーション( Recreation )、リラックス( Relax )のことです。  日ごろから3つのRを取り入れ、心身が疲れ切ってしまないように早めに対処しましょう。    それぞれ、ご自身で実際にやってみて効果があったもの、今後取り組んでみたいものにチェックを入れてみましょう。  他に思いつくものがあれば、書いてみましょう。 (3分ほど時間を取る。)  これらのリストを意識し、早めに対処として取り入れていけるとよいですね。  「気をつけたい休日の過ごし方」に  ついて説明します。  先ほど、3つのRについて説明しました。 (1) 3つのRが偏りすぎるとその効果は  あまり感じられない、もしくは逆効  果になることもあります。  (※ 「レスト」「レクリエーション」「リラッ  クス」に記載されている内容を必要に  応じてピックアップしてお伝えください。) (2)自分の体調や気分を把握し、主治医の助言に従いながら、それに合わせて行うことが大切です。  特に、レクリエーションとして取り組んだはずの趣味の活動が疲労やストレスを引き起こす ことには留意が必要です。    例も参考にしながら、疲れを残さないように実施していきましょう。    さて、  今まで睡眠、食事、運動、セルフケア等について説明しました。  ここで、ご自身の生活習慣について、シートを活用して振り返っていきたいと思います。  それでは、ご自身の生活習慣についてチェックしましょう!  1:【シート①】「生活習慣自己チェック表」にチェックを入れましょう。  2:【シート②】「振り返ってみよう、生活習慣」に記入しましょう  (1、2で7分間程時間を取る)  ※記入が概ね終わったら、  3:内容(感想)をグループでシェアしますので、ご発言いただける方からお願いいたします。  ※【シート②】に記入した内容のうち、まず【できていること・工夫】を発表してもらいます。  他の受講生の発表内容も聞いた上で、【今後取り組みたいこと】について発表してもらいます。  次回の講座では、ご自身で取り入れたいと思う新しい生活習慣について、ご自身で習慣化できるような計画を立てていきましょう。  また、はじめのスライドでも伝えましたようにこれまでの説明した内容については、  皆さんの健康に大きくかかわるものがたくさん含まれています。   しかし、これらは一般的に言われている内容であり、個々人の病状や疾患によっては当てはまらないものや  今取り組むことが適当でないものもあります。  自分にとって適切かどうかについては、主治医ともよく相談し判断してください。 (3)講座②「よい生活習慣を続けよう」について 【進行表】 よい生活習慣を続けよう 目的 ・習慣化のポイントを知る。 ・受講生が職業生活上の目標を達成するために生活習慣の観点からできることについて  考え、各自取り組むことを決める。 準備 ・レジュメ「よい生活習慣を続けよう」 ・【シート③】「新しい生活習慣を身につけよう」(P100) ・【シート④】「行動ノート」 (P102) 進行   留意点 1 講座の目的の説明(2分)  目的と進め方を説明します。 2 レジュメ 「よい生活習慣を続けよう」1、2、3について説明(50分) 3 レジュメ「よい生活習慣を続けよう」4(1)について説明及び  【シート③】「新しい生活習慣を身につけよう」の記入(40分)  レジュメについて説明しながら、受講生に【シート③】「新しい生活習慣を身につけよう」のステップ1~3を記入してもらいます。 4 【シート③】「新しい生活習慣を身につけよう」の発表(10分)  シート③に記入した内容のうち、ステップ1を発表してもらいます。 5 レジュメ 「よい生活習慣を続けよう」4(2)(3)について説明(10分) 【シート④】「行動ノート」を配布し、見てもらいながら説明します。 6 まとめ(3分)  セッションの内容について簡単にまとめて伝えます。  シート③で決めた行動目標への取組みを開始したら、「行動ノート」に記録すること、週1回「習慣化ミーティング」に参加することを伝えます。 ・スライド13では簡単なワークを行います。所要時間の目安は、スライドに示しています。 ・時間に余裕があれば、ステップ2~3も発表してもらいます。 ・講座の時間内で行動目標を考えられなかった場合は、個別相談で相談して考えてもよいこと、  行動計画の内容については、取組みが症状等に問題ないか等を主治医に確認するように伝えます。 【留意事項】  本スライドに掲載している説明資料は、一般的に言われている内容であり、個々人の病状や疾患によっては当てはまらない内容があります。  ご使用になる時は、受講者の状況を踏まえ、必要に応じて主治医にも相談の上、適宜加工の上ご活用ください。  以下に一つの参考例として、スライドと説明文を掲載します。    これから日常生活基礎力形成支援の②「よい生活習慣を続けよう」の講座を始めます。  この講座では、前回の講義を基に、ご自身で取り入れたい行動を決め、習慣化するためのコツ等を学んでいきます。  この講座の目的と進め方について説明します。   目的は、 ・習慣化についての基礎知識を得る ・ご自身の行動目標を決める ・実践するための行動計画を立てる  です。  進め方は、まずレジュメを説明し、その後、皆さんにそれぞれ生活習慣として取り入れたい行動の実施計画を立てていただきます。  また、決めた計画を実施し、続けていくための今後の支援の流れ等についても説明します。    本日の講座の内容です。  この4つの内容について、一つずつ説明します。  それでは、さっそく内容に入っていきましょう  まず、1つ目は、「習慣とは何か」です。 「習慣」を辞書で調べてみると、 「長い間、繰り返し行われていて、そうするのが決まりのようになっている事柄。また繰り返し行うこと。」 「学習により、後天的に獲得され、繰り返し行われた結果、比較的固定化するに至った反応様式。」とあります。    また、習慣の特徴としては、まず第1に、①「やるか、やらないか」をその都度判断することなく、「●●することが当たり前」の状態になることです。  それによって、その行動を起こすのに大きな労力がかかる、面倒くさい、等と感じなくなります。  次第に、その行動を「やらないと違和感を覚える」ようになり、「その行動を行う方が自然」な状態になります。    第2に②意思の力が必要とされずに、無意識に行っていたりすることです。    例えば、「歯磨き」は習慣化されていると思いますが、「今日は、磨こうか磨かないか?」等判断せずに、 「食事が終わったらすぐ」とか「寝る前に」等決まった流れで行っていることが多いと思います。  しばしば、食事が終わったら無意識にやっている場合もあるでしょう。  このように、習慣化されたものは、生活の一部となり、労力なくこなすことができるようになります。   歯磨きは、小さな習慣ですが、仮にそれを行わないと虫歯や歯周病等の重大な病気につながり健康を損ないかねません。  毎日の小さなよい生活習慣が健康を保っているのです。    「習慣」が身につくまでには、どんなことが必要でしょうか?それは、一定期間繰り返し行うことです。  どのくらいの期間繰り返すことが必要かには諸説ありますが、有名な実験では、ロンドン大学で行われた研究が挙げられます。    そこでは、習慣化に必要な日数は、取り組む人や習慣の種類によって開きがあり、「ごく簡単な習慣で18日、 比較的大きな生活様式の変化を伴う行動で254日」であり、平均すると66日間という結果でした。 簡単で負荷の少ない行動ほど定着しやすく、複雑で負荷の大きい行動ほど習慣化に時間がかかると言えます。  はじめはなるべく負荷の少ないものから始めていくと習慣化しやすいとも言えるでしょう。      さて、ではなぜ習慣化が大切なのかを確認していきましょう。   まず1点目です。この図は、ストレス対処講座でも出てくる「うつ状態の心の仕組み」を示したものです。   うつ状態の時には、うつ的な思考や行動がうつ気分を生じさせ、うつ気分がますますうつ的な思考や行動を 生じさせるといった悪循環である「うつ病スパイラル」が生じやすくなります。 ここで、何かしらの行動を起こすことができると、気分も思考も変えていくことができる可能性が高まります。  よい生活習慣が身についていれば、あまり面倒くさい気持ちやおっくう感を感じずに行動ができます。  習慣化された行動を行ったことによって、リフレッシュしたり、気分が明るくなったり、元気が出てくることもあると思います。  例えば、「朝食を食べる」という習慣がついていれば、少し体調が悪くても、朝食を食べることで元気が出ることが期待できますが、 朝食を食べることが習慣化されていないと、食べることもおっくうになり、ますます元気を失ってしまうかもしれません。 また、運動が習慣化されていたら、動いているうちに気分がリフレッシュしてくることもあるでしょう。 このように、よい生活習慣は、体調悪化を予防するだけでなく、体調が崩れそうになった時に、自然に健康的な心と体に戻しやすくなる効果もあります。  2点目は、「よい生活習慣は、安定した職業生活に欠かせない」ものだからです。  産業医の先生からのヒアリング等では、復職後の課題として、ある程度職場に慣れてきたころからまた生活習慣が乱れ、 再休職に至るケースが少なくないこと、産業医面談では、それらの確認が重要なポイントであるとの話をきいています。    復職後は、生活環境が変わり徐々に忙しくなっていきます。その際、よい生活習慣が習慣化されていないと、元の不健康な生活リズムに戻りやすいのです。    そのため、休職中の今、復職後を見据えた「よい生活習慣づくり」に取り組むことがとても重要であると言えます。  習慣を変えるにはどのような条件が必要でしょうか?  「習慣を変える」といっても、すぐに変えられるわけではありません。    先ほど説明したように、一定期間繰返し、生活の一部として取り入れられることが必要です。 習慣化のために必要な条件は大きく分けて3つあると言われています。    1つ目は、意欲です。  その生活習慣を取り入れたい、継続したいという気持ちがあるかです。    2つ目は、知識です。  自分の健康を害するような生活習慣はいずれ健康を損なうことにつながります。 自分にとって必要な生活習慣とは何か、しっかりと学習することが必要です。    3つ目は、技術です。  意欲があって、何を自分で取り組むべきかという知識があっても、それを続けていく技術がなければ、三日坊主、 リバウンド等途中で挫折してしまうことにもなりかねません。続けるためのコツを知ることも大切です。    それでは、これらの3つの条件について、一つひとつ確認していきましょう。          習慣を変えるための条件の1つ目は、「意欲」です。    ご自身が取り入れたい生活習慣がどこにつながっていくのかを考えることはとても大切です。    例えば、「毎日、24時までに寝る」という行動は、それだけを見ると「夜やりたいことがゆっくりできない」 等のマイナス面が気になるかもしれませんが、それが生活リズムの安定につながり、 復職後の安定した職業生活を維持することにつながれば大きな意味を持つと思います。 そして、再発せずに健康的に生活を送ることができたら、目指したいご自身の目的はありませんか?  人によっては、「誰かに喜んでもらいたい」ということかもしれませんし、「自分自身が楽しさや幸せを感じたい」 ということかもしれません。 日々の行動は小さいものであっても、それを継続し生活習慣に取り入れることで、復職後の再発防止等の長期的な目標の達成、 そしてそれによって自分が成し遂げたい目的に近づくことができるようになります。    そう考えると、取り組もうという意欲も感じられるのではないでしょうか。      それでは、ご自身の目的をご自身の言葉で書いてみましょう。    「長期的な達成目標」をご自身の言葉で書くとどうなるでしょうか?  前回の講座でもご自身の生活習慣を振り返りましたが、ご自身で改善したい中期的な達成目標や取り組みたいこと等を枠の中に書いていきましょう。  (7分ほど時間を取ります。)    必要に応じて次のスライドの記入例も参考にしてください。    記入例です。    意欲を持って取り組むためには、その目標が自分自身にとって「達成できそうだな」と感じられることが重要です。    まず、習慣化したい行動を決める際には、それが3か月後にも継続できている自信がどのくらいかをパーセンテージで考えます。  そして、それが80%以上のものを選んでみましょう。    高すぎる目標は、継続への不安が強くなることから、意欲を持ちにくいことが言われています。 もし、達成に自信がない場合は、少し負荷を下げた目標を再設定し、それが継続できたら、徐々に目標を上げていく方法もあります。    そして、複数のことを同時に行うのではなく、「一つに絞って」行います。 新しい行動目標に取り組むことは、ストレスを伴うこともありますし、始めは意識的に労力をかけて取り組むことが必要となります。 