実践報告書 令和8年3月 No.45 在職中の高次脳機能障害者の 職場再適応に向けた支援技法の開発 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター職業センター はじめに 障害者職業総合センター職業センターにおいては、高次脳機能障害者の就職、雇用の安定、復職等に資するために、個別の特性に応じた支援プログラムの実施を通じ、高次脳機能障害者の自己理解の促進、補完手段の習得及び事業主支援を目的とした支援技法を開発し、その成果の伝達・普及を進めています。 近年、医療技術の進展等を背景に、脳血管障害等を発症した方の入院から退院に至る期間の短縮化が図られたことで在職中に発症し高次脳機能障害と診断された方の職場復帰のタイミングも早まっており、中には障害の自己理解が不十分だったことで職場復帰後に課題が明らかになる状況も見られています。そのため、職業センターでは個別的な支援の重要性の認識のもと、自己理解を進めるために本人の目標や関心事からアプローチする方法を試行し、その取組を紹介した経過があります(「高次脳機能障害者の自己理解を進めるための支援技法の開発(実践報告書№42令和7年3月)」)。 入院期間の短縮化による影響は地域障害者職業センター等へのヒアリング結果からも窺われており、高次脳機能障害者の職場再適応に苦慮した企業からの相談増加にもつながっているとの結果も踏まえ、本実践報告書ではこれまで職業センターで培ってきた支援技法や支援ツールを在職者支援向けにカスタマイズするとともに、試行モデルの実践を通じて支援の実施方法や留意事項などを報告しています。  本実践報告書が、在職中の高次脳機能障害者の職場再適応に向けた支援の現場で活用され、職業リハビリテーションの質的向上の一助となれば幸いです。 令和8年3月 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター 職業センター 職業センター長  那須 利久 目次 序章  高次脳機能障害者に対する支援プログラムの概要 ・・・・・・・・3 第1章 開発の背景と目的 1 ヒアリングの概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7 2 ヒアリング結果のまとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8 3 開発の目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9 4 本技法開発における「在職中」の定義 ・・・・・・・・・・・・・・・・・9 第2章 支援につなげる方策 1 相談要請への対応 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13 2 相談シート「思い当たることはありませんか?」の活用 ・・・・・・・・・15 3 相談シートを活用した支援事例の紹介 ・・・・・・・・・・・・・・・・・20 第3章 支援方法の検討に向けた現状の可視化 1 共有シート「職場の“今”の共有シート」 ・・・・・・・・・・・・・・・27 2 共有シートを活用した支援事例の紹介 ・・・・・・・・・・・・・・・・・32 第4章 支援の柔軟な実施 1 ジョブコーチ支援と支援プログラムのハイブリッド支援の試行・・・・・38 2 ハイブリッド支援を効果的に実施するためのポイント・・・・・・・・・42 第5章 本人のモチベーションの向上を図る取組 1 在職者を対象としたグループミーティング・・・・・・・・・・・・・・47 2 支援事例の紹介・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・52 第6章 まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・59 資料集・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・63 序章 高次脳機能障害者に対する支援プログラムの概要 序章 高次脳機能障害者に対する支援プログラムの概要  障害者職業総合センター職業センター(以下「職業センター」という。)では、高次脳機能障害者を対象とした支援プログラム(以下「支援プログラム」という。)を利用者の雇用の段階に応じた内容で実施しています。 1 受講期間と支援の流れ 求職者には13週間、在職者・休職者には16週間のプログラムを提供し、①基礎評価期、②集中支援期、③実践トレーニング期または職場適応支援期の3期に分けてアプローチを行っています。 基礎評価期では、作業遂行上の課題や特性を把握するためのアセスメントを実施します。 集中支援期では、働く上で必要とされる作業遂行力の向上を図るとともに、基礎評価期で明らかになった課題に対する補完手段の検討や試行を行います。在職者・休職者に対しては、企業や支援者を交えた連絡会議を実施し、支援プログラムでの取組状況を共有します。 実践トレーニング期・職場適応支援期では、本人が補完手段を主体的に活用し、より自立的な作業遂行を目指せるよう支援します。求職者に対しては、支援者および管轄ハローワークの担当者と就職準備連絡会議を実施し、これまでの取組や職場における配慮事項、今後の就職活動の進め方、活用できる支援について共有を図ります。在職者・休職者に対しては、企業や支援者を交えたフォローアップ連絡会議を実施し、職場における配慮事項や職場定着に向けた支援を含めた今後の方針について共有します。 図1 支援プログラムの受講期間・支援内容の概要 2 支援内容  支援プログラムは、「作業支援」「グループワーク」「個別相談」から構成されており、各場面を関連付けながら支援を行っています。  「作業支援」では、ワークサンプル幕張版(MWS)等の実施を通じて、障害の現れ方や課題の把握、作業を円滑に進めるための補完方法の検討・習得、適切な疲労管理の習得を目指します。なお、MWSは当機構で開発した職場適応促進のためのトータルパッケージのツールの一つで、OA作業、事務作業および実務作業の3種、16課題で構成されています。 「グループワーク」では、注意の学習カリキュラム、記憶の学習カリキュラム、感情コントロール、アシスティブテクノロジー、キャリアなどのテーマに沿って、障害に対する基礎的知識を得る講義や演習、参加者間の意見交換等を実施します。 「個別相談」では、作業支援やグループワークでの体験をもとに、自身の障害特性や有効な補完手段について振り返り、今後の就労に活かすための気づきを整理することを目的としています。 第1章 開発の背景と目的 第1章 開発の背景と目的  職業センターでは、これまで高次脳機能障害があり、就職を目指す方や現在休職中で職場復帰を目指す方を対象にプログラムを実施してきましたが、近年、地域障害者職業センター(以下「地域センター」という。)から「現在在職中の方の職場適応を高めるために、プログラムの利用を勧めたい」といった問合せを度々受けるようになりました。背景として、事業所が高次脳機能障害のある方の対応に苦慮していることや、本人・家族・医療機関などから地域センターへ支援要請が寄せられていることが考えられます。 しかし、在職中の方に対する支援は、支援プログラムの利用を希望しても、対応する社内規程がない場合、本人の有給休暇等を利用して実施せざるを得ません。そのため、充分に時間をかけた支援を職場外で行うことが難しく、地域センターでは、活用可能な制度や社会支援を組み合わせる等、創意工夫を凝らした支援が求められます。  このような状況の中、令和6(2024) 年4~5月にかけて、地域センターおよび広域障害者職業センター(以下、「地域センター等」という。)を対象に、在職中の高次脳機能障害者の方への支援ニーズ動向を把握するため、アンケート調査を実施したところ、「高次脳機能障害者の支援において、就職や復職時の支援と比べ、在職中の方への支援の方が難しい点がある」と回答した地域センター等が、86%を占めました。 図2 就職や復職時の支援と比べ、在職中の支援の方が難しい点がある(n=49) 1 ヒアリングの概要 上記のアンケート結果を踏まえ、在職中の高次脳機能障害者への支援技法の検討を行うため、地域センター等および専門機関へのヒアリングを行いました。ヒアリングの概要は表1のとおりです。 表1 ヒアリングの概要 地域センター等 専門機関 時期 令和6(2024)年6~9月 令和6(2024)年5月~令和7(2025)年5月 対象数 28か所 7か所 ・就労移行支援事業所 ・医療機関  ・高次脳機能障害支援センター 等 形式 オンライン 訪問またはオンライン 内容 ・在職中の方の支援に係る 課題等 ・在職中の高次脳機能障害者の相談事例 ・在職中の高次脳機能障害者にあるとよいと思われる支援 ・高次脳機能障害者に係る医療情報が判然としない事例への 対応状況等 2 ヒアリング結果のまとめ  地域センター等および専門機関へのヒアリングで得られた回答について、適応上の問題による「支援が必要と思料される状況」と、この状況を改善するための支援が必要と思われるものの「支援介入の難しさ」にカテゴリー化し、表2・表3に取りまとめました。 表2 支援が必要と思料される状況 障害特性の理解への不十分さ ・高次脳機能障害の具体的な特性や必要な配慮について、本人も会社もあまり理解していないことがある。 ・本人は「周囲から理解されていない」と疎外感や不安を抱えていることがある。 ・本人は会社に対して「できない」と言いたくない、仕事ができない人と思われたくないという思いが強いことがある。 特性と業務内容のミスマッチ ・特性にあった長期的に従事できる仕事の切り出しが難しいことがある。 ・受障前と同じ仕事を行っているが、仕事ができていないことがある。 ・本人は仕事ができず悩んでいることがある。 ・本人は仕事ができていないのにできていると思っていることがある。 ・仕事が任せられず現場(指導担当者や同僚)が疲弊していることがある。 環境変化への適応 ・業務効率化等により、仕事内容が大きく変わり、仕事ができなくなってしまうことがある。 ・キーパーソンの異動により、現場が本人への対応の仕方が分からなくなり、本人も混乱していることがある。 表3 支援介入の難しさ 支援端緒の掴みづらさ ・受障から時間が経過し、現在の高次脳機能障害の状況が分からないことがある。 ・会社は困っていても、本人には支援に対する抵抗感がある。 ・会社からは不適応要因が高次脳機能障害の影響かどうかわからず、専門機関への相談を勧めにくいことがある。 ・高次脳機能障害の再評価をしてもらえる医療機関をどう探せばよいか分からないことがある。 社内調整の難しさ ・地域センター等に通所させたいが、通所させるための社内規程等の根拠がなく有給休暇等で対応してもらうしかないことがある。 ・業務をしながら、補完手段の獲得にかける時間が確保しにくいことがある。 プログラムの利用のしづらさ ・会社を休んで通所するプログラムは、収入への影響等が生じ、本人や家族が受講を躊躇してしまうことがある。 ・会社としては、職場でおきている課題に対し、家族にも理解してほしいが、本人の処遇の低下につながるのではないかとの思い等から、理解を得にくいことがある。 3 開発の目的  ヒアリングを通して、本人や事業所が、障害特性やそれに応じた対処方法について十分に理解できていないまま仕事を開始(再開)してしまったことにより、業務遂行に様々な困難が生じていること、本人自身も、状況を改善しようと努力を重ねても、取組の効果が十分には見られず、こうした状況が長引くことで、本人の負担が大きくなるだけでなく、上司や同僚を含む職場環境にも影響を及ぼす可能性があることがうかがえます。  また、このような支援介入が有効と思われる状況であっても、「本人が支援を受けることに対して抵抗感がある」「医療的な観点から高次脳機能障害に関する情報整理が必要な場合がある」「医療的情報を職場等と共有することが難しい」「就業期間中のプログラム受講について社内規程上取扱う根拠がない」など、本人と事業所が歩調を合わせて相談しながら、支援者の介入に至るまでの過程においても様々な難しさがあることがうかがえます。  