複数のことに同時に取り組むと、結果的に意識が拡散してしまったり、エネルギー切れになって続かなかったりということが考えられます。  まずは一つのことに絞って行うことが大切です。    続いて、習慣を変えるための条件の2つめは、「知識」です。  まず、  主治医や産業医からの指導内容を確認し、必要なことに取り組みましょう。  今年(または去年)の健康診断の結果はいかがでしたか。体重等の他にも、飲酒、運動習慣等の指摘事項がなかったでしょうか。 客観的なデータを基にご自身の体調管理のために必要なことに、さっそく取り組んでみることも大切です。 また、取り組む内容については、正確な知識を学習することも大切です。主治医、産業医からの情報や信頼性のある情報源、 書籍や医療機関が出している情報等根拠のある内容を参考にしましょう。不安があれば、主治医や産業医にも確認してみるとよいでしょう。    第1回目の講座で紹介した内容は、精神科医の書籍や学会での情報、厚生労働省や公的機関の刊行物、 ホームページ等一般的で信頼できる内容を中心に作成していますので、参考にしていただけたら幸いです。          習慣を変えるための条件3つ目は、「技術」です。  行動を継続していくためには習慣化する仕組みを知ることも大切です。    まず、私たちの行動が継続される仕組みを「メリット」「デメリット」の視点から見てみましょう。  私たちは、やって「よかった」と思えるつまり、「メリットがある」と、その行動を続けますし、 やって「イヤだった」と思う、つまり「デメリットがある」と続きません。    例えば、朝のラジオ体操を例に考えてみましょう。小学生の頃、夏休みに毎朝公園にラジオ体操に行っていた思い出のある方もいるかもしれません。     例えば、朝ラジオ体操に行くことと、その間家でゆっくりすることを考えると、どちらにメリットがあるでしょうか? なかなか行きたがらない人の、「メリット」「デメリット」を比べてみましょう。  家で過ごすと、ゆったり好きなテレビを見る、快適な部屋で過ごす等のメリットがありそうです。 一方で、ラジオ体操に行くように言われて行ったとしても、外の暑さ、疲れ等はデメリットになるでしょう。 誰とも交流がなければ行こうというモチベーションにはつながらないかもしれません。  結果、ラジオ体操に行くのは一度きり、その後は家から出ようとしないということもあるかもしれません。          一方でラジオ体操に行くことを続けている人はどうでしょうか?    家で過ごすメリットは変わらないとして、ラジオ体操に行くと出席カードにシールを貼ってもらったり、 仲間とおしゃべりができたり、指導者の方から「よく来たね」と言われると、「また行きたい!」と思って、 たとえ少し暑かったとしても続けられるかもしれません。 また、実際にラジオ体操をしてみたら、体がすっきりし、「爽快感」という効果を実感できるとそれもメリットとなります。    このように、同じ行動であっても、その行動をすることにより得られるメリットやデメリットの大きさ等によって、 その行動が継続していくかどうかは左右されるのです。    これは、その行動の目標設定や方法によっても変わってきます。  例えば、運動不足を解消したいと運動を始めた人が「毎日、夕食後に1時間走る」という目標で取り組んだとします。  運動をしていない人が急に走るとどうなるでしょうか?    強い疲労感や息苦しさ、足の痛み、腹痛等の不調を感じやすく、達成感等の「メリット」よりも「デメリット」が大きくなりがちです。  結果、1日、もしくは3日坊主でやめてしまうこともあるでしょう。          同じように、運動不足を解消したいと運動を始めた人が、目標設定をする際に、 ご自身の状況にあった続けられそうな目標設定ができたとしたらどうでしょうか。    その人は、まずは、「休日に、家族と近所の川べりを30分歩く」という目標で取り組んだとします。  普段運動をしていない人でも、ゆっくりとしたウォーキングであれば、そこまでの疲れや体の痛みは感じないでしょう。    ウォーキングしながら、会話やきれいな景色を楽しんだりしていくうちに、あっという間に30分が経ってしまうかもしれません。  そうすると、歩くこと自体が楽しくなり、続けていくことで徐々に体力が向上し、今度は平日にも運動を取り入れられるようになるかもしれません。    急激に無理することなく、運動を楽しみながら続けることで、体を動かすことそのものの楽しさに気づき、 自分自身のよい変化を感じられるようになれば、続けていく大きなモチベーションになります。    まずは、ご自身にとって無理のないところから、目標設定をし、続けられるような楽しみを見つけることもおすすめです。          さて、「よい生活習慣を身につければよいとは分かっているけど、続けられない」、 または、「ついつい悪習慣を続けてしまう」ということはありませんか?    例えば、つい夜更かしをしてしまう人の例を見てみましょう。    「明日も仕事があるし、早く寝ないといけないな。」と思っても、ゲームやテレビ、そして自分自身で使える時間が楽しく、 ついつい夜更かしをしてしまうことがあるかもしれません。  早く寝ることで、「楽しい時間を過ごせない」、「つまらない」という気持ち、 時間を焦らされるような「あわただしい」思いをしたくない気持ちもあるかもしれません。  ただ、次の日はどうでしょうか。    夜更かしをすると、頭がボーッとしたり、体がだるくなったりする寝不足の症状が出ることもあると思います。 更に、その習慣を続けてくと、体調悪化や気分の落込み等も継続的に見られるようになるかもしれません。    早く寝ると、次の日には体も軽く、気分も壮快、作業効率も上がる、 体調にもよいということを知っているのに・・・なかなかやめられないという場合もあるでしょう。    私たちの行動は、「すぐに得られるものに影響されやすい」という特徴があると言われています。 夜更かしもそうですし、「ついつい食べ過ぎてしまう」、「やらなければいけないことがあってもついダラダラ過ごしてしまう」等もその例です。  ただ、改めて今、生活習慣を見直すためには、その習慣を続けていった場合の長期的なメリット、 デメリットについてもしっかり理解し、長期的目標である、「健康的で安定した職業生活を送ること」や、 自分の達成したい目的等の長期的な見通しを持ちながら、よい習慣づくりに取り組んで行くことが必要でしょう。    それでは、習慣化に向けた取組みを説明します。  実際にご自身で取り組む行動目標を決めていきましょう。    その際、3つのステップを考えるとスムーズに考えることができます。  まず、ステップ1は、習慣化したい「行動目標」を決めることです。  まず、「何のために」行うのかを考えます。  先ほど記入していただいた「わたしの働く目的・目標」を参考にしながら、自分が生活習慣の改善に取り組む目的を、 シート③【新しい生活習慣を身につけよう】に記入しましょう。  次に、日々の具体的な行動として何に取り組むか明確な行動目標を設定します。  行動目標の設定には、スライドに記載した「SMART(スマート)の法則」を参考にするのもおすすめです。   Sは、具体的で分かりやすいこと。やったかやらなかったかが分かりやすいものにします。  例えば、「○○に気をつける」などの目標では、気をつけたかどうかわかりません。実際に「○○する」等の行動として確認できる目標がよいでしょう。 また、その際「○○しない」というよりは、「○○する」という目標の方がよりすべきことが明確になります。   Mは、測定可能なことです。「頑張る」「できるだけ」などではなく、○回、などの測定可能な数字になっていると、 同じくすべきことが明確になります。   Rは、目的との関連性を持ったものです。「ステップ1①」でも確認しましたが、今回取り組む生活習慣については、 長期的目標である「安定した職業生活を送ること」やそれによって自分が果たしたい目的などに関連した行動目標を選びましょう。   Tは、期限が明確なことです。週何回、毎日等1週間のうちに何回やるのか等を明確にしましょう。  また、  2:急に大きな変化や大変な行動をするよりも、小さな行動から始めてみるとよいでしょう。  次に、「どのように」行うのか、行動のきっかけや流れを決めましょう。  実際にやる内容を決めたら、いつ、どこでやるのかを決めておくとスムーズに行動できます。  また、すでに習慣化されている行動に関連づけて行うことも効果的です。  さて、ステップ2はメリット・デメリットの整理です。    前のスライドでも説明しましたが、行動の継続には、それによって得られるメリット・デメリットが影響します。  そのため、それらを整理し認識することが必要です。  特に短期的に得られるメリットの影響は大きいので、それらを意識しやすくする工夫も必要です。    また、長期的なメリットについては、継続していくと次第に認識されやすくなります。  例えば、体調がよくなった、適正体重に近づいた、体力が向上した等については、 習慣化に取り組んだ当初は感じられないことも多いでしょう。 そのため、長期的な見通しをもってそれらのメリットを理解しておくことが習慣化できるまでの間は特に必要となります。  また、デメリットについても整理をすることが大切です。  特に短期的なデメリットは、習慣化を阻む要因として大きくなりがちです。  デメリットを少なくする工夫を考えましょう。          ステップ3は、「続けるための工夫を考える」です。    いざ、行動目標を設定しても、想定しない事態もあり得ます。  まずは、  1:いつもと違うことが起こった時の対応を考えておくことが大切です。  例えば、ウォーキングを予定していても、当然雨が降る日もあります。 天気によって、できたりできなかったりでは、継続が安定しません。雨が降った時の代わりの行動(スクワット20回) もしくは対応(傘をさしてゆっくり歩く)等をあらかじめ想定しておくと、その場になった時にスムーズに行動できます。  2:おっくう感や面倒くささを感じないように準備をしておくことも大切です。  何か行動を起こすには、それにかかる労力を少なくすることが大切です。(デメリットを減らすことにもつながります)  例えば、ジョギングに行こうとするたびに、タンスからウェアを取り出し、タオルや靴を探すとなると「面倒くさい」という感情が大きくなります。  例にあるように、必要な用具をそろえておく、使うものは前もって出しておく等の準備をしておくことで、スムーズに行動に取りかかることができます。    3:できなかった時の気持ちの切り替え方法を考えておくことも役立ちます。  新しい行動を開始すると、当然やれる日もやれない日も発生します。その際に、深く落ち込んでやる気を失ってしまっては、習慣化には至りません。 うまくいかなかった時の自分なりの対処方法や気持ちの持ち直し方等について検討しておきましょう。  これで、ステップ1~3までが完了です。    行動計画の内容については、主治医に相談し、取組みが症状等に問題ないか等を確認しましょう。  次は、実施です。    実施したら、この「行動ノート」に記録します。  まず、行動が実施できた日に○をつけていきます。できなかった時は、×をつけてもよいですし空欄でも構いません。  記入を忘れてしまうと、実際できたかどうかの状況が把握しにくくなるので、忘れないように記入のタイミングを決める等の工夫をしましょう。    そして、1週間に1度、ご自身で振返りを行います。    まず、「行動ノート」に従って、感じた「身体」「気分」の変化を記入します。    前のスライドでもお伝えしましたが、行動したメリットを感じることができるかどうかが、行動の継続に大きな影響をもたらします。    次に、習慣化の変化の記入です。  「習慣化」されるのに必要な時間は、その行動の大きさ等によっても変わります。 自分がどの程度「習慣化」できているのかを知ることは、見通しを持つ上でとても大切です。  「習慣化できた」と感じた際には、右欄の5つの項目のチェックを入れてみましょう。  5つの項目すべてにチェックが入ったタイミングを「概ね習慣化できている」目安であると、このプログラムでは定義づけています。  別の新たな行動目標の取り入れ等の目安にされるとよいでしょう。  また、1週間を振り返り、前もって確認した「変化」を参考にしながら、効果を改めて考えてみましょう。  改善点があれば、対策を考えて記入します。  また、続けるコツについては、うまくいっている時に、自分が意識しているもしくは無意識に行っている工夫等について記録していくと、 うまくいかないスランプがやってきた時に抜け出すヒントとなるでしょう。  個人での振返りをもとに、今後のプログラムでは毎週金曜日に「習慣化」のためのミーティングを行います。  参加のルールは、①~④のとおりです。  また、参加の際に心がけていただきたいことは①~④のとおりです。  