今回の技法開発では、在職中の支援において、支援へとつなげるきっかけを作ること、そして、事業所や本人が利用しやすい柔軟な支援体制等について検討することが必要と考え、これらの課題に対して、様々なアプローチを試行しました。 本報告書では、実践した支援内容およびその中で活用したツール等について具体的に紹介をしています。 4 本技法開発における「在職中」の定義  本技法開発における「在職中」とは、休職中を除き、現に就業している状態を指します。 【参考文献】 厚生労働省:「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」(令和6年3月版) 障害者職業総合センター:調査研究報告書No.92「高次脳機能障害者の就業の継続を可能とする要因に関する研究」(2009年3月) 障害者職業総合センター:調査研究報告書No.182「精神障害者の等級・疾患と就業状況との関連に関する調査研究」(2025年3月) 第2章 支援につなげる方策 第2章 支援につなげる方策  高次脳機能障害者の職場適応上の問題は、就職や復職直後から明らかになる場合もあれば、受障後長年安定して働いていたにもかかわらず、本人の状況や職場環境の変化をきっかけに生じることもあります。 しかしながら、こうした問題が生じ、支援が必要と思料される状況にあっても、第1章で述べたヒアリング結果からうかがえるように、支援者の介入に至るまでには、特に本人自身の現状認識に応じて慎重にアプローチを図ることが重要です。  本章では、支援者の介入を求めた事業所からの相談対応における留意点と、今回試行した相談シート「思い当たることはありませんか?」(P64)について解説します。 1 相談要請への対応  高次脳機能障害者を雇用する事業所からは、「本人の課題にどのように対応したらいいのか分からない」「本人に問題を指摘しても改めようとしない」といった相談を受けることがあります。事業所が切迫した状況を抱えている場合もありますが、支援者はまず事業所が課題として認識している事実を本人と共有するために、どのような説明を行ってきたかを確認します。その上で、相談要請への対応に当たっては、以下の点に留意し、事業所が本人と現状に対して合意形成を充分に図りながら支援につなげていくことが重要です。まだ具体的な説明がされていない場合には、事業所から本人へ、現在生じている課題を、客観的な事実として伝えるよう提案します。 (1) 事実に対する本人の反応を確認 事業所からの説明に対する本人の反応には、以下のようなパターンが考えられます。 ① 事実を肯定する場合:「それはあると思います」など、指摘された内容を事実として肯定する表出があった。 ② 事実を否定しない場合:「わかりません」など、事実は否定しないが指摘されていること自体の理解の程度を判断しがたい。 ③ 事実を否定する場合:「そんなことはありません」などと否定する表出があった。 ※言語的な表出だけでなく、表情やしぐさ等、非言語的な反応にも留意します。 (2) 本人の反応に合わせた事業所の対応 支援者は、本人の表出だけでは本人がどの程度問題の本質を理解・納得しているかといった内面までも判断することは困難であることを前提として、事業所との相談に対応していくことが求められます。 〔① 事実を肯定する場合〕 本人が事実を肯定する表出をしているときであっても、本人の理解や納得感が伴っているのか注意が必要です。在職中の高次脳機能障害者の場合には、事業所の説明に対してそれを肯定する発言をしていても、実際には状況を充分理解できていないまま答える場合や、「その場ではそう言うしかなかった」といった場合もあります。 事業所は本人が安心して話せる雰囲気を作りながら、本人の困り感や「どうにかしたい」といった課題改善に向けた取組の意思等について丁寧に聞き出します。 本人の言葉で語られた困り感等についての具体的なエピソードやそのときの感情等が、事業所が課題としている事実と概ね齟齬がないことを確認できた場合には、今回開発した相談シート「思い当たることはありませんか?」を活用し、課題解決に向けた有効な手立ての一つとして支援者の介入が想定できます。 〔② 事実を否定しない場合〕 高次脳機能障害の影響により、言語的な表出が難しかったり、指摘されている言葉が理解できていない場合があります。また、認知機能の低下等の障害による記憶障害によりエピソードが思い出せない、注意障害により状況が把握できていない等の要因も考えられます。その他、「困っていても会社に言うと評価が下がってしまうから言えない」「仕事ができない人と思われたくない」「元部下の上司には言いづらい」といったこれまでに形成された役割行動の遂行が困難となっている状況に対する葛藤も反応に影響を与える可能性があります。 〔③ 事実を否定する場合〕  否定の背景は、②の場合に加え、受障に伴いできなくなったことに対する苛立ち、受障後の成功体験を得る機会がなかったことによる自己効力感の低下、社会的な役割や居場所が得られていないといったことから「周りは自分のことを理解してくれない」という孤立感や自己有用感の低下など複数の要因や葛藤を抱えていることも考えられます。本人が事実を否定する表出をしている場合であっても、内心では問題に気づいていることもあり、本人は自己理解ができていないなどと決めつけて説得するなどの行動をとらないよう、特に注意を要します。 (3) 本人と事業所の間で事実認識の齟齬が大きい場合 ア 本人へのアプローチ方法 支援者は、事実に対する本人の内心の認識と事業所の認識の齟齬を埋める必要があると判断した際は、事業所の切迫感を理解しつつ、本人が「自分の困っていることを聞いてもらえる」という安心感を持てるよう、事業所がどのように本人との相談を進めていけばよいか、一緒に考えます。事業所が本人の表出と内心の齟齬を考慮せず、一方的な同意を求めるような対応をすると、納得できない気持ちを増幅させてしまう、頑なになってしまう、本人の情報処理能力を超えて頭が真っ白になりフリーズしてしまう、疲労によって感情コントロールが難しくなるなどの悪循環や後々の支援に影響を来す可能性もあります。 本人の状況に応じて、時間を空けて再度説明をする、本人の話を充分に聞く時間を設ける、本人の理解しやすい方法(言語だけでなく視覚情報を含めた支援、端的な説明、休憩を挟むなど)で相談を進めるといった工夫を検討します。 イ 支援者の介入における留意点 本人と事業所の間で事実認識の齟齬が大きいまま、支援者が介入したり、課題解決に向けた取組を提案したりすると、本人が「一方的に自分に対してだけ改善を要求された」「支援を受けるよう強制された」等と捉えてしまうリスクがあります。支援者はそういったリスクを想定し、事業所から本人へのアプローチ方法に関する提案を行う際は、本人の現状認識に応じて慎重に行う必要があります。 2 相談シート:「思い当たることはありませんか?」の活用  相談要請の対応において、事業所と本人との間で客観的事実について概ね共通認識が図られた場合、本人との相談において、相談シート「思い当たることはありませんか?」を活用することができます。 (1) 構成  相談シートは、表4「相談シートの構成」のとおり、①相談シート本体、②事業所への相談シートの説明、③参考資料から構成されています。 ①相談シート本体 相談シートのタイトルを「思い当たることはありませんか?」とし、高次脳機能障害のある方の職場で、よく見られる事象と解決法を例示しています。これらの事象や解決法は、これまで支援プログラムに参加した当事者や、事業所担当者(上司、同僚、人事担当者、産業保健スタッフ等)、そして支援者から伺った内容をもとに作成しました。 また、認知機能の低下により、例示された内容と自身の具体的なエピソードを結びつけることが難しい方との相談を想定し、実際の1日の流れに沿ってチェックできるような構成としました。 ②事業所への相談シートの説明 支援者が、事業所へ相談シートを紹介するにあたり、シートの活用目的や活用方法を説明するものとして「【事業所用】相談シートの活用について)」を作成しました。支援者が、事業所からの相談要請に対応する中で、相談シートの活用を提案する際に使用します。 なお、②には今後継続的な相談を行うことを想定し、支援者が支援機関の連絡先を記入する欄を設けています。 ③参考資料 事業所担当者は、高次脳機能障害に関する専門的な知識を持つ立場ではなく、日常業務においても障害のある従業員への対応が主な業務ではないことが想定されます。そのような担当者が、「高次脳機能障害の主な症状」を簡便に参照できる資料として、実践報告書No.40「高次脳機能障害者の復職におけるアセスメント(2022)」から転載したものです。 表4 相談シートの構成 ① 相談シート「思い当たることはありませんか?」(資料1) 本人や事業所担当者がチェックして、共通認識を図るためのツール よく聞かれるエピソード ➡ 解決法の例 出勤(出勤の際に) 出かけるまでの準備や段取りがうまくいかない➡チェックリスト 出社時間に間に合うかの不安(乗り換えなど)➡乗り換えアプリの活用 始業前までの準備の失念(タイムカード忘れなど)➡付箋の活用 段取りの明確化 など 仕事を始める(仕事開始・指示を受けるとき) 何から始めるか分からない➡メモの活用 どこが分からないかが分からない➡分からない時のサイン メモ取りが追い付かない➡音声認識アプリ    など 作業中(作業中のエラー・変更への対応) 同じミスの繰り返し➡指差し確認 時間管理、報告の失念➡アラームの活用 リマインダーの活用 変更に混乱する➡メモの取り方の工夫  など 昼休み(休憩時間の過ごし方) 過ごし方が分からない➡休憩場所や過ごし方の検討 作業再開時間に遅れる➡アラーム設定     など 午後の仕事~仕事終了(疲れの影響) 午後になると集中力が低下➡休憩のタイミング 少し前のことが思い出せない➡休憩時間の設定 眠気➡ストレッチ など その他(仕事の周辺での困りごと) 同じことを何度も言われる➡付箋の活用 イライラが増えた➡自分に合った対処方法の習得  など ②【事業所用】相談シートの活用について(資料2) 支援者から事業所担当者等に対して相談シート「思い当たることはありませんか?」の活用方法を説明するための資料 シートの紹介文 シートの活用目的 シートの活用方法 支援機関の連絡先(支援者が記入) ③〔参考〕高次脳機能障害の主な症状(資料3) 事業所担当者等が、高次脳機能障害の主な症状について簡便に参照できる参考資料 注意障害 記憶障害 半側空間無視 遂行機能障害 社会的行動障害 失語 易疲労 資料1 相談シート 「思い当たることはありませんか?」 ~過去に病気やケガで脳に損傷を受けた方からのよくある相談&助言例~ Aさんの1日 出勤 1 出勤の際に よく聞かれるエピソード 出発前の準備や段取りがうまくいかない 【例】出発前に、携帯が見つからずぎりぎりに出発 出社時間までにたどり着けるか不安 【例】電車の乗り換えは大丈夫かな 出社して行う朝の準備が抜けてしまう 【例】タイムカード打刻忘れてしまう 解決法(★対処の工夫、◇配慮のお願い事項) ★前日に準備 ★準備物チェックリスト ★物の置き場、着替えを決めておく ★乗車前に乗り換えアプリで確認する ★目印を写真にとって簡単に地図を書く ★ロッカーに注意喚起の付箋を貼っておく ★朝準備の段取りをスケジュール化する  メモ 仕事を始める 2 仕事を始めるときに・仕事の指示を聞くときに よく聞かれるエピソード 何から始めるか、どこから始めたらいいかわからない 【例】昨日どこまでやったかや忘れてしまった) わからないことがわからない 【例】何がわからないかがわからない 【例】言葉が出ず、質問ができない 口頭での説明だけだと、忘れてしまう メモがおいつかない 【例】説明を聞きながら同時にメモをとるのは難しい 解決法(★対処の工夫、◇配慮のお願い事項) ★仕事の前にメモを見る。 ◇毎朝、今日することの確認を行う。 ★音声認識アプリをメモ代わりに使用 ◇箇条書きのメモを渡して説明する  メモ 作業中 3 作業でよくあるエラー・変更への対応 よく聞かれるエピソード 同じミスが続いてしまう 【例】入力ミス、計算ミス、誤字脱字 報告や約束時間を忘れてしまう 【例】同僚に指摘されて気が付くことが多い いつもと違ったり、急な変更があると、慌てたり混乱してしまう 【例】手が止まってしまう 【例】違うことを始めてしまい、上司に指摘される 解決法(★対処の工夫、◇配慮のお願い事項) ★指差しやルーラーを使って見直す  ◇重要な書類はダブルチェックを依頼 ★アラームやリマインダーを使う   ★「何を」「誰に」「いつまでに」をメモする   ◇どこが変わるのか、早めに伝えてもらう  メモ 昼休み 4 休憩時間の過ごし方 よく聞かれるエピソード 休憩時間の過ごし方がわからない 【例】休憩を取らずに仕事をしている 午後の作業開始時間に少し遅れる 【例】気づいたら、午後の作業開始時間1分前だった 解決法(★対処の工夫、◇配慮のお願い事項) ★休憩場所や過ごし方を決めておく ◇落ち着いて休める場所を本人と確認 ★アラームをかけておく  メモ 午後の仕事 5 疲れの影響 よく聞かれるエピソード 午後になると集中力が下がってくる 【例】ミスが増える、頭がぼーっとする、反応がゆっくり 今何をしていたのか、少し前のことが思い出せない 【例】午前中にお願いされていたことは何だっけ? 眠くて、仕方がない 【例】眠けが強くて作業が進まない 解決法(★対処の工夫、◇配慮のお願い事項) ★休憩の目安を決めておく ◇午前と午後で作業を変える ★午前中のメモを読み返す時間を設ける ◇休憩時間を長めにとる ★休憩を使い、ストレッチ等体を動かす   ★自席から離れて休憩する  メモ 仕事終了 その他 6 その他(仕事の周辺でのことがら) よく聞かれるエピソード 何度も同じこと言われてしまう 【例】自分は、ちゃんとやっているつもりなのに イライラしたりすることが増えた 【例】話し声や音、言いたいことが伝わらない・ミスが続くとき、指摘される時 解決法(★対処の工夫、◇配慮のお願い事項) ★よく言われることを付箋に残し、いつで も確認できるようにする ★イライラしたときの対処を決めておく ◇クールダウンの声かけをしてもらう  メモ 資料2 相談シートの活用について 働いている高次脳機能障害のある方との相談シート 「思い当たることはありませんか?」のご紹介 相談シート「思い当たることはありませんか?」とは? 職場での適応に課題が生じている高次脳機能障害のある従業員の方と、課題解決に向けた手立てを考えるツールとして作成しました。  事業所の方が課題として認識している事実について、従業員の方に説明した結果、概ね共通認識が図れた場合には、支援者との相談を提案するきっかけとして、本シートを従業員の方との相談でご活用ください。 添付資料 ■ (参考資料)高次脳機能障害の主な症状 ■ 相談シート「思い当たることはありませんか?」 活用方法 ① 事実に対して概ね共通認識ができている場合従業員へ課題として認識している事実を伝える 従業員と事実に関して概ね共通認識が図れた (従業員が自分の言葉でエピソードを語ってもらう等で確認) シートを活用した相談の提案 ①(シートを活用した相談について)本人の同意を得る ②シートの記入 ③支援者との相談提案 ④③への同意 支援へつなげる ※従業員の方と相談する場合には、本人への指導や一方的な労働条件の不利益変更等のために利用することのないようご注意ください。 ② 事実に対して従業員と事実認識の齟齬が大きい場合  事実を本人が理解しやすい方法を検討しながら、安心して話せる環境の中で説明を重ねる。 (②でシートが活用できる場合) ■ 事業所内の担当者が現状を整理に活用 ■ 事業所の方と支援者の相談で活用 高次脳機能障害に関する専門知識がない事業所担当者が、現状を整理し解決のヒントを探る。 事業所で起きている状況を記入し、事業所の方が支援者と相談する際に、活用する。 ※必要最小限の範囲で使用し、従業員の方のプライバシーに十分配慮ください。 ※支援者との相談にあたっては、従業員の方のプライバシーに十分配慮ください。 相談シートの活用方法や、従業員の方の雇用定着に向けたご相談がありましたら、 までご相談ください。 資料3 〔参考〕高次脳機能障害の主な症状 〔参考〕高次脳機能障害の主な症状 高次脳機能障害の主な症状は以下のとおりです。ただし、症状の現れ方には個人差があります。 注意障害 注意を持続する、集中する、周囲に注意をはらう、すばやく注意を切りかえるといったことが難しい。 ケアレスミスが多い。 周りの音や声に注意が散りやすい。 作業している途中で話しかけられると、その内容を後で覚えていない。 細かいところに気づくことが難しい。 複数のことを行うと、どちらかがおろそかになる。 記憶障害 昔のことが思い出せなかったり、新しいことをおぼえておくことが難しい。 見たことや聞いたことを忘れる。 日課や約束を忘れる。 人の名前や顔がなかなかおぼえられない。 同じ質問を何度もする。 メモを書いても、書いたこと自体を忘れたり、どこに書いたかわからなくなる。 半側空間無視 事物や空間の左右どちらかに注意が向きにくくなる(多くの場合は左側)。 左側にある人や物を無視する。 自分の左側に置いた持ち物を置き忘れる。 作業上の見直しが特に左側に多い。 左の道を見落として道に迷う。 横書き文章の文頭の文字や単語を見落とす。 8と3を見まちがえる。 遂行機能障害 目標や予定を達成したり、計画的に段取りよく行動したり、変化にうまく対応して行動することが難しい。 家事や作業を行うとき、段取りや効率が悪い。 「行き当たりばったり」な行動をする。 複数の担当作業の優先順位の判断が難しい。 困ったときに誰かに相談することができない。 先を見越した行動をとることが難しい。 社会的行動障害 行動や言動、感情をその場の状況に合わせてコントロールすることが難しい。 我慢できず、無計画にお金を使う。 イライラして、すぐに機嫌がわるくなる。 場をわきまえず発言したり、行動する。 気になることがあると、そのことばかり言う。 悲観的な言動が目立つ。 失語 会話や読み書き、計算など、言語を使う行為に困難が生じる。 口頭説明だけでは作業手順を理解できない。 複雑、抽象的な話は理解が追いつかない。 文字を読みまちがえる。文章が読めない。 漢字を思い出しにくい。 以前にできた簡単な計算が苦手。 易疲労 いひろう 一般的に疲れやすく、特に脳が疲労しやすい。 集中力や注意力の低下、あくび、眠気などがあらわれ、作業のミスにつながりやすい。 一定時間作業を継続すると、ミスが増えたり、話を理解しにくくなる。 一定時間作業を継続すると、集中力や注意力が低下する。 日中の眠気が強い。 疲れていることに自分で気づかない。 (2) 使用方法 支援者が事業所に相談シートの活用を提案する際には、以下のような使用方法が考えられます。 ①事実に対して概ね共通認識ができた事業所と本人の間で活用する方法 相談シートの導入を提案 支援者から「相談シートの活用について」の説明文と「相談シート」本体を事業所へ提供します。そのうえで、本人との面談等の場面での活用を提案します。 使用にあたっては、くれぐれも、本人への指導や一方的な労働条件の不利益変更等のために利用することがないよう、事業所へ説明します。 事業所が本人との相談等の場面で使用する流れについては、支援者から以下の説明を行います。 本人の同意を得る ↓ シートの記入 ↓ 支援者との相談提案 はじめに、相談シートは課題の解決につなげていくための手がかりを探すツールであることを、事業所から本人へ説明し、記入に関する同意を得ます。 つぎに、事業所は、「出勤」から「その他」までの各項目について、よく聞かれるエピソードや解決法を読みながら、本人に該当する内容があれば記入します。また、本人から聞き取った情報や、事業所から伝えた内容は「メモ欄」に残します。 記入後、困りごとの解決に向けた方法の一つとして支援者との相談を本人に提案し、同意が得られたら、支援者へ連絡をします。 課題解決に向けた 支援について相談開始 事業所担当者から連絡を受けた支援者は、事業所担当者と本人のどちらかの側に偏った見方にならないよう、先入観を持たず、中立的な立場で話を聞くことに留意し、相談シート等を活用しながら課題解決に向けた支援に関する相談を開始します。 ②事業所と本人との間で事実認識の齟齬が大きい場合に活用する方法 相談シートは、事業所と本人との間で事実に対し概ね共通認識ができた場合に活用することを想定したツールですが、事業所で本人と関わる担当者(上司、所属部署の指導担当者、同僚、人事、産業保健スタッフなど)や、事業所が支援者と相談する際に活用する方法もあります。  支援者は、事業所担当者への支援として、以下の活用方法を情報提供します。 現状の整理に使う 来週までに提出してねと伝えても、忘れてしまって、何度か声をかけ続けている。 午前中、ぼーっとして声をかけても返事をしないことが多い。特に、金曜日は表情から疲れているように見える。  高次脳機能障害に関する専門的な知識がない事業所担当者等が、1日の流れに沿って現状を整理し、解決のヒントを探ります。ただし、本人が参加する前段階であるため、必要最小限の範囲で使用し、本人のプライバシーに十分配慮するよう留意しましょう。 支援者との相談時に使う 何度も同じことを伝えても、すぐに忘れてしまいます。 例えば、最近どんなことを伝えましたか?伝えた内容や、タイミングなど教えていただけませんか?  対応方法を検討する場合には、本人の行動だけでなく、その行動の前後の状況についての情報も重要です。  どんなときに、どんな行動をしたのか、その前後にあったことなどを、相談シートに書いておくことで、より実態に即した相談ができます。 なお、支援者との相談は、本人のプライバシーに十分配慮することに留意しましょう。 (4) まとめ 事業所と本人が課題となっている事実について共通認識を図る過程において、「説明しても伝わらない」「反応がない」など相談の進め方に困ってしまう場面があります。また、すぐに状況が改善しないことで、事業所の焦りや不安が強くなることもあります。「支援者はいつでも相談できる存在である」という安心感を事業所担当者に持っていただき、現時点で本人への直接的な支援が難しい場合でも、事業所担当者が本人を見る視点の変化につながる可能性もあります。 3 相談シートを活用した支援事例の紹介 Aさん(50歳代・記憶障害) ・B社の営業部に所属 ・担当業務 (受障前)営業 (受傷後)営業補助 B社(加工販売業) ・人事担当C課長 ・保健師 ・所属部署上司 ・チームリーダー Aさんの職場適応に向けた相談のためB社人事担当C課長が、地域障害者職業センターDカウンセラーへ相談。DカウンセラーはC課長に話を聞いた。 C課長からは、 ・自分ではメモを取ることが難しく、1日の予定はメモに書いて渡しているが、メモを確認しようとしない。 ・担当者を固定したが、担当者の指示していない作業をやってしまう。 ・注意をしても、Aさんの考えを主張され、担当者が疲れてしまっている。 ・会社が捉えている課題については、先日本人と家族に伝えている。本人からは、特に反応はなかった。 ・Aさん自身が、メモを見ながら自立して作業してもらえるように支援をしてもらいたい。また、Aさんとの関わり方についてもアドバイスが欲しい。 ・会社として外部の専門機関の支援を検討していることは、今日の相談後にAさんに説明する予定。 話を聞いたDカウンセラーは、課題を伝えらえたAさんの反応がなかったことから、本人の困り感がない中で、支援者の介入を提案することは、Aさんの自尊心を傷つける可能性があること、高次脳機能障害の症状や相談の進め方についてアドバイスし、C課長とAさんの面談で、本人の困り感について確認してもらうこととした。 その後、C課長とAさんと面談をしたところ、Aさんから「自分ではしっかりやっているつもりだが、以前とは少し違うかもしれない」といった言葉があったとC課長からDカウンセラーに連絡があった。