皆さんの安定した職業生活につながる、よい生活習慣の継続に向けて皆さんで協力し取り組んでいければと思います。  どうぞ、よろしくお願いいたします。  では、よい生活習慣の継続のために気長に、無理せず、地道にやっていきましょう!! 2 「行動ノート」の概要と記入方法 (1) 概要 目 的 ・受講者が具体的な目標をシートに記入する。 ・毎日、実施したかどうかの記録をつけ、状況を把握する。 実施方法 ・受講者が毎日、「1.実施記録(1)実施結果」について記録をつける。 ・1週間に1回、「1.実施記録(2)変化の記録」「2.1週間の振返り」を記入する。 ※「習慣化ミーティング」にて、発表する。 留意事項 ・週1回の「習慣化ミーティング」の実施後、新しい「行動ノート」に記入を開始する。 ※1週間で1枚記入し終える。 (2) 記入方法 3 習慣化のフォローアップの概要と実施方法 (1) 習慣化ミーティング ア 概要 目 的 ・1週間の取組み状況や得られた効果について振り返り、次週の目標について話し合う。 ・コミュニケーションやグループの力を活用し、受講者が行動を継続する動機づけを行う。 ・行動の継続が滞っている場合は、改善点や必要な対策を考える。 実施方法 【頻度】週1回(JDSP では金曜日)、概ね30~40分程度。 【メンバー】受講者(2~5名程度※))、支援スタッフ数名。 ※親密な雰囲気で気兼ねなく自己開示でき、相手の話に触発されて新たな考えが浮かび、相互作用が期待できやすいグループの人数6)。 それ以上の人数が参加される場合は、グループ分けを行うなどして実施するとスムーズ。 【進行】支援スタッフ1名がリーダーとして進行を担当。 基本的な流れ (1)「行動ノート」を基に、受講者が一人ずつ下記について発表する。  ①1週間の実施結果と行動による変化(身体、気分、習慣化)  ②得られた効果  ③来週に向けての目標 (2)発表に対しては拍手を送り、支援スタッフ、他受講者から、取組みへのねぎらいを伝える。また、発表を聞いた上での質問や感想、 行動を継続する工夫やコツなどについての意見交換を行う。 効 果 【「語ること」による効果】 ・行動の目的や効果を受講者自身が再認識できる。 ・定期的に他者に報告する機会があること自体が行動継続の動機になる。 ・取り組む意思や計画を宣言することで行動への動機が強化される。 【「グループの力」による効果】 ・受講者同士ねぎらい励ましあうことで、前向きな気持ちが生まれる。 ・取組みによる効果や達成感を感じている他者の話を聞くことで、意欲が喚起される。 ・継続のコツや気持ちの切替え方について情報共有ができ、工夫の視点が増える。 イ 進め方のポイント  進行に当たっては、「動機づけ面接法」における心構えや面接スキルを参考に、受講者の行動継続に対するモチベーションや 自信を引き出せるよう質問やフィードバックを行います。リーダーは、話が拡散した際や、否定的な方向へ向かった際には、 軌道修正をすることが必要ですが、受講者の行動継続に対する、支援者としての意見や提案を述べるのではなく、 受講者が多くを語れるように促し、受講者自身の考えや意欲を引き出すことを意識します。  また、受講者同士のディスカッションを活性化し、グループの力が活かされるよう運営することにも留意します。 支援スタッフが率先してねぎらいや共感を言葉や態度で示すことで、受容的、支持的な場を作ることを心がけます。 受講者から自分にとって効果的だった方法をグループに情報提供してもらう、他の受講者の取組みで参考にしたいと 思ったことについて話してもらう等、個人の取組みや発言がグループへと結びつくよう進めることを意識します。  なお、習慣化ミーティングの実施にあたり、受講者には「日常生活基礎力形成支援② よい生活習慣を続けよう」の 講座の最後に以下の内容について説明し、グループでの意見交換に積極的に参加するよう促します。 ■コラム■ 動機づけ面接法  動機づけ面接法は、ウィリアム・R・ミラーとステファン・ロルニックによって開発された、 相談者自身の行動変容への動機を強化するためのコミュニケーションの方法です。  人は行動を変えることに対して両価的な思い(変わりたい、でも、変わりたくない)を持つことが一般的です。 「健康のためには痩せる必要がある、でも、大好きな甘いものは止められない」というように、変えた方がいいと分かっていても、 一方で変わらないことの心地よさも感じていると、「変わりたい」「変わりたくない」の綱引き状態に陥り、 結局変化を起こせないまま現状維持となることが多くあります。  動機づけ面接法は、変わりたいと願う相談者の「変化に向かう発言(チェンジトーク)」に着目し強化することで、 このような両価的な状態を解消し、変わることを後押しします。面談者は、相談者の心の中にある変わることへの 動機、活力、意欲を引き出すことに焦点を当て、特定の方向への変化(健康、回復等)を目指し、目標志向的に面談を進めます。  なお、動機づけ面接法は、もともとアルコール依存症の治療に有効な面接技法として体系化されたものですが、 他の精神疾患や生活習慣病の治療、健康増進行動等の領域でも効果があることが報告されており、多くの臨床場面で活用されています。    動機づけ面接法の概要   動機づけ面接法において面談者は、面談の土台である精神を大切にしながら、4つのプロセスを意識して会話を進め、 相談者が行動を変えていく手助けをします(図4)。  面談者は相談者と対等な協働関係を築くことを大切にします。  これは、レスリングのように対決するのではなく、 一緒にダンスをするようなイメージと例えられます。自分の人生の専門家である相談者自身が、 行動を変えるための最善の方法を知っていると考え、面談者は、説得や命令により相談者を強制的に変化に向かわせるのではなく、 相談者の中にある動機や資源を引き出すことに努めます。 そして、変化に対する相談者の思いや価値観、抵抗を批判することなくありのままに受け止め共感しながら、 「変えられる」という希望を支え励まし続けます。また、行動の変化にどのように取り組むのかについての、 相談者の自己選択や自己決定を認め、相談者自身の自律性を尊重します。   面談では「OARS+EPE(情報提供スキル)」と呼ばれるスキルを用いて、相談者の変化に向かう発言を増やしたり、 その内容を具体化し、相談者の行動変容に向かう準備が進むように促します(表6)。 表6 戦略的スキル OARS+EPE ①開かれた質問 ( Asking OpenQuestions )  「はい」、「いいえ」ではなく、色々な答え方ができる質問のこと。相談者の問題認識や両価性の状況を明確にできるのと同時に、 行動変容へのアイデアや自信を引き出す効果がある。   責められている印象を与えやすい「なぜ~」という質問や、現状を維持しようとする理由を尋ねる質問は、 変わることへの抵抗を引き出してしまうため注意が必要。 ②是認 ( Affirming )  相談者の言動から読み取れる強み、能力、努力、前向きな意図を見つけ、そのことを敬意を持って伝える言葉や 態度(表情やうなづき、あいづち等)のこと。誠実にかつ本心から伝えることが大切。 是認には、協働作業を強化し、相談者が変化に向かうための自らの資源を再認識できる効果がある。 ③聞き返し ( Reflecting ) ポイント 平叙文で、 語尾を下げる!  相談者が発言した言葉を返すこと。面談者が相談者の話を関心を持って聴いているということを示すメッセージであり、 正確な共感ができているかを確認する機能もある。 「単純な聞き返し」…相談者が言ったことの繰返しや言換え。面接のポイントを確認できる。 「複雑な聞き返し」…相談者の直接語っていない思いや意味を想像し、言葉にして返すもの。 相談者の自己理解を深めたり、気づきを促す。 例) ・感情を含めた聞き返し(相談者の感情に焦点をあて聞き返す。相談者の願いや思いを引き出す。)    ・両面のある聞き返し(相談者の中にある両価性を際立たせる。「○○○、その一方で、△△△」等)    ・リフレーム(否定的表現を肯定的表現に変換するといった大幅な言換えや、話していないことの推察) ④要約 ( Summarizing ) ポイント チェンジトークを 集めて花束を作るように!  聞き返しの一つで、それまでの相談者の発言をまとめて返すこと。相談者が述べた事柄を確認、整理し、 気づきを促したり、面談の段階を進める効果がある。 「集めの要約」…相談者が話した変化につながる言葉(自信、重要性、意図等)や強みを集める。 相談者の前向きな態度や強みを是認し、行動変容を促す。 「つなぎの要約」…先に述べられた考えと現在のものとを対比させ、現状とありたい自分とのギャップを明確にすることで、 解消する方向に役立つ。二つの矛盾する状態は並列の言葉(「一方では」、「同時にまた」等)でつなぎ、チェンジトークを後ろに置く。 「転換の要約」…会話の方向性を選んだり、変える時に用いる。次の課題へと移る橋渡しになり、          具体的な計画等、変化に取り組むための考えを引き出す。 ⑤情報提供  必要に応じて情報提供をする場合は、まず情報提供の許可を取る。 そして、選択するかは相談者の自由であることを明示し、自律性を尊重した形で伝える。 (例:「この方法を試してみるかは○○さん次第なのですが~」)。 情報提供は「相談者の知りたいことを引き出す(E)→情報提供する(P)→提供された内容についての 相談者の理解や考えをOARSで確認する(E)」の流れで進めると効果的。   チェンジトークを引き出し強化する   動機づけ面接法は、相談者本人から、「チェンジトーク(行動変容に向かう発言)」を引き出していく面接技法です。 これは、「人は、自分自身の言葉を聞いて、それを信じる傾向がある」という人間の基本的原理に基づいています。 チェンジトークに対して、現状を維持しようとする発言を「維持トーク」と言います。  チェンジトークは、変化に向かう準備を反映した「準備段階のチェンジトーク」と、両価性が解消されて 実行期へと移行していることを示す「実行段階のチェンジトーク」に大別されます(図5)。  面談者は、チェンジトークを識別し、引き出し、強化することで相談者の行動変容を後押しすることが大切です。 相談者自身が、変わることの利益や行動を変えることを支持する言葉を多く述べられるように、面談を進めていくことを目指します(図6)。                          図5 チェンジトークの種類と質問例    ■支援スタッフへのワンポイント情報■  習慣化ミーティング 「質問」「フィードバック」のヒント集  行動に取り組もうと思った理由や感じている効果を質問する →取り組む目的や効果について自分の言葉で説明することは、行動の必要性やメリットを再認識することにつながり、行動に対する動機を強化します。 行動が継続できている秘訣をヒーローインタビューのように質問する →順調に取り組めている場合は、目標設定の方法や取り組み方、やる気が出ない時の気持ちの切替え方等に、 何か秘訣があるはずです。本人自身がそのことを認識できていることが、スランプに陥った時のリカバリーのヒントになります。 行動をすることとしないこと、それぞれのメリット・デメリットを質問する →「変わりたい、でも変われない」の綱引き状態で身動きが取れなくなっている場合は、双方のメリット・デメリットを考えることが、 行動の重要性や必要性に気づくきっかけになります。 行動を続ける自信について質問する  →重要性や必要性を感じていても、取り組むことへの自信がない場合、行動は継続しません。 人は「これならできそうだ」と思える方法が見つかると、自信が高まり行動を起こしやすくなります。 行動ノートの「続けられる自信」のパーセンテージが低い等、継続への不安や自信のなさが見られる場合には、 どうすれば続ける自信を高められそうかを質問し、自分に合った無理のない方法や工夫を探すよう促しましょう。 なお、工夫を考えるにあたっては、グループでヒントとなるような情報提供をしあう、コツについて意見交換をする、といった方法も有効です。 計画については具体的(5W1H)にその内容を質問する  →いつからどんなふうに取り組むのかという計画を具体的に宣言することで、変化への決意が強まり、行動にスムーズに移りやすくなります。 是認や共感を言葉や態度で積極的に伝える  →結果だけではなく、取り組もうとする意思やその人の強み、進歩や努力が感じられる点などについても 関心を寄せフィードバックすることで、受講者の安心感やモチベーションにつながります。  例:「決めた目標に着実に取り組めるところは○○さんの強みですね。」 「行動したことによる気分の変化に気づくことができたのですね。」 「気持ちが乗らない中でも、取り組もうとされたのですね。」 「気持ちの切替えが上手にできていらっしゃいますね。」 できなかったことに対して自分を責める発言や落込みが見られる場合には? →失敗感情を強めてしまわないよう、リフレ-ミングや意欲を認める言葉を返し、自己効力感の維持を支えます。  例:「今週は2日もできませんでした。」→「5日間は取り組めたのですね。」(リフレ-ミング) 「できなくて落ち込むのは取り組もうという気持ちがあるからこそですね。」 ウ 習慣化ミーティングの実施法(DVD)  巻末のDⅤDで、習慣化ミーティングの具体的な実施法を、モデル事例を通じて紹介します。DⅤDのシナリオには、 ミーティングを進める際のポイントも記載していますので、併せてご覧ください。 【モデル事例 受講者の概要】 ※モデル事例の参加受講者は架空の人物です。 習慣化ミーティングの実施法(DVD)のシナリオ ※語尾を下げて話すセリフの文末には(↓)があります。 キャスト セリフ ポイント リーダー これから、今週の習慣化ミーティングを始めます。 1週間の取組みを「行動ノート」の記録を基に、発表し意見交換しましょう。 お互いの取組みをねぎらいながら進めましょう。 それでは、まずどなたからお話ししていただけますか? 森田 はい。(挙手) リーダー では、森田さん、今週の実施結果や感じた変化について教えてください。 森田 はい。私は、「減量と体力の向上」を目的に「毎日30分ウォーキングをする」 という行動に取り組んでいて、今週は毎日実施できました。 取り組んで8週目ですが、これでようやく2週間毎日連続して取り組めた状況です。 身体や気分の変化については、これまで運動する習慣がなかったので、最初はきつかったのですが、 最近は歩くのがあまり苦ではなくなってきています。 体力が少しついてきたのかなぁ。 あとは、外の空気を吸いながら歩くと、リフレッシュできて気分がすっきりしますね。 リーダー 2週間連続で達成できたんですね、がんばっていらっしゃいますね。 歩くのを苦に感じなくなったとか、リフレッシュできるというよい変化も実感できているんですね。すごいことですね。 取組みをねぎらう。 できていることや、変化に気づくことができた本人の強みをフィードバックする。 森田 ありがとうございます。頑張りました。 リーダー 習慣化についてはどうですか? 開かれた質問。 森田 だいぶスムーズに取り組めるようになってきた気がします。 今後も続けたい気持ちはあるんですが、続けられる自信は60%くらいですね。 復職してからの生活を考えると、何か工夫をしないとちょっと難しいかもしれないです。 続けたい願望と、続けられない不安の両面を持った発言。 リーダー 行動にスムーズに取り組めるようになってきたという実感をお持ちなんですね。 今後については、復職後の生活のサイクルを考えると工夫は必要そうだけども、続けたい気持ちはある。(↓) 両面を持った聞き返しをする時は、チェンジトーク(変化に向かう発言)を後ろに置き、行動を後押しする。 森田 はい。 今より時間がなくなるので不安はありますけど、続けたいですね。 チェンジトーク(願望) リーダー 続けたいと思われるのは、何かご自身にとって続けた方がよいと思えることがあったということでしょうか? 行動を続けることでどんな効果が得られていらっしゃいますか? 本人自身が行動による効果を言葉にして振り返られるよう質問する。 森田 やっぱり、体力がついてきたのと、よい気分転換ができるということですかね。 減量については、3ヶ月くらいは続けないと効果が出ないかな、と思っているので、気長に考えています。 継続するコツ(行動の効果が出る見通しを持つ) リーダー 「減量には時間がかかる」、と効果が出るまでの自分なりの見通しを持って取り組む気持ちがあると、 焦りと上手に付き合いやすいかもしれませんね。 ところで、森田さんは、効果が実感できると続けたくなりますか? 継続するコツが語られた場合は、伝え返して強化する。 森田 そうですね。これまでは、何となくやらなきゃと思ってやっていましたけど、言われてみると、 「よい効果を実感している」から続けようと思えるのかもしれません。 リーダー 来週に向けての目標はありますか? 開かれた質問。 森田 2週間順調に取り組めているので、来週もこの調子で取り組めたらいいですね。 あとは、復職後も続ける方法を考えていきたいです。 チェンジトーク(意思) リーダー 森田さん、ありがとうございました。 全員 (拍手) リーダー では、皆さんからも森田さんの取組みについての感想や、是非聞いてみたいと思うことがあればお願いします。 木下 はい。(挙手) 森田さん、お疲れさまでした。2週間毎日達成されていてすごいと思いました。 私は今週から取り組み始めたのですが、早速3日できない日がありました。 うまくいったこの2週間は何か工夫をされたのですか? 森田 以前は、帰宅後に歩きに行くようにしていたのですが、一度家に帰ってしまうと、 おっくうに感じてできない日が多かったので、先週からは職業センターまでの行き帰りの時間を歩くことに置換えました。 バスから徒歩に移動手段を変えると、合計で40分くらいは歩けることになるんですよ。 継続するコツ(毎日のルーチンに組み込む) 木下 そうなんですね。それならわざわざ時間を作らなくていいから、あまり面倒じゃないかもしれないですね。 コリーダー 1日の流れの中に組み込むと負担も少なく続けやすそうですし、現実的でチャレンジしやすい工夫だなと思いました。 お休みの日はどうされているんですか? 継続するコツが語られたら、伝え返して強化する。 開かれた質問。 森田 そこは子供に協力してもらっています。 私は子供と遊ぶことが一番のストレス解消になるので、一緒に犬の散歩に行くようにしています。 この方法だと楽しみにもなるので、私にとってはすごく効果的なんです。 継続するコツ(自分が取り組みたくなる工夫を取り入れる) リーダー お子さんとおしゃべりしながら歩く、何だか楽しく気持ちよく歩けそうですね。 森田さんは、ご自身が続けたくなるコツをよく分かっていらっしゃるんですね。 ほかにご質問などありますか? 本人の強みを認め、伝え返す。 小川 はい(挙手)。 森田さんが楽しみながら取り組まれていて、うらやましく思いました。 私も楽しみながら取り組みたいと思いました。 さきほど、以前はおっくうでできない日もあったと話されていましたが、 できなかった時は落ち込んだり、やる気がなくなったりしませんでしたか? 森田 あー、そういう時は「まぁ、こういう日もある。また明日頑張ろう。」と考えるようにしていましたねぇ。 できなかったと落ち込むと、ますますやる気をなくしそうだったので。 継続するコツ(気持ちの切替え) 小川 そうなんですね…、私はつい「だめだった」という気持ちを引きずってしまうんですけど、 そういう考え方ができたら、ちょっと楽に取り組めるかもしれないです。 リーダー できなかった時には「こういう時もある」と気持ちを切り替えて、意欲を維持する方法をとられていたのですね。 継続するコツが語られたら、伝え返して強化する。 木下 私も真似してみたいと思いました。 リーダー 皆さんにも参考になるお話をありがとうございました。 森田さんは、この2週間自分にあった工夫をされて、順調にウォーキングを続けることができていて効果も感じている、 今後も続けたい、と話してくださいました。 次の段階としては、復職後も続ける方法を考えたいと思っておられると、私は理解したのですが、それでよろしいでしょうか? それまでの話をチェンジトークを中心に要約し、次の段階の話題への転換を促す。 森田 はい。せっかくなら続けたいですよね。 でも、時間が取れなくなったり、疲れて面倒になってしまうんじゃないかな…とも、正直思っています。 続けたい願望と、続けられない不安の両面を持った発言。 リーダー どうやったら続けられそうか、ご自身で考えられた方法があればお話しいただけませんか? まとまっていなくても構いませんので。 開かれた質問で、続けるための考えや動機を引き出す。 森田 そうですねー、休日に子供と歩くのは続けられそうです。 あとは…、仕事の昼休憩に中庭を歩いてみるとかなら、できるかなぁ。 「30分歩かなければ」と時間にこだわってしまうと苦しくなりそうなので、 続けることを目標に、時間のハードルは少し下げてやってみようと思います。 チェンジトーク(能力) 継続するコツ(ゆるやかな行動目標の設定) リーダー 生活に合わせて柔軟に取り組もうと思われているんですね。応援しています。 続ける方法は一緒に考えることができるので、必要な時はお声をかけてください。 森田さん、ありがとうございました。 では、次はどちらにお話しいただきましょう? 是認と共感を示す。 小川 はい。(挙手) リーダー はい、小川さん、お願いします。 小川 私は、「カフェイン摂取は15時までにする」という行動に取り組み始めて4週目ですが、今週は2日できませんでした。 家に帰りついた17時頃に、一息つきたくてコーヒーを飲んでしまいました。 難しい目標でもないのに、できないなんてダメですね。 できなかったことに着目した、否定的な感情を表す発言。 リーダー 15時以降にコーヒーを飲んだことは確かにあったのでしょうが、小川さんが取り組もうという意思を持って、 取り組まれていたということも事実ですよね。 実際、5日間は実行できていて、残り2日も夕方以降は飲まなかった。目標を達成できた日の方が多いですね。 マイナスの発言は、できた点に目を向けられるようリフレ-ミングし、失敗と捉えないよう促す。 小川 あぁ、そうですね…。できた日の方が確かに多いのか。 休職前は、残業しながら飲むのが当たり前になっていたので、夜に飲んでいないだけでもいいのかもしれないですね。 リーダー そこは以前と大きく変わられている点だと私は思います。コーヒーを飲んでいる時間の変化も重要な点だと感じるのですが。 一つ確認してもよろしいですか? 小川さんがこの行動に取り組まれている目的を教えていただけますか? 進歩した点を認め、伝える。 行動に取り組む目的を質問し、動機を引き出す。 小川 はい、「睡眠の質をよくしたい」というのが目的です。 私は、不調になると寝つきが悪くなるし、不眠になると気分の落ち込みや倦怠感が強くなってしまうので、 よい睡眠を取れるようになりたいという思いがあります。 チェンジトーク(願望) リーダー 健康を維持して生活するためにも、睡眠の質をよくしたいと思っておられる。(↓) 聞き返し。 小川 はい。私は今まで時間を問わずコーヒーを飲んでいましたが、1回目の講座で「カフェインを夜に摂ると睡眠に悪影響」、 という話を聞いて、カフェインが効きやすい体質でもあるので、まずはこの目標に取り組んでみようと思いました。 職場では、残業時間に眠気覚ましで飲んでいましたが、よく眠るためには量とか時間に気をつけた方がいいんだなと思って。 チェンジトーク(意思) チェンジトーク(理由、必要性) リーダー 目的に対しての効果が高そうな行動を設定されているんですね。 取り組んでみられてご自身で気づいた変化や効果はありますか? 本人自身が行動による効果を言葉にして振り返られるよう質問する。 小川 そうですね…、布団に入っても目が冴えていることが多かったのですが、それが減ったような気がします。 多少寝つきがよくなっているのが、効果かもしれません。 リーダー 寝つきがよくなっているように感じられるということは、そのような日が少しずつ増えてきているということなのでしょうかねぇ。 気分の変化や習慣化についてはどうお感じですか? 本人の感じているよい変化を聞き返す。 小川 できた日は、「やったぞ」という達成感と同時に、コーヒーが飲めなくてつらいという気持ちがあります。 両価性のある発言。 リーダー そうなんですね。 コーヒーが飲めないつらさと、実施できた達成感の二つの気持ちが綱引きしている感じ?(↓) 両面を持った聞き返し。 小川 そうなんですよ。 取り組んだら効果があると思うんですけど、私はもともとコーヒーの味や香りが好きで、 飲むことがリラックスの手段でもあったので、15時以降飲めないのは我慢している感じでつらいんですよね。 チェンジトークと維持トーク。行動することで感じる不利益を述べる発言。 リーダー 好きなものだから飲めないのはつらい、一方で、よい睡眠のためには効果があるので続けたい。(↓) 両面を持った聞き返しをする時は、チェンジトークを後ろに置き、行動を後押しする。 小川 なので、来週に向けては、我慢ばかりにならない工夫を取り入れられたらな、と思っています。 まだいい案が思い浮かばないんですけど…。 チェンジトーク(願望) リーダー 小川さん、発表ありがとうございました。 全員 (拍手) リーダー それでは、皆さんから小川さんへご質問や感想などお願いします。 「こんな工夫ができるのではないか」というアイデアもあれば、ぜひ意見交換していただければと思います。 参考になる工夫やコツについて参加者からも情報提供してもらえるよう促す。 木下 はい。(挙手) 小川さん、お疲れ様でした。小川さんが睡眠を大切に考えていることが伝わってきて、続けられるといいなぁと感じました。 でも、好きなものを我慢するのはつらいですよね。 工夫の一つとして思ったんですが、15時以降はカフェインレスコーヒーを飲むというのはどうですか? 