DカウンセラーはC課長に、相談シートをAさんとともに記入しながら、Dカウンセラーとの相談をAさんに提案してもらうこととなった。その後、C課長とともにAさんが地域障害者職業センターを訪れ、相談を開始した。 初回の相談で、Aさんは病気の影響について「大丈夫」「できていると思っている」と話した。Dカウンセラーは、Aさんが「大丈夫」「できている」と捉えている状況を丁寧に聞きながら、同じ病気や症状を抱えて働いている方のエピソードなどを紹介した。Aさんからは「自分以外に同じ病気になっている人と会ったことはない。ほかの人は自分のような違和感はないだろうか」と話があったため、Dカウンセラーから同じような経験した方々が参加しているプログラムがあることを情報提供した。さらに、C課長が社内で協議し、会社の研修として参加が可能であると言ったことで、Aさんはプログラムへ関心を示したため、Dカウンセラーが見学を提案し、Aさんも同意した。その後、Aさんは支援プログラムを受講し、終了後は支援を活用しながら勤務している。 プログラムを終えたAさんの感想 プログラムに参加する前は、注意されている意味が分からず職場で混乱していた。混乱の中で言われてイライラすることもあった。今は、自分は障害の影響があるという事が分かって、腑に落ちたところもある。受け入れるしかないなとも思っているが、昔みたいになりたいという思いもあるかな。 「思い当たることはありませんか?」 ~過去に病気やケガで脳に損傷を受けた方からのよくある相談&助言例~ Aさんの1日 出勤  1 出勤の際に  よく聞かれるエピソード➡解決法(★対処の工夫、◇配慮のお願い事項)  □出発前の準備や段取りがうまくいかない 【例】出発前に、携帯が見つからずぎりぎりに出発➡★前日に準備 ★準備物チェックリスト ★物の置き場、着替えを決めておく  □出社時間までにたどり着けるか不安 【例】電車の乗り換えは大丈夫かな➡★乗車前に乗り換えアプリで確認する ★目印を写真にとって簡単に地図を書く  □出社して行う朝の準備が抜けてしまう 【例】タイムカード打刻忘れてしまう➡★ロッカーに注意喚起の付箋を貼っておく ★朝準備の段取りをスケジュール化する  メモ 仕事を始める  2 仕事を始めるときに・仕事の指示を聞くときに  よく聞かれるエピソード➡解決法(★対処の工夫、◇配慮のお願い事項)  □何から始めるか、どこから始めたらいいかわからない➡★仕事の前にメモを見る。◇毎朝、今日することの確認を行う。  □わからないことがわからない 【例】何がわからないかがわからない 【例】言葉が出ず、質問ができない➡★「わからない」のサインを決めておく ◇作業が進んでいるか、報告をもらう  □口頭での説明だけだと、忘れてしまう メモがおいつかない 【例】説明を聞きながら同時にメモをとるのは難しい➡★音声認識アプリをメモ代わりに使用 ◇箇条書きのメモを渡して説明する  メモ 作業中 3 作業でよくあるエラー・変更への対応 よく聞かれるエピソード➡解決法(★対処の工夫、◇配慮のお願い事項)  □同じミスが続いてしまう 【例】入力ミス、計算ミス、誤字脱字➡★指差しやルーラーを使って見直す ◇重要な書類はダブルチェックを依頼  □報告や約束時間を忘れてしまう 【例】同僚に指摘されて気が付くことが多い➡★アラームやリマインダーを使う    □いつもと違ったり、急な変更があると、慌てたり混乱してしまう 【例】手が止まってしまう 【例】違うことを始めてしまい、上司に指摘される➡★「何を」「誰に」「いつまでに」をメモする ◇どこが変わるのか、早めに伝えてもらう メモ 昼休み 4 休憩時間の過ごし方 よく聞かれるエピソード➡解決法(★対処の工夫、◇配慮のお願い事項)  □休憩時間の過ごし方がわからない 【例】休憩を取らずに仕事をしている➡★休憩場所や過ごし方を決めておく ◇落ち着いて休める場所を本人と確認  □午後の作業開始時間に少し遅れる 【例】気づいたら、午後の作業開始時間1分前だった➡★アラームをかけておく 午後の仕事 5 疲れの影響 よく聞かれるエピソード➡解決法(★対処の工夫、◇配慮のお願い事項)  □午後になると集中力が下がってくる 【例】ミスが増える、頭がぼーっとする、反応がゆっくり➡★休憩の目安を決めておく ◇午前と午後で作業を変える  □今何をしていたのか、少し前のことが思い出せない 【例】午前中にお願いされていたことは何だっけ?➡★午前中のメモを読み返す時間を設ける ◇休憩時間を長めにとる  □眠くて、仕方がない 【例】眠けが強くて作業が進まない➡★休憩を使い、ストレッチ等体を動かす ★自席から離れて休憩する 仕事終了 その他 6 その他(仕事の周辺でのことがら) よく聞かれるエピソード➡解決法(★対処の工夫、◇配慮のお願い事項)  □何度も同じこと言われてしまう 【例】自分は、ちゃんとやっているつもりなのに➡★よく言われることを付箋に残し、いつでも確認できるようにする  □イライラしたりすることが増えた 【例】話し声や音、言いたいことが伝わらない・ミスが続くとき、指摘される時➡★イライラしたときの対処を決めておく ◇クールダウンの声かけをしてもらう  メモ 【参考文献】 障害者職業総合センター職業センター:実践報告書No.27「発達障害者に対する雇用継続 支援の取組み~在職者のための情報整理シートの開発~」(2015年3月) 障害者職業総合センター職業センター:実践報告書No.40「高次脳機能障害者の復職にお けるアセスメント」(2022年3月) 第3章 支援方法の検討に向けた現状の可視化 第3章 支援方法の検討に向けた現状の可視化  地域センター等の支援者とつながりができると、具体的な支援方法の検討段階へと進みます。在職中の支援は、就職や復職時の支援と異なり、職場において、職務の遂行状況や環境をアセスメントしながら、支援方法を検討することができます。 ただし、第1章で述べたように、本人や事業主は、支援に至るまでの過程で考えうる対策を講じ、様々な努力を重ねてきた結果、疲弊感を抱えていることが往々にしてあることに留意し、本人や事業主のこれまでの努力に対する労いの気持ちを持ちながら、現状のアセスメントを行うことが重要です。 この章では、本人と事業主および支援者の三者が、職務内容や職場環境について互いに齟齬なく共有できるようにするための「職場の“今”の共有シート」(以下「共有シート」という。) について解説します。 1 共有シート「職場の“今”の共有シート」 (1) 概要 共有シートは、本人や事業所、支援者の三者が、課題解決に向けた目標を整理し、支援の方向性を検討することを目的に、職場を訪問した支援者を中心に、本人との面談や行動観察、事業所からの聞き取りなどを通して、様々な情報を収集する際に活用します。 また、仕事の流れや本人が行っている工夫、事業所が取り組んでいる配慮事項等を聞き取ることで、現状を可視化できるよう工夫しています。 (2) 構成 共有シートは、「活用方法の説明」、「シートA(仕事の流れや本人が行っている工夫)」、「シートA 記入例」、「シートB(会社が取り組んでいる配慮や工夫、従業員に対する期待)」および「シートB 記入例」から構成されています。 表5 シート名と内容 シート名 内容 活用方法の説明 シートの活用目的 記入方法 記入後の流れ 留意事項 シートA (仕事の流れや本人が行っている工夫) 取り組んでいるタスク マニュアルの有無 習得状況 行っている工夫や起きやすいこと シートA(記入例) シートAの記入例 シートB(会社が取り組んでいる配慮や工夫、従業員に対する期待の確認) 会社側が配慮している事項 工夫している点 従業員への期待 など シートB(記入例) シートBの記入例  なお、シートBの「会社が取り組んでいる配慮」は、厚生労働省障害者雇用対策課発行の「合理的配慮指針事例集(第5版)」、調査研究報告者No.121「高次脳機能障害者の働き方の現状と今後の支援の在り方に関する研究(2014) を活用しています。 資料4 活用方法の説明 職場の“今”の共有シート 職場の“今”の共有シート 働いているご本人様と事業所ご担当者様、支援者がコミュニケーションをとり、現状の把握や共通の目標設定に活用できるツールです。 現状の把握 ご本人様の仕事内容やマニュアルの有無 ご本人様が取り組んでいる工夫や起きやすい事象 事業所様が取り組んでいる配慮内容の確認 事業所様がご本人様に期待されていること など 共通の目標設定 働き方の“今”を見える化して、できていること、課題を整理 課題解決に向け、今からできそうな行動の共有 支援者からの具体的な支援についての情報提供 など 記入方法 【記入者】 ・支援者 ・ご本人様 【手順】 ・出勤時~退勤時までのタスクを書き出します。 ・それぞれのタスクにマニュアルの有無をチェックします。 ・習得状況は、従業員が 「できている」     ・・・A 「時々困ることがある」・・・B 「自信がない、困っている」・・・C と感じている箇所をチェックします。 ・働いている中で行っている工夫や起きやすい事象があれば記入します。 【記入者】 ・支援者 ・事業所 様 【手順】 ・項目を読みながら、ご本人様の職場定着のために、事業所様がこれまで取り組んでいる配慮内容ついて、確認します。 ・課題の解決に向け、事業所様からご本人様へ期待したいことについて、記入します。 記入後の流れ(イメージ) ご本人様、事象所様、支援者の三者で、整理した情報を共有 ・できていること ・課題 を整理 課題解決に向けて取り組む行動を確認 具体的な支援計画の作成 目標の設定 目標 取り組む行動 目標の振返り時期 ご本人様 【例】手順書に沿って作業する 手順書チェックボックスに☑を入れる 1か月後 事業所様 【例】手順書の使いやすさの検証 使用状況を確認し、必要な改訂を行う 1か月後 その他 ジョブコーチ支援➡手順書活用の習慣化へのサポート、改訂が必要な個所は会社と共有します。 留意事項 ・このシートは、ご本人様の雇用継続の可否判断をするためのものではありません。 資料5 シートA(仕事の流れや本人が行っている工夫の確認) 記入例 (シートA)仕事の流れや工夫を聞かせていただくための確認シート 時間 作業名 タスク(やること) マニュアル 習得状況 行っている工夫起きやすいこと 出勤 有 無 A B C 仕事の準備 有 無 A B C 有 無 A B C 仕事開始 有 無 A B C 有 無 A B C 有 無 A B C 有 無 A B C 有 無 A B C 有 無 A B C 有 無 A B C 有 無 A B C 休憩 有 無 A B C 仕事再開 有 無 A B C 有 無 A B C 有 無 A B C 有 無 A B C 有 無 A B C 有 無 A B C 有 無 A B C 仕事 有 無 A B C 退勤 有 無 A B C その他 (シートA)仕事の流れや工夫を聞かせていただくための確認シート 時間 作業名 タスク(やること) マニュアル 習得状況 行っている工夫向上したいこと 出勤 8:00 持ち物チェック(財布・携帯電話・社員証) 有 無 A B C 8:45 会社玄関で社員証を首にかける 8:45 タイムカード打刻 有 無 A B C 仕事の準備 8:50 更衣室に、荷物と上着を置く 有 無 A B C 9:00 スケジュール帳で今日の予定を確認 有 無 A B C 仕事開始 ・郵便物作業は、日によって業務量が異なるため、早く終わってしまうと手持無沙汰になってしまう。 ・手順書・ルーラーを活用している。 課長からのメールを確認(スケジュール帳に追記) 有 無 A B C 9:15 郵便物 郵便物を担当者ごとに仕分ける 有 無 A B C 部署へ郵便物を届ける 有 無 A B C 10;30 会議室 会議室の拭き掃除 有 無 A B C 10:50 トイレ休憩、離席し目を瞑って休む 有 無 A B C 11:00 データ入力 データ入力作業 有 無 A B C 休憩 12:00-13:00 昼休憩(食事後、15分間自席で仮眠) 有 無 A B C 仕事再開 13:00 郵便物 各部署へ郵便物の有無の照会 有 無 A B C ・休憩中は離席し目を瞑って休むようにしている。 ・午後のデータ入力は、午前に比べるとミスが増えやすい。 13:10 各部署へ回収 有 無 A B C 13:40 回収した郵便物の個数をチェック表に記入 有 無 A B C 14:00 休憩 トイレ休憩 有 無 A B C 14:10 データ入力 データ入力作業(手順書・ルーラ用意) 有 無 A B C 15:00 休憩 トイレ休憩 有 無 A B C 15:10 データ入力 データ入力作業(手順書・ルーラ用意) 有 無 A B C 15:40 会議室 会議室の拭き掃除 有 無 A B C 仕事 15:55 課長に業務終了報告のメールを送る 有 無 A B C 退勤 16:00 タイムカード打刻 有 無 A B C その他 ・作業で困ったら、マネージャーさんに質問するルール。ただ、マネージャーさんも忙しく、離席することが多い。 ・課長から、メールが返ってくると嬉しい。周囲の人と話すことはあまりない。 資料6 シートB(会社が取り組んでいる配慮や工夫、従業員への期待の確認) 記入例 (シートB)職場での配慮事項を聞かせていただくための確認シート 仕事前 体調把握のため、声掛けや日誌を活用している 本人がメモを取りやすいスピードで話す 指示は一つずつ出すようにしている 仕事の指示 マニュアルや工程表を作成している 指示にあたり、まずは見本を示すようにしている 作業の抜けなどがないよう、チェック表を活用している 業務指導の担当者を決めている できる限り、指導する担当者とシフトを合わせている 職場の環境 作業場所や使用する道具が分かるよう、写真や紙を貼った 照明や音など物理的な刺激が少ない環境を設定している 特性やできることに応じて作業内容や手順を見直している 仕事の内容 できるだけわかりやすく、定型的な仕事を依頼している 業務量は、疲労などを考慮し、いきなり増やさないようにしている 疲れが顕著にならないよう、こまめに休憩をとってもらっている 休憩 できるだけ静かな場所で休憩できるようにしている (本人のプライバシーに配慮したうえで、本人の希望を踏まえて) 障害の内容や必要な配慮の説明 相手の例 総務や人事担当者 上司 同僚 説明した内容例 疾患名 接し方(ペース配分、指示出しの工夫、声掛けのお願い等) 安全面の配慮 説明方法の例 本人より提供された資料を活用した 本人の説明を聞き、別途資料を作成した 支援機関による研修課を実施した その他 業務指示を出す担当者と、相談対応を行う担当者を分けるようにしている 慣れるまで、定期的な面談を継続している 産業保健スタッフ(産業医、保健師など)にも協力を仰いでいる 必要に応じて、ご家族や主治医と連絡を取っている 就労状況は、担当者間で共有している 支援機関へ、定期的なサポートを依頼している ★業務指示を出す担当者が変わる可能性 無 有(     年目安) ★会社が期待したいこと (シートB)職場での配慮事項を聞かせていただくための確認シート 仕事前 体調把握のため、声掛けや日誌を活用している 毎日日誌を記入提出。担当者が読み、1週間ペースでコメント返す。 本人がメモを取りやすいスピードで話す メモを持っていない時は、声掛けし促している。 指示は一つずつ出すようにしている 原則は、口頭で伝えている。はじめは一緒にやりながら確認して、大丈夫そうだったら一人でやってもらう。 マニュアルや工程表を作成している 指示にあたり、まずは見本を示すようにしている 作業の抜けなどがないよう、チェック表を活用している 業務指導の担当者を決めている できる限り、指導する担当者とシフトを合わせている ●さんと重なるように考慮している。 職場の環境 作業場所や使用する道具が分かるよう、写真や紙を貼った 照明や音など物理的な刺激が少ない環境を設定している 特性やできることに応じて作業内容や手順を見直している 仕事の内容 できるだけわかりやすく、定型的な仕事を依頼している 業務量は、疲労などを考慮し、いきなり増やさないようにしている 疲れが顕著にならないよう、こまめに休憩をとってもらっている 疲れからか、午後は休憩を多くとっている様子がある。時折、どこにいるのか分からず探すこともある。 できるだけ静かな場所で休憩できるようにしている 休憩場所は、事務所に固定。 (本人のプライバシーに配慮したうえで、本人の希望を踏まえて) 障害の内容や必要な配慮の説明 相手の例 総務や人事担当者 上司 同僚 疾患名 高次脳という病名は聞いているが、具体的にどんなものかは聞いたことはない。よく伝えた子を忘れてしまうことはある。 説明した内容例 接し方(ペース配分、指示出しの工夫、声掛けのお願い等) 安全面の配慮 本人より提供された資料を活用した 特に資料を活用したことはない。そういった説明を聞ける機会があると助かる。 説明方法の例 本人より提供された資料を活用した 本人の説明を聞き、別途資料を作成した 支援機関による研修課を実施した その他 業務指示を出す担当者と、相談対応を行う担当者を分けるようにしている 慣れるまで、定期的な面談を継続している 産業保健スタッフ(産業医、保健師など)にも協力を仰いでいる 必要に応じて、ご家族や主治医と連絡を取っている 復職のときに、ご家族とともに会社にこらえれて話をしたが、その後はなし。 必要に応じて、ご家族や主治医と連絡を取っている 就労状況は、担当者間で共有している 支援機関へ、定期的なサポートを依頼している ★業務指示を出す担当者が変わる可能性 無 有(     年目安) ★会社が期待したいこと ・決まった手順どおりに作業を進めてほしい。 ・間に合わないなどあれば、自分で判断せず、担当者に聞いてほしい。 ・休憩に入るときには、周りの人に声をかけてほしい。 (3)活用方法 ア 使用者  共有シートは、表6のとおり支援者が、本人、事業所担当者との相談の際に記入することで、現状と課題について可視化し、今後の取組に向けた検討に役立てることができます。 表6 シートごとの使用者 シート名 使用者 活用方法の説明 シートA シートB 高次脳機能障害の ある従業員本人 〇 事業所担当者 人事担当者 など (面談等で把握した場合) 〇 〇 支援者 〇 〇 〇 イ 使用場面 本人との面談時 会社訪問時の事業所担当者からの聞き取りや作業観察時 など ウ.使用手順 支援者からの説明 ↓ 本人と支援者で記入 (シートA) ↓ 事業所担当者と支援者で記入(シートB) ↓ 記載した情報を三者で共有 ↓ できていること、課題の整理 目標の設定 実施可能な支援 進捗確認の時期設定 記入 ↓ 進捗状況の確認 必要に応じて目標の見直し 支援者は、「活用方法の説明」シートを用いて、共有シートの概要や今回活用する目的について、本人、事業所担当者に対して説明します。 支援者は、作業観察や面談等を行い、本人と相談しながら「シートA 仕事の流れや本人が行っている工夫」を記入します。本人との相談の中で不明確な部分があれば、事業所担当者へ確認します。 支援者は、事業所訪問などを行い、事業所担当者と相談しながら「シートB 会社が取り組んでいる配慮や工夫、従業員への期待」を記入します。必要に応じ、人事担当者や産業保健スタッフにも聞き取りを行い、記入します。 支援者が記入したシートをもとに、本人、事業所担当者、支援者の三者で情報を共有します。 支援者は、共有した情報のうち、現状の課題とできていることを整理します。 次に、整理した課題について、本人、事業所がそれぞれの目標と取り組む行動を話し合い、【活用方法の説明】の目標欄に記入します。 その後、支援者が実施可能な支援を記入します。 最後に、三者で、目標の達成に向けた進捗等を振り返る時期を設定し、目標欄に記入します。 設定した時期に、目標達成に向けた進捗状況を三者で確認します。 確認の結果、目標の見直し等が必要であれば、再設定します。 (4) 活用のポイント 共有シートは、本人や事業所、支援者の三者が協力し、課題解決に向けた目標を整理し、支援の方向性を検討するためのツールです。しかし、共有シートの導入にあたっては、本人や事業所担当者が、「自分のこれまでのやり方が間違っていたのではないか」「できていないことを指摘されるのではないか」と不安を抱くことがあります。こうした不安を和らげ、安心して取り組んでいただくためには、以下のポイントを意識することが大切です。 ①安心して話せる環境を作るため、丁寧な説明と傾聴を心がける 支援者は共有シートの記入を急ぐのではなく、共有シートは課題解決に向けた目標を整理し、支援の方向性を検討することが目的であることを丁寧に説明することが重要です。 また、本人や事業所担当者の気持ちに耳を傾け、安心して話してもらえるような雰囲気づくりを意識することも求められます。 ②認識の違いを尊重しながら共有する 本人と事業所担当者の認識に違いがある場合でも、無理にすり合わせようとしないことが大切です。例えば、本人が「できている」と感じていることが、事業担当者が「できていない」と評価している場合や、事業所が配慮しているつもりの事項が、本人にはそう受け取られていない場合などがあります。こうした認識の違いが起きる背景には、日々の業務の中で生じる感情のすれ違いや、小さな不満の積み重ね、相手の事情を知らないことによる思い込みなどがあるかもしれません。三者の認識を共有する際には、それぞれが捉えている背景や理由も含めて丁寧に共有することが、支援の方向性の検討に繋がります。 ③新たな課題に合わせて目標を調整する 共有シートに記載された情報や目標は、支援の過程で変化する可能性があります。支援を進める中で、新たな課題が見つかり、優先すべき事項が変わることがあります。その際には、目標の再設定や、目標達成に向けた具体的な行動の見直しを行い、本人、事業所担当者と改めて共有することが重要です。 2 共有シートを活用した支援事例の紹介 Eさん(40歳代・注意障害) ・F社の人事部に所属 ・担当業務  事務補助 清掃業務 F社(小売業) ・所属部署G係長 ・H保健師 Eさんは、F社に長年勤務していたが、最近Eさんの仕事ぶりについて、共に働く同僚からG係長に相談があがってくるようになった。G係長がEさんに話を聞いたところ、「最近何かあったという事はないが、いつもバタバタしている」といった話が聞かれた。G係長は、その後もEさんと相談を重ねたが、状況が好転しなかったため、支援機関を交えて対策を相談してみることをEさんに提案した。Eさんから支援機関との相談について同意が得られたため、G係長が地域障害者職業センターに連絡を取った。 地域障害者職業センターのIカウンセラーは、F社に訪問し、Eさん、G係長、H保健師に話を聞いた。 Eさんからは、 ・一つの作業に集中しすぎて、次の作業の開始時間に間に合わなくなりそうになったことがこれまでも何回かあった。16時までに終わらせないといけないと意識し、何とか間に合っている状態。 ・頑張ってやっているけど、時間に間に合わないことがあることを、会社の人にわかってほしい。 F社(G係長、H保健師)からは、 ・一日のタイムスケジュールを作成し渡しているが、一部を省略したり、決められた以外の時間で休憩を取っていることがある。決められていることを守ってほしい。 ・できていたことが、徐々にできなくなっているようにも感じる。我々はこれまでもEさんができることを考えながら対応してきたが、さらにどのようなサポートや工夫をしていけばよいのか、教えてほしい。 Eさん、F社それぞれから支援ニーズを聞いたIカウンセラーは、Eさんが1日の中でどの作業でうまくいっていないのかを確認すること、F社がこれまで工夫してきたことなどを洗い出し、支援方針を検討することとした。そこで、数日間F社を訪問し、共有シートをEさん、F社とともに記入した。 シートを記入して分かった点 Eさん➡ ・休憩を取る頻度が増えるのは、午後になると足が痛いから。休憩は事務所で取るよう言われているが、現場から事務所まで戻ると時間がかかる。 ・一人で仕事をしているが、現場にいくと突然「今日はこうしてほしい」と言われることがある。