小川 カフェインレスコーヒー? 木下 最近、スーパーとかでもよく見かけますし、カフェでも置いているお店が増えてますよね。 小川 自分では思いつかなかったですけど、そういう手もあるんですね。 それはいいかもしれないです。 工夫の選択肢が増え、視点が広がる。 森田 それなら好きなコーヒーを我慢しなくてよさそうですね。 コリーダー 小川さん、私からも一つ情報提供させてもらっていいですか? 許可を得てから情報提供を行う。 小川 はい。 コリーダー 過去の受講者の中にも、コーヒーの香りでリラックスできると話されている方がいらっしゃいました。 小川さんに合っている方法かどうかは分かりませんが、その方は、コーヒー豆を小皿に入れて部屋に置いたり、 コーヒーの香りのアロマオイルを使ったり、ということをされていましたよ。 情報提供は、本人の選択の自由を尊重した形で伝える。 小川 へぇー、そうなんですね。 確かに、コーヒーの香りでほっとできる、というのは自分もそうですね。 飲む方法以外の楽しみ方は考えたことがありませんでした。 工夫の選択肢が増え、視点が広がる。 リーダー いくつか情報提供いただきましたが、小川さん、ご感想や、考えておられることがあれば、お話しいただけますか? 情報提供された内容についての考えを確認する。 小川 カフェインレスコーヒーとか、香りを楽しむ方法を取り入れていったら、あまりストレスなく続けられそうな気がしてきました。 チェンジトーク(能力) リーダー よかったです。楽しみながら無理なく取り組めると、また続けやすくなりますね。 小川さん、そのほかに、続けるコツはありますか? 開かれた質問で、本人自身の考えや動機を引き出す。 小川 「行動ノート」を毎日記録することですかね。 やれたことを記録していくことは、小さいことだけど達成感が感じられます。 「記録するためにもやろう」、という気持ちにもなります。 継続するコツ(記録による達成感) リーダー 記録することが意欲や達成感につながっている。(↓) 継続するコツが語られたら、伝え返して強化する。 小川 あとは、この「習慣化ミーティング」ですね。取組みについて報告する場があると、やっぱりやる気になります。 皆さんから「がんばっているね」と言ってもらえるのもうれしいです。ほかの人の取組みを参考にさせてもらえるし、 さっきのように情報提供をしてもらえるのもありがたいです。 森田 話すことで、何のために取り組んでいて、どんな効果があるのかを振り返ることができるので、また頑張ろうと思えますね。 リーダー 習慣化ミーティングの効果についてもお話しいただきありがとうございました。 小川さん、新しい工夫を試した結果は、また来週のミーティングでお聞かせください。 それでは、木下さん発表いただけますか? 木下 はい。 私は今週から始めました。 「毎朝朝食をとる」を目標に取り組んだんですが、できたのは7日間の中で4日間でした。 リーダー 半分以上の日で目標達成できたんですね。 木下さんは、どのような目的でこの行動に取り組んでおられますか? できていることをフィードバックする。 行動に取り組む目的を質問し、動機を引き出す。 木下 休職前、朝は遅刻ぎりぎりの時刻まで寝ていて、朝食を食べないまま仕事に出かけることが多かったんです。 でも、やっぱり朝食を食べないと、空腹感や集中力が落ちる感じがあったので、朝食をとることを習慣にできたらと思って目標にしました。 講座でも、3食バランスよく食べることが大切と聞きましたし。 チェンジトーク(願望、理由) リーダー そうなんですね。 講座をお聞きになり、朝食を食べると木下さんにとってどんなメリットがありそうですか? 行動することによるメリットを質問し、取り組む重要性や必要性を認識できるよう促す。 木下 エネルギー切れにならず集中して仕事に取り組めるので、効率が上がると思います。 お店での仕事なので、お昼の休憩に入れるタイミングも日によって違うんですよね。 だからこそ、朝はしっかり食べた方がいいとは思っているんですけど…。 チェンジトーク(理由) リーダー メリットや必要性をご自身でもきちんと整理できておられますね。 取り組んでみて感じた変化はありますか? できていることをフィードバックする。 木下 そこは、まだあまり分からないですね…。 食べた日は空腹感をそれほど感じなかった気はします。 リーダー 空腹感の変化を感じることができたんですね。自分の身体の変化に目を向けて気づくことができるということは、とても大切なお力ですよね。 来週以降も続けていけそうですか? 変化に気づくことができた本人の強みをフィードバックする。 木下 うーん、毎日となると50%くらいです。 朝ご飯になるようなものを準備していなかったり、時間がなかったりと、まだスムーズに取り組めるようになっていないので。 リーダー もう少しスムーズに取り組められたら、と思っていらっしゃるんですね。 スムーズに取り組むために、来週の目標や改善点で考えていることをお尋ねしてもいいですか? 行動に向かう思いを聞き返しで後押しする。 開かれた質問でチェンジトークを引き出す。 木下 工夫ですか…、何があるかなぁ…。 手間なくすぐに食べられるものを予め買い置きしておくとかかな。 家に簡単に食べられるものがないと「まぁ、いいか」となってしまいやすいので。 継続するコツ(スムーズに取り組む仕組み) リーダー いいですね。 時間がなくても、朝食をとりやすい仕組みを作っておくんですね。 木下さん、ありがとうございました。 継続するコツが語られたら、伝え返して強化する。 全員 (拍手) リーダー それでは皆さんから、木下さんへのご質問や感想などをお願いします。 小川 はい。(挙手) 木下さん、お疲れ様でした。1週目で4日間もできていて、がんばっていらっしゃるなぁと思いました。 質問なのですが、できなかった日はどの日も食べるものが準備できていなかったんですか? 木下 1日はパンが無かったんですが、後の2日は前日夜更かしをして、起きられず、時間がなかったのが理由です。 夜は色々と趣味のことをやりたくて、つい寝るのが遅くなってしまうんですよね。 そうすると、朝ぎりぎりまで起きられなくて、時間がないから朝食を抜いてしまうんです。 コリーダー そうすると、朝の時間に余裕が持てるとよさそうですか? 行動に向かうためのきっかけとなる質問をする。 木下 うーん。 朝食を食べる時間を作るためにも、早く寝ることが大切だと分かってはいるんですけど、 趣味の時間は自分にとって大事なストレス発散でもあるし、長年の習慣を急に変えるのも難しいなぁ、っていうのが正直なところです。 でも、「毎朝朝食をとる」に加えて、来週は「23時までには就寝する」も目標にした方がいいのかな…。その方が効果もありそうですよね。 早く寝る必要性は認識しているが、趣味の時間を減らす不利益も感じている両価性のある発言。 目標を増やすことを検討している発言。 森田 はい。(挙手) 私は、まず一つの行動にじっくり取り組もうと思って、初めからあれもこれもと無理はしないようにしました。 それも、続けられたポイントかなと思っているので、木下さんもまだ1週目ですし、 慌てずじっくり取り組んでみてもいいかもしれないですよ。 木下 ありがとうございます。 確かに、23時までに寝ることは、目標にしてもかえってストレスになって続けられなさそうなので、 欲張らずまずは「朝食をとる」ことに集中して取り組んでみます。 継続するコツ(続ける自信が持てる目標設定) 小川 はい。(挙手) これは私がたまにやる方法なんですけど、家で食べることにこだわらずに、出勤途中の乗換え待ちの時間とか、 出勤後の始業までの時間にサッと食べてしまう、というのも一つかもしれません。 木下 そうか…、仕事が始まるまでに食べておくことが大事ですもんね。参考になります。 ありがとうございます。 工夫の選択肢が増え、視点が広がる。 リーダー 選択肢が多くあると、取り組みやすくなりそうですね。 そのほかに、来週の取組みに向けて何か考えていることはありますか? 開かれた質問でチェンジトークを引き出す。 木下 今週は、とにかく「朝ご飯を食べなきゃ」と思っていただけで、食べることでどんな効果があるかを ほとんど意識できていなかったので、そこを観察していきたいです。 チェンジトーク(意思) リーダー 「やってよかった」という効果が感じられると、続けたいと思えそうですね。 木下 森田さんや小川さんのお話を聞いていて、効果や目的を自分でも忘れないようにするのが大事だと感じました。 何のために取り組んでいるのかを忘れないためにも、効果を確認します。 継続するコツ(効果の実感) リーダー 木下さんの行動の目的は…。 取り組む目的を再認識できるよう質問する。 木下 「日中エネルギーを切らさず、集中して仕事に取り組めるようになること」です。 これを忘れずにいたら、頑張れそうです。 森田 感じた効果を記録して残しておくのはどうですか? 木下 そうですね、記録してみます。 リーダー いい方法ですね。いつから、どんなふうに始めてみましょうか? 計画の内容を具体的に質問し、実行の後押しをする。 木下 今日から、昼休みに行動ノートをつけるようにして、実施結果と一緒に「午前中の空腹感」、 「集中力」、「疲労感」を数字で記入していくようにします。 チェンジトーク(意思、準備) リーダー 計画がとても具体的になりましたね。 木下 はい、やってみたいと思います。 リーダー 来週の習慣化ミーティングでの報告が楽しみです。 木下さん、ありがとうございました。 皆さん、活発に意見交換いただきありがとうございました。 行動を続けるための色々な工夫についても共有できたと思いますので、今日以降の取組みにも是非活かしていただければと思います。 それではこれで、今週の習慣化ミーティングを終わります。 お疲れ様でした。 全員 お疲れ様でした。 (2) 個別面談  グループでの振返りでは十分に深められなかったことや、丁寧な対応が必要と思われる事項については、  個別面談において必要なフォローを行います。  行動の継続が滞っている場合は、取組みを妨げている要因を一緒に整理し、対策を考えることが大切です。  例えば、多数の行動を取り組みたい目標として掲げていることで、いずれも中途半端になっている場合には、  自分で立てた計画を着実に実行することが自己効力感につながることを伝え、  自分自身にとっての重要性やメリットなどから優先順位をつけ、目標行動を絞り込むことを提案します。  また、取り組むことへのハードルの高さを感じている場合には、無理なく続けられる内容や方法に目標を設定し直すことを促し、  取り組む自信を引き出すようにします。  取り組めなかったことによる落ち込みが、行動への意欲を低下させている場合は、気持ちを切り替えるためのセルフトーク  (例:「こういう時もある。また明日から始めよう」)などについて話し合い、気持ちが立て直せるよう促します。  なお、行動が習慣化できている場合においては、JDSP が終了し復職してからも、  行動を続けていくための工夫や仕組みについて具体的に検討しておきます。復職後の生活をイメージし、  どんな方法なら続けていけそうか、続けていくために協力してもらいたい人達がいるか、そのために必要な準備があるか、  といったことについて話し合い整理していくことで、取り組みを継続していく意思を喚起するとともに、  継続のための仕組み作りを計画的に進めていけるようサポートします。     第3章 マニュアルの活用例  ~「リフレッシュ習慣の獲得と睡眠の質の向上が見られた」事例より~ 1 事例の概要 【基本情報】  Aさん、40代男性、専門職、うつ病 【経過】  これまで複数回の休職と復職を繰り返し、自信を喪失。  5回目の休職の際に、産業医からの勧めで職業センターのJDSPを受講されました。     2 日常生活基礎力形成支援の流れ (1) 支援の流れのイメージ (P9の図2を再掲) (2) 支援の実際の流れ ア 講座の受講  講座①「心の健康を保つための生活習慣」、講座②「よい生活習慣を続けよう」を受講し、  ご自身の生活習慣について振り返り、この後の行動計画を立てました。 【参考:Aさんの生活習慣上の課題】 ●休日のリフレッシュ方法の獲得  真面目な性格と、度重なる休職による自信喪失と挽回への焦りもあり、これまでの復職では、復帰直後から全力で仕事に取り組み、  週末は動くことができないほどに疲労している状況が続いていました。その結果、一日中寝て過ごすだけで休日が過ぎてしまい、  週末に十分にリフレッシュをすることができていませんでした。また、仕事で気になることがあると、  職場から離れても考え続けて疲弊してしまう傾向もありました。  そのため、平日の仕事への取組み方の見直しとともに、「休日のリフレッシュの方法」についても検討し、  今後は週末に心身をしっかりとリフレッシュし、オンとオフのメリハリをつけながら働いていきたいと考えていました。 ●睡眠の質の改善  JDSP受講当時、生活リズムは改善傾向だったものの、寝つきの悪さを実感していました。  また、不調の初期サインが不眠症状として現れることを自覚しており、「睡眠の質を少しでもよくしたい」という希望がありました。 イ 習慣化したい行動を決める  【シート③】「新しい生活習慣を身につけよう」の記入を通じて、ご自身の行動目標を1つ決定しました。  【行動目標①】   「土曜日に1時間程度、景色を楽しみながらウォーキングする(リフレッシュ習慣の獲得)」   (外出できないほどの天候の日は、家で30分筋トレする)   ウ 実施し、日々の実施状況を【シート④】「行動ノート」に記入する  受診時に、主治医に取組み内容を確認し、了解を得て実際に開始することとなりました。 【実施状況】  1週目は、雨のため、前もって押入れから出しておいたトレーニング機材を使用して、筋トレを行うことができました。  2週目以降は、土曜日に自宅から徒歩30分程度の川まで出かけ、水辺の緑をゆっくり観察し、美味しい空気を吸うことで、  心身ともに深くリフレッシュできることを実感しました。歩くことは以前から好きでしたが、  度重なる休職でその楽しみを忘れていたことにも気づき、次第に週1回のウォーキングが楽しみに感じられるようになりました。  7週目には、母親とウォーキングに行き、普段とは違う景色や会話を楽しむと同時に、  母親の嬉しそうな様子を見ることで、自分自身も喜びと満足感を得ることができたとの報告がありました。    取組みを開始してからJDSP終了までの6週間、毎週1度も休むことなく継続できていました。   【行動ノートへの記入】  行動ノートに記入することで、特に自分自身の気分の変化(気分転換、リフレッシュ効果、自信の向上)を意識することができ、  行動目標を実施する効果を実感され、行動継続のモチベーションが高まりました。 エ 習慣化ミーティング 【1週目~5週目】  毎週金曜日の「習慣化ミーティング」で、毎週の取組みについて報告し、発表やフィードバックを通じて、  気づきを深められるよう支援しました。  スタッフからは毎週継続して取り組むことができていることについて言葉かけを行うと同時に「なぜ続けられているのか?」  と習慣化のコツを意識するための質問を行いました。それにより、取組みへの自信を感じると同時に、  復職後の安定した職業生活につながる有効なストレス対処であると気づかれるようになりました。   【6週目~7週目】  JDSP終了直前の習慣化ミーティングで、JDSP終了後の継続の方法についての検討を行いました。  Aさん自身が【行動目標①】への取組みを重ねることで、達成感やリフレッシュ、気分転換の効果を大きく感じており、 「効果があるのでぜひ継続して取り組みたい」との発言とともに継続の工夫として「①家族に宣言し、実施できたらねぎらってもらう」、 「②時々家族と一緒にウォーキングをする」という方法で継続への意欲を維持したいと語られました。 (3)その他の取組み  【行動目標①】」にスムーズに取り組むことができ、「行動ノート」の「習慣化度チェック!!」の項目もすべてチェックがついたため、  開始3週目からはもう一つの生活習慣の課題であった「睡眠の質の改善」に取り組むこととしました。      【行動目標②】   「カフェイン摂取は夕食までにし、それ以降は水を飲む(睡眠の質の改善)」    この目標についても、【行動目標①】と同様の手順で実施を行いました。  取組み開始前までは、寝る直前までコーヒーを飲んでいる生活でしたが、講座で睡眠とカフェインの関係についての知識を得たことから行動目標として選択し、  実施したところ、翌日の目覚めの良さや体の軽さ等を実感でき、ストレスを感じることなくスムーズに続けることができました。  行動ノートの記録や習慣化ミーティングにより、「これまでコーヒーが飲みたくて飲んでいたわけではなく、  いつの間にか習慣となっていただけだった」ことに気づき、継続への自信を更に深めることができました。   3 復職後の取組み経過  JDSP終了12週間後に行動目標の継続状況について確認したところ、【行動目標①】、【行動目標②】とも一度も達成できない週はなく、  職場復帰後も無理なく続けることができていました。  【行動目標①】については、時折、子どもと一緒にウォーキングを行い、楽しみながら続けられているとの報告がありました。  【行動目標②】については、その後も違和感なく続けられており、「コーヒーを夕食後取らない生活にすっかり慣れた。」との報告がありました。 ~「日常生活基礎力形成支援」に関するAさんの感想~ 第4章 実施上の留意事項 1 適切な目標設定にむけた支援  講座②「よい生活習慣を続けよう」の個別ワークでは、受講者自身が取り組みたい行動目標を決定しますが、  中には適切な目標設定が難しい受講者もいます。  適切でない目標設定になりがちなパターンと、具体的な支援例は下記のとおりです。 (1) 行動目標が高すぎる  講座を受講し、グループワークに取り組んでいる際は、モチベーションも高く、目標設定が高くなりがちです。  普段全く歩いていない受講者が、「1日1万歩ウォーキングする」という目標設定を行った結果、  行動へのハードルが高くなり、1日も実施できない場合もあります。 【支援例1】  すぐに目標を設定して実施せずに、「最初の1週間はまず現状把握をする」ことから始めてみることもお勧めです。  例えば、ウォーキングの例では、1週間自分がどのくらい歩いているのかを万歩計で計る等の、現状把握から始めてみるように提案します。  受講者の現在の状況が正確に把握できない中、スタッフが「目標が高すぎるのでは?」と助言すると、  受講者にとっては「やる気をそがれた」等、納得できない思いにつながりかねません。かといって、明らかに高いと思われる目標で実施すると、  結果達成できずに自信や意欲の喪失につながる場合もあります。無理のない目標設定の大切さを受講者に伝えた上で、  1週間の状況を記録してもらい、次の「習慣化ミーティング」や個別面談の際に把握します。  その上で現実的に達成できそうな目標を設定するように促します。  なお、記録には、「行動ノート」の下欄にある【おまけ】の項目(図7)を使うことができます。       図7 行動ノート(抜粋)【おまけ】 【支援例2】  受講者の納得が得られるようであれば、より難易度の低い目標を再設定するよう促す方法もあります。  難易度の低い設定であっても、実際に毎日継続していくことは、体調や気分の波がある受講者にとっては思った以上に困難を伴う場合もあります。  実際にやってみてうまくいかなかった時に、難易度の低い目標に再設定することもできますが、  支援開始当初から全く達成できなかった経験を持つと、「習慣化ミーティング」の参加への抵抗感が生じ、  取組みそのものにハードルを感じてしまうこともあります。「行動ノート」には、習慣化の目安として5つのチェック項目(図8)を設けています。  5つの項目の達成を目安に、次の段階的な目標を設定して取り組むように促すとスムーズです。 図8 行動ノート(抜粋) 「習慣化」度チェック!! (2) 行動目標がたくさんあり、一つに絞れない  取り組みたい事柄があれこれ浮かんできて、「どれもこれも取り組んでみたい」と行動目標を一つに絞れない場合もあります。  「新しい行動をすること」は「生活の変化」であり、「変化」はある一定のストレスをもたらします。  変化を同時期に重ねるとストレスが過重になる可能性もあり、どちらの行動目標も続けられず、結果何も継続できないということにつながりかねません。 (必要に応じて、「支援マニュアルNo.9 気分障害等の精神疾患で休職中の方のためのストレス対処講座」の29ページをご参照ください。)   【支援例1】  「変化を同時期に重ねない」ことの大切さを伝え、一つの行動目標が無理なく続けられる状況(「習慣化」できた状況)になった際に、  次の行動目標を増やす等、段階を踏んだ取組みを行うように提案します。  一つの行動目標が「習慣化」でき、新しい目標に取り組む際には、すでに習慣化できた目標は前述の行動ノート【おまけ】の項目(図7)に記録することができます。 【支援例2】  行動目標をなかなか一つに絞れない場合や整理がつけられない場合には、【シート⑤】「行動リストアップ表」(図9)も用意しています。  必要に応じて、個別面談等で情報提供し、「メリット・デメリット」、「3か月後に継続できている自信」等から比較し、整理を促していくこともできます。   図9 行動リストアップ表    (3) 行動目標の内容が適切でない  人によっては、「美容体重に近づくためにダイエットする」、「リフレッシュも兼ねて休日に仕事以外の資格取得の勉強をする」等、  「復職後に安定した職業生活を送る」という長期的な目標にそぐわない内容を設定する場合もあるかもしれません。     【支援例】  その行動目標について、【シート③】「新しい行動習慣を身につけよう」で記入された長期的なメリット・デメリットをよく吟味するとともに、  あくまでこの講座で取り組む行動目標には、美容や自己実現等の目的ではなく、「復職後に安定した職業生活を送る」  ための目的に合うものを選ぶように助言します。  健康や体調に大きな影響を及ぼす可能性が考えらえる行動目標については、取り組むことに問題がないか、主治医に確認するように促すことも大切です。 2 復職後の継続に向けた支援  よい生活習慣を身につける取組みは、復職後も継続して取り組むことができて初めてその目的(「復職後に安定した職業生活を送る」)が達成されます。  睡眠リズムや軽いリフレッシュ方法等、現在の取組み内容が復職後そのまま継続できる場合もありますが、  復職後の生活の変化に合わせて、内容、実施方法の見直しが必要な場合もあります。  また、習慣化のフォローアップである「習慣化ミーティング」や「個別面談」については、復職後は同様の方法では実施できないため、  継続への意欲の維持のための方法の検討も必要となります。  JDSPの支援期間の終了が近づいてきた段階(目安:2~3週間前)で、現在の取組みをどのように復職後も継続していくのかを検討するため、  「習慣化ミーティング」の場面で質問を投げかけ(必要に応じて次週までに案を考えておいてもらう)、必要に応じて個別面談で相談します。  検討する内容としては、次のようなことが挙げられます。   (1) 行動目標の内容について  運動等、比較的長い時間を必要とするものについては、復職後の生活リズムを見据えて、どのように取り組めるかを考えることが必要です。  その際には、まず行動目標の元となる目的に立ち返り、それを復職後の生活の中で実現する方法を考えます。  例えば、プログラム受講中、朝と夕方に1日8,000歩のウォーキングを継続的に行い、体力の増進、気分の改善を感じていた受講者については、  「朝と夕方にウォーキングする」を「平日は、通勤時間に歩く」、「  仕事の昼休憩中に会社の敷地内を歩く」といった方法で対応することもできるかもしれません。  行動そのものではなく、それを行うことによって目指す目的、実施してみて得た効果等を考えて、復職後の継続方法を検討するよう助言します。   (2) 記録の方法について  「行動ノート」には、主に習慣化に至るまでの間、その行動によってもたらされる変化や効果に気づきやすくなるような 「変化の記録」や「1週間の振返り」の項目が入れられています。そのため、すでに習慣化されたと思われる行動を維持していく際には、  記録のつけやすさ、続けやすさを重視し、別の記録方法を選択することも一案です。記録は、行動を継続する上でとても重要な要素ですが、  記録がおっくうで続かないと行動も継続しにくくなるおそれがあります。  JDSPでは、復職後に活用していただくために睡眠や服薬、食事等の生活記録と一体になった記録用紙として、 【シート⑥】「生活リズム・生活習慣記録表」(図10)を作成しています。それを活用いただくことも一案ですし、  会社に提出する同様のシートに記載欄を設ける、自分の手帳に記入する等、受講者自身にとって続けやすい方法を確認し、復職後も記録を継続するように促します。  図10 生活リズム・生活習慣記録表 (3) フォローアップの方法について  行動を継続できている受講者にその要因を質問すると、「習慣化ミーティング」の効果を挙げる方が多くいらっしゃいます。 1週間に1度の報告が継続の目標にもなり、周囲から様々なプラスのフィードバックを得ることが、取り組む意欲の向上、維持にもつながります。  習慣化ミーティングは、プログラムが終了すると、同様の形での実施ができなくなるため、別の仕組みを作っていくことが大切です。  考えられる方法としては、下記が挙げられます。 ア 産業保健スタッフの協力を得る  産業医面談や保健師との定期面談の際に、生活習慣の取組み内容の報告及び記録用紙(「行動ノート」等)の提出を行うことで、  記録や行動の継続の意欲の維持が期待できます。また、面談時に取組みについて専門的な見地からフィードバックを得ることで、   より深い気づきや効果を感じられることにもつながります。