そのことで、より焦ってしまっている。 F 社➡ ・仕事内容は、Eさんができそうな内容のもので、固定化している。 ・多忙な環境で、口頭による説明が中心。大事なところは、Eさんにメモをするよう促している。 ・業務報告は、日誌を活用。それ以外にも、日々声をかける場面は多い。 ・事務所には誰かいるので、困ったことがあれば事務所に戻ってくるよう伝えている。 ・熱中症や疲労対策として、事務所で小休止を取るよう声をかけている。 シート記入を通して分かった点を、Eさん、F社、相談担当者の三者で共有し、以下の目標を設定した。 設定した目標達成に向け、ジョブコーチ支援を実施することになった。ジョブコーチはEさんの作業を観察しながら、効率的な仕事の進め方を検討し、F社とタイムスケジュールを見直した。その結果、Eさんの体の負担は軽減され、概ねタイムスケジュールに沿って作業を進められるようになった。しかし、ジョブコーチが作業を観察する中で、清掃場所となる売り場等の現場スタッフから「今日はこの場所を重点的にやってね」等、通常の作業の流れとは異なる対応を求められる場面があり、スケジュールどおりに仕事が進まないことが確認された。そこで、Eさん、G係長、Iカウンセラーで話し合い、現場スタッフから通常の作業の流れと異なる対応をEさんに依頼する場合は、直接Eさんに指示するのではなくG係長を通してもらうよう、現場のスタッフに周知することとした。早速、G係長は各現場の管理者へEさんへの作業のお願いの仕方について協力を依頼するとともに、Eさんからもジョブコーチが同行し、現場スタッフへ自分の特性などについて説明した。現場スタッフからは、「Eさんが困っていることが分かって、話してもらえてよかった。」との声があり、今後の対応について理解を得ることができた。 支援を活用したEさん、F社の感想 Eさん Iさん(支援者)が来た時、私のやり方がダメだと言われるのかなと思いました。私は言いたいことをうまく説明できないので、タイムスケジュールや自分の特性をまとめたものがあると説明しやすく助かりました。 F社 Eさんへの対応には長年悩んできましたが、今回Iカウンセラーやジョブコーチの方の支援を通じて、Eさんが何に困っているのかを知ることができました。また、タイムスケジュールの見直し等、会社としてどこを検討すればいいのかを整理できたこともよかったです。外部の支援者に話を聞いてもらえたことだけでも気持ちが楽になりました。 【参考文献】 障害者職業総合センター:調査研究報告書No.121「高次脳機能障害者の働き方の現状と今 後の支援のあり方に関する研究」(2014年4月) 障害者職業総合センター:調査研究報告書No.129「高次脳機能障害者の働き方の現状と今 後の支援のあり方の関する研究Ⅱ」(2016年3月) 障害者職業総合センター職業センター:実践報告書No.41「職場復帰に向けた調整のため の効果的なアセスメントの実施方法」(2025年3月) 第4章 支援の柔軟な実施 第4章 支援の柔軟な実施 在職中の職場再適応に向けた支援の一つとして、支援者が職場を訪問し、職務遂行上の課題を分析した上で、現場で直接支援を行うジョブコーチ支援が活用されています。ジョブコーチ支援は、本人が実際に働いている場面で支援を行うことができるため、現場の状況に合わせた具体的な支援が可能です。また、高次脳機能障害の方の中には、環境の変化に対応しづらい障害特性を持つ方も多く、職場で支援を受けられることは安心感につながることがあります。事業所にとっても、支援者から助言を得ることで、本人への対応に関する不安が軽減されるというメリットもあります。 一方で、地域センター等に実施したヒアリングからは、職場内で通常行うべき業務と並行して高次脳機能障害に係る補完手段や代替手段等を集中的にトレーニングするには限界があるとの意見も聞かれました。業務を優先せざるを得ないため、試行錯誤や失敗を容認する余地が少ないことが課題です。 この点で、職場外の環境で実施される支援プログラムには、本人の特性を丁寧にアセスメントし、効果的な対策をじっくり講じることができるというメリットがあり、このような環境では、本人が失敗を恐れず安心して試行錯誤し取り組むことが可能です。 しかし、本人が一定期間職場を離れて地域センター等へ通所する支援方法については、就業規則等の社内規程との整合性や、本人の経済的な不利益を避ける配慮等から、現実的には選択されにくい状況があります。 そこで、両支援のメリットを活かすために、働きながら支援プログラムをスポット的に利用し、支援プログラム内で検討した対策を職場でジョブコーチがフォローするというハイブリッド型の支援に取り組みました。この章では、その実践内容について紹介、解説します。 表7 ヒアリングで挙がった支援介入の難しさに関する意見(一部) 事業所は、地域センター等に通所させたいが、通所させるための社内規程等の根拠がなく休暇で対応してもらうしかないことがある。 通所型の支援プログラムを活用するためには、仕事を休まなければならず、収入への影響等が生じ、本人や家族が受講を躊躇してしまうことがある。 家族が本人の処遇の低下につながるのではないかとの思いがあり、理解を得にくいことがある。 本人が通常業務を行いながら、補完手段の習得等を集中的にトレーニングするには時間が確保しにくいことがある。 1 ジョブコーチ支援と支援プログラムのハイブリッド支援の試行 (1) 支援事例の概要 Jさん(50歳代・記憶障害・易疲労性) ・K社 支店(物流サービス部門) ・担当業務 営業サポート K社(物流業) ・本社L人事担当者 ・支店M人事担当者 ・所属課 N課長 Jさんは、3年前にくも膜下出血を発症し、休職。病院でのリハビリを行ったが、記憶を保つことが難しく、疲れやすいという後遺症が残っていた。 発症から1年後、後遺症についてK社に説明し、当面は勤務時間を午前9時~午後13時までとする時短勤務で復職。後方サポート業務を担当していた。 復職して、1年経過したころに、リハビリをしていた病院にJさんから相談があった。 相談の内容 仕事を教えてもらうが、うまくできないことが多い。 「わからないことは質問して」とN課長から言われるが、わからないことが何かがわからない。 家庭の事情もあり、近い将来、収入を増やし自立しなくてはいけない。そのためにも勤務時間を延長したい。 本人の同意を得た病院の担当者が、N課長に連絡を取ったところ、会社側も対応に苦慮していることがわかった。病院の担当者から、職場内での支援として地域センタージョブコーチ支援の情報を、本人、家族へ提案したところ、興味を示されたため、地域センターのOカウンセラーへ支援要請が挙がった。 Oカウンセラーは、K社を訪問し、本社L人事担当者、支店M人事担当者、N課長から現状を伺った。 今の仕事はJさんができそうなものを組み合わせて設定している。現状の時短勤務でも「疲れた」と話されることが多いため、早急に時間を延ばすのは厳しいのではないかと思うが…。 周りもJさんがどんな障害か、何となくは知っているが、具体的にJさんから聞いていないので、どう関わればいいのか分からない。 Oカウンセラーは、Jさん、K社双方への支援として、ジョブコーチ支援を実施することを提案した。 ジョブコーチ支援の支援目標 1.メモの取り方について支援 2.小休止の取り方について現状の確認とアドバイス 3.Jさんの特性に応じた新たな仕事の検討に向けた提案 さらにOカウンセラーは、勤務時間延長に伴う疲労の状態を把握できるとよいと考え、働きながら支援プログラムを利用するプランを、Jさん、K社双方へ提案し、同意を得た。  Jさん、K社、地域センターカウンセラー、支援プログラム担当者が相談し、ジョブコーチが定期的に会社を訪問して支援を行い、月1回支援プログラムに参加することとしました。支援プログラム担当者とジョブコーチは、日々の支援状況について情報共有し、支援を行いました。 図3 支援のイメージ 会社(事業所) 事業所内で支援 ジョブコーチ 情報共有 支援機関(プログラム) 事業所外で支援 週1回~月1回 本 人 企業での就労 (2) 支援プログラム、ジョブコーチ支援での取組 支援プログラム 【支援期間】4か月 【受講頻度】月1回程度(合計6回) 【受講時間】10:15~15:30 【受講内容】 1日目 オリエンテーション、作業体験(PCでの数字入力作業) 2日目 個別相談、視聴覚教材を活用した講座(テーマ「疲労」) 3日目 個別相談、作業体験 4日目 個別相談、グループミーティング 5日目 個別相談、視聴覚教材を活用した講座(テーマ「記憶の機能」) 6日目 個別相談、グループミーティング 【支援内容】 1.疲労について スタッフとともに視聴覚教材「疲労」を視聴し、休憩の取り方を確認した。さらに同教材で紹介されている対処方法を、プログラム内で試し、対処のバリエーションを増やすことができた。 作業に比べ、個別相談やグループミーティングなど、人と話をする時間は疲労の感じ方が異なり、「すっきりする感じがする、とても楽しい。」と感想が聞かれた。 2.記憶について スタッフとともに視聴覚教材「記憶の機能について」を視聴し、Jさんが該当するエピソードや行っている対処を確認し、整理した。 仕事における業務完了メールの代わりに、支援プログラム独自様式の日誌を活用し、次の来所日にはそれを読み、前回行ったこと、本日取り組むことを確認することを習慣化した。 作業体験で、手順書をJさんとスタッフが共同で作成し、次回の作業する際に参照しながら進める体験する機会を繰り返し設定した。 3.障害特性の整理について グループミーティングで、他の受講者が「職場に対し障害について自ら説明した」という話を聞き、「私も会社に高次脳機能障害について知ってもらいたい。ちゃんと伝えたい。」という思いが生まれた。 スタッフとともに、障害に応じた対処方法等をまとめた資料(ナビゲーションブック)を作成。 ジョブコーチ支援 【支援期間】6か月 【訪問頻度】集中支援期(2か月)→週2回 移行支援期(4か月)→週1回 【支援内容】 1.メモの取り方について支援 工夫① 前日の業務完了メールを、翌日朝参照してから業務を開始すること。 (前日の内容を思い出す、当日に行うタスクやスケジュールの確認) 工夫② 業務ごとに手順書を作成。分からない時には、手順書をもとに質問する。 2.小休止の取り方について現状の確認とアドバイス 工夫③ 小休止はとれているため、小休止中の新たな過ごし方として、ストレッチ、 離席し動いてリフレッシュすること。 3.Jさんの特性に応じた新たな仕事の検討に向けた提案 確実に手順を習得しやすい「繰り返して行う業務」を事業所とともに検討した。 支援プログラム担当者とジョブコーチは、情報共有をしつつ支援を進めていった。 支援終了後には、Jさん、K社、Oカウンセラー、ジョブコーチ、支援プログラム担当者が一堂に会した会議を設定し、Jさんからナビゲーションブックについて説明するとともに、行った支援の結果について共有した。 K社の感想 Jさんが、しっかり自分の特性をまとめていて、このような支援を受ける機会があったのは、とてもよかった。 ナビゲーションブックは活用したいと思う。Jさんが伝えてもいいという範囲を確認してから進めていきたいと思う。 ただ、午後の作業を体験し、疲労のサインが出ていることはやはり気になる。現時点ですぐに時間を延長するのは心配なため、もうしばらく様子を見ながら検討させてほしい。 その後、ナビゲーションブックについては、Jさんの希望に沿って、社内で説明共有が図られた。 一方で、現時点での時間延長が難しかった点については、Jさんの「自立したい」という思いをより具体的に進められるよう、職場に対する働きかけだけでなく、住まいや金銭管理等日常生活に関する相談ができる地域の支援機関の利用をJさんへ提案した。Jさんからも同意が取れたため、後日相談に同行し、地域で自立的に生活していく方法について検討を進めている。 そのほか、グループミーティングへの参加を通じ、Jさんにとって、安心して人と話せる場は、同じような経験をしたもの同士で情報交換ができ、職場に対して自分から働きかけるといった変化が見られたため、当事者同士が交流できるグループ活動の場を探すとともに、在職者のグループミーティング(第5章参照)を活用することとした。 