プログラムの終了報告会等で、  産業保健スタッフに事前に協力を依頼しておくことも一案です。 イ 主治医をはじめとする医療機関のスタッフの協力を得る  復職後も定期的な通院は一定期間継続していくことが大半であり、受診時に取組み内容の報告や記録の提出を行うことにより、アと同様の効果が期待できます。 ウ 家族や友人の協力を得る  行動目標を家族や友人に公言しておくと、継続への意思がより明確になり、行動継続の意欲につながります。  取組みについての協力を得るとともに、時々報告を聞いてもらい、フィードバックをもらうことも一案です。  また、一緒に取り組む仲間がいると、そこで生まれる交流の楽しさや励ましあい、ねぎらい等が効果(メリット)となり、  行動が維持しやすくなります。運動等の仲間と一緒に取り組むことができる行動目標であれば、検討してみるよう促してみましょう。 エ 支援機関によるフォローアップ  JDSPでは、プログラム終了の12週間後に、生活習慣の取組みを継続できているかの報告をもらうこととしています。  よい生活習慣の継続には、一定の労力や時間がかかりますが、習慣化されたよい生活習慣は、復職後も心の健康を保つための重要な要素となり、  プログラム終了後も受講者にとって貴重な財産になるといえます。   プログラム終了時に、復職後の継続した取組み方法を検討した上で、一定期間後に報告を行う仕組みを作ることで、  「今後の継続が大切」というメッセージを伝えることができます。  また、他の支援機関から支援を受けている場合には、該当の支援機関と情報共有を行い、必要なかかわりを依頼することも有効です。           第5章 支援効果と今後の課題 1 日常生活基礎力形成支援の効果  第1章でも述べたように、「日常生活基礎力形成支援」は、受講者自らが目的意識を持ち睡眠、食事、運動等の行動目標に取り組み、  最終的には自己管理の下適切な生活習慣を維持することで、復職後に安定勤務が継続できることを目指す支援です。  そのため、本支援は、受講者がよい生活習慣の習慣化に取り組み、「復職後に安定勤務が継続できることに寄与」できて初めて「真に効果があった」と言えますが、  現段階ではそれらを把握することは難しいため、JDSP受講中の取組み状況や得られた感想、アンケート結果から、支援効果や今後の課題を検討していきます。 2 取組み状況  受講者は、本支援を通じて自分自身の生活習慣について振り返り、継続したい生活習慣上の目標に取り組んでいます。  受講者が取り組んだ行動目標は様々ですが、復職後に安定した職業生活を送る上で、自分自身にとって必要な事柄を選択するよう助言を行い、  支援を進めていきました。受講者からは、取組みを通じて生活習慣上の様々な変化や効果等に関する感想が聞かれています。受講者の取組み状況は表7のとおりです。    表7 受講者の取組み状況 目的  行動目標  結果(変化や効果)  睡眠 睡眠の質の向上 カフェイン摂取は夕食まで 寝つきがよくなった 睡眠の質の向上 寝る前に肩の筋弛緩法を行う 疲れがとれてリラックスできた 睡眠時間の確保 24時までに布団に入る 生活リズムが安定、寝つき向上 生活リズムの安定 ゲームは、1日1時間までにする 夜更かししなくなった 食事 規則正しい食事 毎日昼食を食べる お昼にお腹が空くようになった 適正体重に近づく 昼食の糖質を30gまでにする 少しずつ体重が減少 栄養バランスよく食べる 毎食、野菜から食べる 苦もなく当たり前にできるようになった 運動 運動習慣をつける 1日15階分の階段の昇降を行う 体力がついた 体力の向上 平日は8000歩歩く 駅の階段で息切れしなくなった 運動習慣をつける ジムに週2日間行き、有酸素運動を30分以上行う 行った後は気分がよくなる その他のセルフケア リフレッシュ 休日に1時間程度ウォーキングする リフレッシュ効果あり 体調管理 毎日、朝と晩に血圧を計る。 習慣化できた達成感 正確な血圧値の把握 体調管理 毎日、マインドフルネスの時間を取る 習慣化できた自信 体調の変化に気づきやすくなる 主治医の指導を守る 週1日、休肝日(禁酒日)を設ける 睡眠の質が向上 無理なくできるようになった 3 受講者の感想、アンケート結果について   受講者にも「日常生活基礎力形成支援② よい生活習慣を続けよう」の講座で説明しましたが、 健康行動を習慣化するには、「意欲」、「知識」、「技術」の3つが必要であるとされています(図11)7)。 ここでは、それらの視点から分析した受講者の感想を表8にまとめます。   図11 習慣を変えるための3つの条件(講座②スライド資料より) 表8 受講者の感想(アンケート結果から) 感想 支援効果 意欲 知識 技術 講座 講座を受けたことで、取組みへのやりがいを感じた。 ● 生活リズムの乱れが休職の大きな原因だと改めて認識した。 ● 講座資料に基本的なことが分かりやすくまとめられていて今後も活用したい。 ● これまで何気なく行っていた日常の行動を見直す機会になった。 ● 特にカフェインの影響を知ることができたことで取り組むきっかけとなった ● 行動ノート 記録をすることで、効果を実感することができた。 ● 行動ノートの記録がなければ様々な習慣への取組みは生まれなかったと思う。 ● その行動の大きな目標を立てることで、そのために何をしなければならないか に注意を向けられるようになった。 ● 記録することで、睡眠時間の安定ができので、これからも絶対に続けたい。 ● ● 今までの履歴を見ることにより、やる気と自信がついた。 ● ● 効果的な習慣とは何かを考えることを促すツールになっている。 ● 習慣化ミーティング 単に記録を書いて提出するだけだと怠けてしまいそうなので、発表すること を意識すると「ちゃんとやろう」と思えた。 ● スタッフから「続けられている理由」を質問されることで、自分の行動 の効果を再確認でき、続いている達成感を感じるきっかけとなった。これが また新たな行動をしたくなるモチベーションになっていったと思う。 ● 他の人の取組みの目標と成果を聞くと「自分も負けていられない」と思った。 ● 効果を得ている人の話を聞くと「自分もやってみようかな」と思えた。 ● ● 他の人の取組みを聞くのは刺激になった。 ● 拍手をするのは、励まされている感じがしてよいと思った。 ● 週1回のペースで、振返りの機会があるのはよかった。 ●    受講者の感想を分析してみると、講座は主に「知識」、行動ノートは「技術」、そして「習慣化ミーティング」は、  「意欲」を向上させることに寄与していると考えられます。  これらの支援が合わさることで、よい生活習慣の「習慣化」に向けた相乗効果が期待できます。 4 今後の課題  今年度の試行実施の中で、本支援を受講された方のうち、受講終了後に復職され、一定期間(12週間)経過された方については、  12週間経過後も安定した勤務を続け、生活習慣も継続していることが確認できています。  今後は、より多くの受講者への実施を通じて、より効果的な実施について更なる検証と検討を行っていくとともに、  終了後のアンケート調査等を実施し、その効果と支援内容の検証を行っていきたいと思います。 【引用文献・参考文献・参考資料】 ●本文中 1) 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター:「肥満や高脂血症、食生活・運動習 慣がうつ病と関連 ~11,876人を対象とした大規模ウエッブ調査で明らかに~」(2018)   https://www.ncnp.go.jp/up/1521695572.pdf  2) 厚生労働省:「健康づくりのための睡眠指針2014」(2014) 3) 志村哲祥、杉浦航、大野浩太郎、林田泰斗、井上猛:「ストレスチェックにおいて生活習慣がストレス反応に与える影響」 『第15回日本うつ病学会総会抄録集』(2018) 4) 功刀浩:『心の病を治す食事・運動・睡眠の整え方』翔泳社(2019) 5) 日本産業精神保健学会:『メンタルヘルスと職場復帰支援ガイドブック』中山書店(2005) 6) 堀公俊・加藤彰:『ワークショップ・デザイン 知をつむぐ対話の場づくり』日本経済新聞出版社(2008) 7) 足達淑子:『行動変容をサポートする保健指導バイタルポイント』医歯薬出版株式会社(2007) ●講座①「心の健康を保つための生活習慣」 1)功刀浩:『心の病を治す食事・運動・睡眠の整え方』翔泳社(2019) 2)梶本修身:『スッキリした朝に変わる睡眠の本』PHP研究所(2017) 3)睡眠障害の診断・治療ガイドライン研究会 内山真 編:『睡眠障害の対応と治療ガイドライン第3版』じほう(2019) 4)睡眠薬の適正使用及び減量・中止のための診療ガイドラインに関する研究班  三島和夫 編:『睡眠薬の適正使用・休薬ガイドライン』じほう(2014) 5)坪田聡:『あなたを変える睡眠力』宝島社(2013) 6)国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター:「肥満や高脂血症、 食生活・運動習慣がうつ病と関連 ~11,876人を対象とした大規模ウエッブ調査で明らかに~」(2018)     https://www.ncnp.go.jp/up/1521695572.pdf  7)功刀浩:『国立精神・神経医療研究センターの医師と管理栄養士が教えるうつ病の毎日ごはん』女子栄養大学出版部(2015) 8)功刀浩 監修:『うつぬけごはん』扶桑社(2019) 9)厚生労働省健康局健康課ホームページ:「健康寿命をのばそう スマート・ライフ・プロジェクト」 http://www.smartlife.go.jp 10)厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2015年版)スライド集」(2014)  11)日本医師会ホームページ:「あなたの健康を応援する健康の森」  https://www.med.or.jp/forest/health/eat/01.html 12)厚生労働省:「健康づくりのための身体活動基準2013 」(2013)  13)厚生労働省ホームページ:「e-ヘルスネット-快眠と生活習慣-」   https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-01-004.html 14)厚生労働省:「国民健康・栄養調査(平成29年)」(2018) 15)厚生労働省:「アクティブガイド-健康づくりのための身体活動指針」(2013)  16)厚生労働省ホームページ:「e-ヘルスネット-アクティブガイド-」     https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-01-002.html.html    17) 厚生労働省ホームページ:「e-ヘルスネット-身体活動とエネルギー代謝-」  https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-02-003.html  18)厚生労働省ホームページ:「こころもメンテしよう~若者を支えるメンタルヘルスサイト」 https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/stress/self/index.html 19)厚生労働省ホームページ:「働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト-うさぎ商事の休憩室-」  http://kokoro.mhlw.go.jp/usagi/ 20)長谷川洋介・貝谷明日香:『知識ゼロからのマインドフルネス 心のトレーニング』幻冬舎(2015) ●講座②「よい生活習慣を続けよう」 1)スージー・グリーン&ステファン・パーマー 編 西垣悦代 監訳:『ポジティブ心理学コーチングの実践』金剛出版(2019) 2)スティーヴン・ガイズ、田口未和 訳:『小さな習慣』ダイヤモンド社(2017) 3)独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター職業センター :『支援マニュアルNo.9 気分障害等の精神疾患で休職中の方のためのストレス対処講習』(2014) 4)足達淑子 編:『ライフスタイル療法Ⅰ 生活習慣改善のための行動療法 第4版』医歯薬出版株式会社(2014) 5)足達淑子:『行動変容をサポートする保健指導バイタルポイント』医歯薬出版株式会社(2007) 6)小林清香、巣黒慎太郎、藤澤大介:「セルフケア行動の促進・ 行動変容に活かす認知行動療法(第20回認知療法・認知行動療法研修会ワークショップ5)」(2019) 7)島宗理:『使える行動分析学 じぶん実験のすすめ』筑摩書房(2018) 8)島宗理:『パフォーマンス・マネジメント-問題解決のための行動分析学』米田出版(2003) 9)奥田健次:『メリットの法則 行動分析学・実践編』集英社(2012) 付録 様式集 1) シート① 生活習慣自己チェック表 2) シート② 振り返ってみよう、生活習慣 3) シート③ 新しい生活習慣を身につけよう(様式・記入例) 4) シート④ 行動ノート(様式・記入例) 5) シート⑤ 行動リストアップ表(様式・記入例) 6) シート⑥ 生活リズム・生活習慣記録表(様式・記入例) 【シート①】 ◇◆ 生活習慣 自己チェック表  ◆◇   年  月  日氏名 ※1すでに取り組んでいる習慣があれば、○をつけてください。  (やっている) ※2新たに取り組みたいと思う習慣があれば、○をつけてください。(やりたい ※概ね6か月以内に取り組み始めたい) 生活習慣チェック内容 やっている やりたい 食事 1 1日に.要な摂取カロリー内で食べるようにしている(食べすぎ注意) 2 栄養バランスを気をつけて食べている(主食・主菜・副菜等) 3 1日3食食べている 4 寝る3時間以内の食事(夜食含む)は控えている 5 自分の適正体重を知っており、これを維持している 運動 1 普段の生活で「活発な身体活動」に取り組んでいる (エレベーターではなく階段を使う、意識的に歩く距離を多くするなど) 2 30分以上の運動を週2回以上行っている 3 運動したことを記録している(万歩計・アプリなど) 4 毎日1 5分以上意識的に体を動かしている 5 楽しみながら体を動かしている(無理しない) 睡眠 1 毎日決まった時間に起きている(自分が希望する時間に起きられる) 2 平日と休日の間で起床時間を同じにしている(もしくは、差が2時間以内) 3 心地よく眠れるための入眠儀式をしている(呼吸法、ストレッチ、音楽など) 4 自分にとって.要な睡眠時間を確保できている(日中の眠気がない) 5 寝る1時間以内に、スマートフォンやパソコンなどを見ない その他のセルフケア 1 生活リズムや気分・疲労を毎日記録している 2 自分の体調や気分の変化に気づくことができる自分なりの方法を知っている 3 「3つのR」を日ごろから取り入れている 4 休日にしっかりと休養を取り、リラックス、リフレッシュすることができている 5 「休日に予定を詰め込みすぎて疲れてしまう」ことがないように気をつけている 【シート②】 振り返ってみよう、生活習慣 年月日 氏名 【シート③】 ◆◇ 新しい生活.慣を身につけよう ◇◆ 作成日:  年  月  日氏名:          行動計画の3つのステップ 【シート③】 【記入例】◆◇ 新しい生活.慣を身につけよう ◇◆ 作成日: 〇年△月×日  氏名: 幕張 太郎           行動計画の3つのステップ 【シート④】提出日   年  月  日 ◇◆ 行動ノート ◆◇ 名前   目的 1: 実施記録 (1)実施結果    ※その日行動できたら日付の下に○を書きましょう!【    月】 行動目標 ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) 合計 先週の結果  / 日間  / 日間 【開始前の頻度   /  日間】    ※行動を新たに開始する時のみ記入 (2)変化の記録  ※当てはまるものにレを入れましょう! ①身体の変化を感じましたか? □体力(                ) □生活リズム(             ) □その他(               ) ②気分の変化を感じましたか? □楽しい □嬉しい □わくわく □リフレッシュ □幸せ  □自信  □達成感  □安心 □落ち着き □つらい □悲しい □うんざり □落ち込み□その他(                  ) ③「習慣化」の変化を感じましたか? □スムーズに取り組めるようになってきた □やることに違和感や苦を感じなくなってきた □今後も続けたい気持ちになった □続けられる自信を感じた (   %) □その他(             ) □習慣化できている ⇒右欄へ0 50 100(.く自信なし) (分からない) (できる自信あり) 「習慣化」度チェック!! □生活の一部になった実感がある□逆にやらないと違和感を感じる □続けるコツを人に説明できる □続けられる自信が90%以上ある □直近の3週間で90%以上の実施率*である    / 5 *週7日(3週間で21日)の目標⇒合計19日以上実施 2: 1週間の振.り 週5日(3週間で15日)の目標⇒合計14日以上実施 (1)得られた効果 (2)来週に向けて・改善点(あれば) 【続けるコツ】 【おまけ】上記以外で記録したい行動の記録欄 (.「習慣化できたもの」もしくは☆「お試し」行動等) マーク 行動 ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) 合計 備考 .・☆  / 日間 .・☆  / 日間 .・☆  / 日間 .・☆  / 日間 【シート④】提出日  〇年 △月 ×日 [記入例]     ◇◆ 行動ノート ◆◇ 名前 幕張 太郎 目的    復職後に必要な体力をつける 1: 実施記録 (1)実施結果    ※その日行動できたら日付の下に○を書きましょう!【 △月】 行動目標 1(金) 2(土) 3(日) 4(月) 5(火) 6(水) 7(木) 合計 先週の結果 毎日、朝駅まで歩く( 20分程度)※土日は、 20分間散歩する 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 7/7 日間  6/7 日間 【開始前の頻度   /  日間】    ※行動を新たに開始する時のみ記入 (2)変化の記録  ※当てはまるものにレを入れましょう! ①身体の変化を感じましたか? □体力(                ) □生活リズム(             ) □その他(               ) . ②気分の変化を感じましたか? □楽しい □嬉しい □わくわく □リフレッシュ □幸せ  □自信  □達成感  □安心 □落ち着き □つらい □悲しい □うんざり □落ち込み□その他(                  ) . . ③「習慣化」の変化を感じましたか? □スムーズに取り組めるようになってきた □やることに違和感や苦を感じなくなってきた □今後も続けたい気持ちになった □続けられる自信を感じた (90%) □その他(             ) □習慣化できている ⇒右欄へ 0 50 100(.く自信なし) (分からない) (できる自信あり) . . . . . 「習慣化」度チェック!! □生活の一部になった実感がある □逆にやらないと違和感を感じる □続けるコツを人に説明できる □続けられる自信が90%以上ある □直近の3週間で90%以上の実施率*である3 / 5 . . . *週7日(3週間で21日)の目標⇒合計19日以上実施 2: 1週間の振.り 週5日(3週間で15日)の目標⇒合計14日以上実施 (1)得られた効果 (2)来週に向けて・改善点(あれば) 朝の流れに慣れてきた。 この調子で続ける! 駅までの距離が短く感じられて、苦でなくなって もっと慣れてきたら、帰りも歩いてみる。 きた。 【続けるコツ】 余裕をもって家を出ると歩くことが楽しくなる。 【おまけ】上記以外で記録したい行動の記録欄 (.「習慣化できたもの」もしくは☆「お試し」行動等) マーク 行動 ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) 合計 備考 .・☆  / 日間 .・☆  / 日間 .・☆  / 日間 .・☆  / 日間 【シート⑤】 ◇◆  行動リストアップ表  ◆◇ 作成日:   年   月   日 氏名: 目的  具体的な行動  メリット  デメリット  3か月後に継続できている自信  選択  ※1つに〇しましょう 考えられること 大きさ 考えられること 大きさ 例 睡眠の質をあげる コーヒを飲むのは17時までにする 寝つきがよくなる 目覚めがよくなる 大・中・小 夕食後の飲み物がない⇒ カフェインレスコーヒーで代用 大・中・小 85% 〇 1 大・中・小 大・中・小 % 2 大・中・小 大・中・小 % 3 大・中・小 大・中・小 % 4 大・中・小 大・中・小 % 5 大・中・小 大・中・小 % 6 大・中・小 大・中・小 % 7 大・中・小 大・中・小 % 8 大・中・小 大・中・小 % 9 大・中・小 大・中・小 % 10 大・中・小 大・中・小 % ※メリットが大きく、デメリットの.ないもので、3か月後に継続できている自信が80%以上のものを選びましょう。 【シート⑤】 【記入例】 ◇◆  行動リストアップ表  ◆◇ 作成日:   〇年   △月   ×日 氏名: 幕張  太郎 目的  具体的な行動  メリット  デメリット  3か月後に継続できている自信  選択  ※1つに〇しましょう 考えられること 大きさ 考えられること 大きさ 例 睡眠の質をあげる     コーヒを飲むのは17時までにする 寝つきがよくなる目覚めがよくなる 大・中・小 夕食後の飲み物がない ⇒カフェインレスコーヒーで代用   大・中・小 85% 〇 1 運動習慣を身につける  駅まで歩く  体力増進  大・中・小  疲れる 大・中・小 70% 2 午前中の集中力を上げる  朝食を食べる  集中力が上がる元気になる  大・中・小  朝食を作るのが大変(あらかじめ買っておく) 大・中・小 80% 〇 3 適正体重に近づける  食事の時は 30回以上噛んで食べ過ぎ防止  食べ過ぎなくてよい  大・中・小 食べるのに時間がかかる  大・中・小 60% 4 適正体重に近づける  毎日、朝と晩に体重を計る  状況が把握できる 大・中・小 面倒くさい  大・中・小 80% 5 大・中・小 大・中・小 % 6 大・中・小 大・中・小 % 7 大・中・小 大・中・小 % 8 大・中・小 大・中・小 % 9 大・中・小 大・中・小 % 10 大・中・小 大・中・小 % ※メリットが大きく、デメリットの.ないもので、3か月後に継続できている自信が80%以上のものを選びましょう。 ・・・睡眠 ・・・会社 ・・・外出 ・・・服薬 ・・・食事 生活習慣上の行動目標 ① ② ③ 月 生活リズム・生活習慣 記録表(前半)  氏名( ) ・・・睡眠 ・・・会社 ・・・外出 ・・・服薬 ・・・食事 生活習慣上の行動目標 ① ② ③ 月 生活リズム・生活習慣 記録表(後半) 氏名( ) 記入例 ・・・睡眠 ・・・会社 ・・・外出 ・・・服薬 ・・・食事 生活習慣上の行動目標 ①夜24時までに寝る ②朝食を食べる ③ 月 生活リズム・生活習慣 記録表(前半)  氏名( 幕張 太郎 )     付属CD-ROM、DVDの内容一覧 ■CD-ROM「日常生活基礎力形成支援 資料集」   PCでそのまま印刷して使用できます。 ■DVD「習慣化ミーティングの実施法」  習慣化ミーティングの実施法を映像資料にして収録しています。  DVDプレーヤーまたはPCのDVD視聴ソフトで視聴できます。 項目 資料名 頁 種類 講座資料 講座①「心の健康を保つための生活習慣」 13 PowerPoint 講座②「よい生活習慣を続けよう」 39 PowerPoint シート① 生活習慣自己チェック表 (記録用紙) 98 Excel シート② 振り返ってみよう、生活習慣 (記録用紙) 99 PowerPoint シート③ 新しい生活習慣を身につけよう (記録用紙) 100 Excel シート③ 新しい生活習慣を身につけよう (記入例) 101 PDF 受講者用  シート④ 行動ノート (記録用紙) 102 Excel 記録用紙・記入例 シート④ 行動ノート (記入例) 103 PDF シート⑤ 行動リストアップ表 (記録用紙) 104 Excel シート⑤ 行動リストアップ表 (記入例) 105 PDF シート⑥ 生活リズム・生活習慣記録表 (記録用紙) 106 Excel シート⑥ 生活リズム・生活習慣記録表 (記入例) 108 PDF ■DVD「習慣化ミーティングの実施法」 習慣化ミーティングの実施法を映像資料にして収録しています。 DVDプレーヤー又はDVD視聴ソフトで視聴できます。 資料名 頁 時間 習慣化ミーティングの実施法 67  31分 障害者職業総合センター職業センター支援マニュアルNo.20 ジョブデザイン・サポートプログラム 気分障害等の精神疾患で休職中の方のための日常生活基礎力形成支援 ~心の健康を保つための生活習慣~   発行日    令和2年3月   編集・発行 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構   障害者職業総合センター職業センター   <所在地>〒261-0014 千葉県千葉市美浜区若葉3-1-3   <電話> 043-297-9043(代表)    http://www.nivr.jeed.or.jp   印刷・製本 前田印刷株式会社