2 ハイブリッド支援を効果的に実施するためのポイント  今回の事例では、事業所外の支援プログラムを活用し、本人の話を丁寧に聞き取る中で、必要な知識の習得や、エラーが許容される環境下で補完手段の実践に取り組みました。さらに、得られた知識や補完手段は、事業所内で行うジョブコーチ支援を通じて、職場に適合する形に落とし込むことができました。これにより、自ら応用的な取組を行うことが難しい特性のある方にとって、職場での実践が可能となり、支援の効果を得ることができました。  一方で、効果的に支援を実施するために、以下の点に留意しました。 (1) 支援目標と役割の共有 支援の具体的な目標について、担当者間で事前にすり合わせておくことが重要です。現在生じている課題の解消に向け、いつ頃までにどのような支援を行うのかを明文化することで、支援が分断されず、つながりを保ちつつ展開できるよう留意しました。 (2) 支援中の情報共有と対応の統一性 支援の過程で、担当者間の情報共有を適宜行い、支援期間の終盤には、支援の効果検証および支援期間終了後に残る課題へのフォローアップ方法についても確認し、統一的な対応がとれるようにしました。 今回の事例からは、安心して人と話せる場が、仕事と生活の両立に効果的である可能性も見出されました。在職中の高次脳機能障害者の中には、同じような病気や怪我を経験し、現在もその症状に悩まされている当事者と交流をした経験がない方もいます。 そこで、第5章では、在職中の高次脳機能障害の方を対象としたグループミーティングについて紹介します。 【参考文献】 障害者職業総合センター:調査研究報告書No.63「高次脳機能障害者の就労支援-障害者 職業センターの利用実態および医療機関との連携の現状と課題-」(2004年3月) 障害者職業総合センター職業センター:支援マニュアルNo.26「職場適応を促進するため の相談技法の開発」(2025年3月) 第5章 本人のモチベーションの向上を図る取組 第5章 本人のモチベーションの向上を図る取組  専門機関へのヒアリングの中では、働き始めた方へのフォローアップや、支援者の介入に不安を感じる方への緩和策として、在職中の高次脳機能障害者同士の交流の機会が有効と思われるという意見が挙がりました。この章では、在職中の高次脳機能障害者を対象としたグループミーティングの取組について、紹介します。 1 在職者を対象としたグループミーティング (1) 目的  プログラムを受講する高次脳機能障害のある方の中には、これまで同じような経験や症状を持つ当事者と関わる機会はなかったと話をする方が多くいます。それらの方々からは、「自分と似た状況にある当事者の取組を聞いてみたい」「働き出すと、これまでと何が違うのか知りたい」といった、当事者同士の意見交換を期待する声がありました。 職場では、同じような状況の他者とともに働く機会は少なく、在職中の支援として、体験的知識やロールモデルに触れることができるグループミーティングに対する本人のニーズは高いものと考えられます。  今回行ったグループミーティングは、働く上でのアイディアやヒントを交換し合う場とし、自分の働き方のアイディアを得ること、また自らも誰かの働き方のアイディアに寄与する役割を担うことを目的に、「仕事のアイディア広場」と称して開催しました。 (2) 実施方法 ア 参加目的の共有 グループミーティングに参加する際は、事前に本人と相談し、働く中で困っていること、不安に感じていること、気になっていることなどを振り返ったり、これまでの相談の中で本人が話していた困りごと等をもとに、参加目的を共有します。 一方で、現時点で具体的な目的が明確に定まっていない場合でも、グループミーティングの場で他の参加者の意見や経験に触れることを通じて、自身の課題への気づきや解決のヒントを得るきっかけになる可能性があります。そのため、目的がはっきりしていない場合には、他者の意見や経験を聞くことを参加の目的として位置づけます。 また、事前に参加目的を設定しても、必ずしもグループミーティングの中で他の参加者からの直接的な答えや具体的な情報を得られるとは限らないことを、あらかじめ伝えています。 【参加目的の例】 ・自分の障害についてどのように会社の人に伝えているか知りたい ・時短勤務からフルタイムに移行する際どのように会社とやり取りしたか知りたい ・支援プログラムで行っていた工夫(タイマーや休憩の取り方)を実際会社の中でどのように活用しているか知りたい ・復職して大変だったことを共有したい さらに、安心して意見交換できる場にするため、以下の参加のルールについても事前に共有しています。 ①回答を控えたい場合は、パスすることもできます ②挙がった意見は、どれも貴重な情報です。否定せず、最後まで聞いてください ③意見を出してくれた相手には、感謝の気持ちを表現しましょう ④参考となった意見は、忘れないようメモに残してください ⑤体調不良などがあれば、スタッフに申し出てください ⑥情報交換会で得た個人情報・企業情報については、口外しないようにお願いします イ 参加者の構成 ・在職中の支援プログラム修了者 ・支援者(カウンセラー、支援プログラムスタッフ) ウ 開催頻度 アンケートをもとに、半年に一度のペースで実施しました。 エ 開催方法 対面形式とオンライン形式(Teams)それぞれ1回ずつ実施しました。 ①対面形式 ➁オンライン形式 メリット ・開かれた空間のため自然に会話に入りやすい ・その場だからこそ話せる内容がある ・表情やしぐさなど非言語コミュニケーションが取れるため、発言の少ない方でも参加しやすい ・移動が不要のため、遠方の人も参加可能で、時間や場所を選ばない ・疲労管理が重要な課題となるケースも多いため、移動による疲労を軽減できる デメリット ・遠方の場合、移動時間や交通費がかかり負担が大きい ・移動を含めて拘束時間が長くなるため時間的な制約がかかる ・会場確保や参加者の予定調整に時間がかかる ・オンラインに不慣れな場合、接続設定や操作にサポートが必要 ・PCやネット環境が不十分だと参加が困難 ・表情やしぐさなど非言語的な反応が伝わりにくく、雰囲気がつかみにくい オ 進行方法  グループミーティングの進行は、支援者がファシリテーターを務め、参加者の発言を促す役割を担います。  ファシリテーターは、参加者と事前に設定した目的に基づいて進行しますが、当日の話の流れや参加者の発言内容に応じて柔軟に対応し、他の参加者にも意見を求めるなど、自然な対話を促します。  また、特定の参加者に発言が偏らないよう配慮し、誰もが安心して参加できる雰囲気づくりを心がけました。 カ 準備物 表8 準備物一覧 支援者 参加者 <事前準備> ・グループミーティング スケジュール表(資料7) ・グループミーティング 周知リーフレット(資料8) <当日> ・筆記用具 ・飲み物(必要に応じて) ・ホワイトボード ・筆記用具 ・PC(オンライン形式の場合) ・PC(オンライン形式の場合) <終了後> ・アンケート(資料9) (3) 支援者側の工夫や配慮 ア アイスブレイクの導入  グループミーティングの冒頭には、軽い雑談や自己紹介といったアイスブレイクを取り入れ緊張を和らげることで自然なコミュニケーションが取れるように工夫します。 イ 時間設定  グループミーティングの所要時間はおおよそ1時間~1時間半程度とし、参加者の疲労や集中力に配慮した構成とします。必要に応じて途中で短い休憩を挟むことで、無理なく参加できる環境づくりを心がけます。 ウ 情報共有の方法  記憶障害や注意障害等の影響から、自他の発言内容を忘れてしまったり、情報が追えなくなることが想定されます。グループミーティングでは、ホワイトボードを活用し、話している内容が随時確認できるようにします。ただし、参加者が安心して話せる環境を整えるため、参加者の個人情報やプライバシーに関する内容は書かず、参考となる意見は参加者自らメモに残してもらうようにします。 エ オンライン形式による実施時の工夫  オンライン形式によるグループミーティングに不慣れな参加者には、事前に接続方法や操作手順のガイドを行い、必要に応じて家族や支援者の協力を求めます。また、長時間画面を見続けることで、疲労感につながりやすいため、ミーティング時間はおおむね1時間程度に設定し、負担を軽減するよう配慮します。 資料7 グループミーティングスケジュール表 仕事のアイディア広場 15:00~16:00 参加者 働いている高次脳機能障害のある方(プログラム終了者を含む) 目的 働いている高次脳機能障害のある方々が集まり、働くためのアイディアやヒントを交換し、お互いの成長や支えあいを目的とする時間です。 内容 ・簡単な自己紹介をしてから、始めます。 ・職業生活を送る中で、自ら工夫していることや周囲に理解してもらい対処していることがあれば、参加されている方へ共有をお願いします。 ・ほかの参加者へ聞いてみたいことがあれば、アイディアやヒントが生まれる機会になるかもしれません。質問ください。 「こんなとき、他の人はどうやって乗り越えているんだろう?」 「会社の人とのコミュニケーションを円滑にするアイディアはないかな?」 「休みの日、疲れて何もできないが、他の方はどうなんだろう?」 など、こんな疑問についてアイディアやヒントを意見交換をしていきます。 留意事項 ①回答を控えたい場合は、パスすることもできます。 ②挙がった意見は、どれも貴重な情報です。否定せず、最後まで聞いてください。 ③意見をだしてもらった相手には、感謝の気持ちを表現しましょう。 ④参考となった意見は、忘れないようメモに残してください。 ⑤体調不良などがあれば、スタッフに申し出てください。 ⑥情報交換会で得た個人情報・企業情報については、口外しないようにお願いします。 資料8 グループミーティング周知リーフレット 試行開催 仕事のアイディア広場 働いている高次脳機能障害のある方が集う 意見交換・勉強会 「仕事のアイディア広場」は、働いている高次脳機能障害のある方々が集まり、働くためのアイディアやヒントを交換し、お互いの成長や支えあいを支援する目的として企画しました。 こんなとき、他の人はどうやって乗り越えているんだろう? 会社の人とのコミュニケーションを円滑にするアイディアはないかな? 休みの日、疲れて何もできないが、他の方はどうなんだろう? 等 こんな疑問について、アイディアやヒントを意見交換していきます。 【意見交換】 参加者同士でアイディアやヒントを交換します。 【日時】 令和〇年〇月〇日(〇曜日)  15時00分~16時00分 資料9 アンケート 【アンケート】 本日は、「仕事のアイディア広場」に参加いただき、ありがとうございました。 参加いただいた皆様の声を、お聞かせいただきたく、アンケートにご協力お願いいたします。 Q1 現在所属されている会社の在籍年数 ☐ 1年未満 ☐ 1~5年未満 ☐ 5年以上 Q2 参加された理由やきっかけはありますか?(複数回答可) ☐プログラム担当職員から案内があった ☐同じ症状ある方の取組みや工夫を聞いてみたかった ☐自分の取組みや工夫を紹介したかった ☐久しぶりにセンターを訪ねてみたかった ☐特になし ☐その他(                   ) Q3 参加にあたり、大変だったこと、不安だったことはありますか?(複数回答可) ☐どんな人が参加するか、不安だった ☐他の人と話ができるか、心配だった ☐会社との調整(時間休、シフトや公休日変更) ☐センターまでの来所経路 ☐特になし ☐その他(                   ) Q4 参加された感想を教えてください。 Q5 今後の開催頻度や日時について、適切だと思うものを選んでください。 ☐2~3か月ごと ☐ 半年 ☐1年 ☐不定期 Q6 オンライン会議で開催されるとしたら、参加してみたいですか? ☐参加してみたい(⇒参加場所 ☐ 自宅 ☐ 会社 ☐ その他) ☐参加したくない ☐分からない Q7 その他、ご意見がありましたが、記入ください。 2.支援事例の紹介 (1) 事例➀ 対面形式でのグループミーティング Pさん(50歳代・注意障害、易疲労性) ・Q社の経理部に所属 ・担当業務 事務補助 Pさんは、産業医の勧めで復職前の準備として支援プログラムを利用。休職前に所属していた経理部で、職務内容を変更し、職場復帰を果たした。支援プログラムでは、易疲労性への対処として、定期的に短時間の休憩を挟んでいたため、復帰後の休憩の継続について産業医や現場の上司、同僚に配慮も申し出て、理解を得られていた。   復職して3か月が経過したころ、支援プログラム担当のカウンセラーから、在職者のグループミーティング開催の情報提供を兼ね、近況を伺った。 Pさん ・3か月、疲れの対策を講じながら仕事ができている。周りの方も理解してくれており、自分からも「こういう症状があります」と積極的に伝えるようにしている。 ・「頑張らなきゃ」という気持ちがようやく落ち着いてきた。ただ、仕事の内容が変わったことで、これをずっと続けていくと思うと、モチベーションが維持できるか少し心配。 カウンセラーから、グループミーティングに参加される方の中には、仕事内容が変わった方もいると思うので、モチベーション維持の工夫について聞いてみる機会かもしれませんねと投げかけた。 Pさんからは、 ・気持ちがガクンと落ちた時期があれば、是非他の人にどう乗り越えたのか、教えてもらいたい。 と、グループミーティングへの参加の意思と目標が挙がった。 在職者のグループミーティング “仕事のアイディア広場” ●参加者 支援プログラム修了者 4名 支援プログラムスタッフ 3名(司会、記録係) ●実施時間 1時間 ●内容 事前に確認した質問を紹介しながら、参加者同士で意見交換を行う。 復職して3か月経ち、ようやく気持ちが落ち着いてきたところです。 同じ部署内に仕事内容を変えてもらって復帰し、今の仕事自体は自分としては問題なくできていると思っているのですが、周りは以前自分がいたときよりも忙しそう。今の仕事がいやという事はないのですが、この先、このままモチベーションが維持できるか心配です。すでに復帰されて長い方がいらっしゃれば、気持ちがガクンと落ちた時期があったら、どのくらいの時期だったか、どうやって乗り越えたか、ぜひ教えてもらいたいです。 Pさんの質問に対し、復帰して2年が経過しているRさん、1年が経過しているSさんとTさんが話をされた。 Rさん いろいろ周りのことをみると気にはなるけど、なるべく気にしないようにしています。 Sさん 多少、さみしいなとか悔しいなという思いはあるけれど、病気から復帰できたことへの感謝が大きいかな。気にしない。「まあいっか」と別のことを考えるようにしている。 Tさん 私は記憶障害があるから、悪い意味でもいい意味でもすぐ忘れちゃうから(笑)。 話題はその後、仕事をスムーズに進めるための工夫についてTさんから質問が挙がった。 Pさん 私はまだ3か月しかたっていませんが、社内メールが毎日たくさん来るんです。これをためてしまうと、後で見るのがとても大変で疲れてしまいます。 ですから、毎日決まった時間にメールを見るようにして、見た段階ですぐに返信するようにしています。 Tさんからは、Pさんの工夫に対して、「見る習慣と、すぐに処理する癖をつけなければいけないなと聞いていて思った」と感想が述べられた。 グループミーティング終了後のアンケートでPさんが書いた感想 ・自分の取組や工夫について紹介できてよかった。 ・切磋琢磨して頑張っている方と同じ時間を共有したことで、自分も励みに繋がったし、少しでもみんなの役に立てればと思った。 (2) 事例② オンライン形式でのグループミーティング Uさん(50歳代・注意障害、易疲労性) ・V社の製造部に所属 ・担当業務 事務補助等 Uさんは、主治医の勧めで復職準備として支援プログラムを利用。プログラムでは、復職後の業務を想定した作業に取り組みながら、職場で必要な配慮を伝えるための「ナビゲーションブック」を作成し、事業所へ伝えた。復職時にはジョブコーチ支援を活用し、易疲労性への配慮として短時間勤務からスタートした。  Uさんは、事業所が高次脳機能障害のある方の復職を受け入れるのが初めてであったため、必要な配慮が得られるか不安を抱えていた。さらに、職場に同じ障害を持つ人がおらず、気軽に病気のことを話せる機会がないことを心配していたため、支援プログラム利用中に担当カウンセラーからグループミーティングを案内していた。  復職後は、休憩の取り方を工夫するなどして疲労をケアしながら勤務し順調そうであった。そこでグループミーティングへの参加を提案したが、わざわざ通所することに対して負担感を示していた。 支援プログラム担当カウンセラーからオンラインでのグループミーティングについて提案し、メールを活用しながら参加方法や参加目的の共有を行った。 Uさん ・復職後も職場の人たちが以前と変わらず接してくれており、その点は安心できている。 ・仕事内容は以前と変わったが、プログラムで練習していたことが役立ち、対応できている部分が多い。 ・現時点では業務でできないことはないが、当初予定していた以外の仕事を頼まれることがあり、迷った末に「頑張ればできる」と思って引き受けてしまった。 ・このまま業務量が増えたり、突然新しい仕事を振られるのではないかという不安が出てきている。 カウンセラーから、同時期にプログラムを利用し復職した方がグループミーティングに参加予定であることを伝え、同じくらいの時期に復職しているため、似たような状況が起きている可能性もあり、その方の経験や対応方法を聞くことで参考になるかもしれないと提案した。 Uさんからは、 ・不安を共有しつつ、同じような場面での対処法を知りたい。 とグループミーティングへの参加の意思と目標が挙がった。 【参加者】                              ・支援プログラム修了者 2名              ・支援プログラムスタッフ 2名(司会、記録係) 【実施時間】 ・1時間       Uさん 復帰して3か月経過し、少しずつ今の仕事にも慣れてきています。 ただ、最初はA作業だけでしたが、「B作業もやれるね」と言われてやり始めました。なんとかやれてはいるけれども、やっぱり自分のこと分かってもらえてないのかなという気持ちや、今は良いがこれ以上色々な作業増やされると対応が難しいかもしれないと感じています。 Wさんは復帰して、仕事内容や、周囲の人の反応や理解などはどのような感じですか? Uさんの質問に対し、復職して2か月が経過しているWさんが話をされた。 Wさん 復職して2か月になります。現時点では、従前とは仕事内容は変わりましたが、復帰時に想定していた仕事を行っています。 実は、私も復職してしばらくした頃、会社から『これもお願いできるかな』と新しい業務を提案されたことがありました。 Uさん それに対してどのように返答されましたか? Wさん 正直、できるかもしれないと思ったのですが、すぐに引き受けるのは不安で「少し考えさせてください」と返答しました。 そこで、プログラムで学んだことを思い出して、一度立ち止まってこういうときはどうすれば良いかなと支援者に相談する方法があると思い出し、支援者に相談しました。支援者と一緒に、どう考えたらいいか、どう伝えたらいいかを整理してから、改めて会社には『今すぐ全部は難しいですが、様子を見ながら少しずつ進めてもらえると助かります』と伝えました。結果、会社も納得してくれて、無理なく進められるようになりました。 Uさんからは、次に新しい仕事を頼まれた時には即答はせず、支援者とも相談しながら考えることも選択肢の一つだと気づいたとの感想が聞かれた。 グループミーティング終了後のアンケートでUさんが書いた感想 ・似たような経験を聞けて、自分だけじゃないと感じられ安心した ・同じ障害を持つ方と久しぶりに話し、共感してもらえたことが嬉しかった ・自分では考えつかなかった工夫や方法を知ることができた ・オンラインでのミーティングは初めてだったが、離れた場所にいるWさんと話せてうれしかった。 【参考文献】 障害者職業総合センター職業センター:支援マニュアルNo.5「高次脳機能障害者の方への就労支援~職場復帰支援プログラムにおけるグループワーク~」(2010) 障害者職業総合センター職業センター:支援マニュアルNo.25「テレワークにおける職場適応のための支援技法の開発」(2024) 障害者職業総合センター職業センター:実践報告書「高次脳機能障害者の自己理解を進めるための支援技法の開発」(2025) 第6章 まとめ 第6章 まとめ  本実践報告書では、在職中の高次脳機能障害者の職場再適応に向けた支援において、支援へつなげるきっかけを作り、事業主や本人が利用しやすい柔軟な支援体制等について検討し実践した支援内容およびその中で活用したツール等について具体的に紹介しました。  令和4年に実施された「生活のしづらさなどに関する調査(在宅障害児・者等実態調査)」によると、日中の過ごし方について回答した19~64歳の高次脳機能障害者14万1千人のうち、一般企業で働いている者(障害者雇用を含む正社員・正社員以外)は3万3千人であり、全体の23.4%を占めています。  障害者差別解消法および障害者雇用促進法に基づく雇用分野における障害者に対する合理的配慮の提供義務が課され、さらに法定雇用率の段階的引き上げが進められています。また、65才までの雇用確保措置の義務化や70才までの就業確保措置の努力義務化といった高年齢者雇用に関する法整備も進んでいます。こうした背景の中で、中高年層に多い脳血管障害の後遺症として高次脳機能障害を発症後も働き続ける人の比率も増えていくことが考えられます。  高次脳機能障害は、記憶や注意、遂行機能等の認知機能に影響が生じることが多いため、職場での業務遂行に困難を生じる場合があります。しかし、その障害特性は外見からは分かりにくく、実際に職場で働いてみてはじめて問題が顕在化することも少なくありません。このため、問題が把握された際に、職場や本人・家族だけで抱え込むのではなく、適切な支援に繋がれることが重要です。 在職中の高次脳機能障害のある方が十分に力を発揮し、事業主が安心して雇用し続ける上で、本実践報告書で紹介した支援技法が役立つことを期待しています。 資料集 資料集 第2章 資料No 資料名 ページ 1 相談シート「思い当たることはありませんか?」 64-65 2 相談シートの活用について 66 3 高次脳機能障害の主な症状 67 第3章 資料No 資料名 ページ 4 活用方法の説明 68-69 5 シートA(仕事の流れや本人の行っている工夫) 70 6 シートB (会社が取り組んでいる配慮や工夫、従業員への期待) 71 第5章 資料No 資料名 ページ 7 グループミーティングスケジュール表 72 8 グループミーティング周知用リーフレット 73 9 アンケート 74 「思い当たることはありませんか?」 ~過去に病気やケガで脳に損傷を受けた方からのよくある相談&助言例~ Aさんの1日 出勤 1 出勤の際に よく聞かれるエピソード 出発前の準備や段取りがうまくいかない 【例】出発前に、携帯が見つからずぎりぎりに出発 出社時間までにたどり着けるか不安 【例】電車の乗り換えは大丈夫かな 出社して行う朝の準備が抜けてしまう 【例】タイムカード打刻忘れてしまう 解決法(★対処の工夫、◇配慮のお願い事項) ★前日に準備 ★準備物チェックリスト ★物の置き場、着替えを決めておく ★乗車前に乗り換えアプリで確認する ★目印を写真にとって簡単に地図を書く ★ロッカーに注意喚起の付箋を貼っておく ★朝準備の段取りをスケジュール化する  メモ 仕事を始める 2 仕事を始めるときに・仕事の指示を聞くときに よく聞かれるエピソード 何から始めるか、どこから始めたらいいかわからない 【例】昨日どこまでやったかや忘れてしまった) わからないことがわからない 【例】何がわからないかがわからない 【例】言葉が出ず、質問ができない 口頭での説明だけだと、忘れてしまう メモがおいつかない 【例】説明を聞きながら同時にメモをとるのは難しい 解決法(★対処の工夫、◇配慮のお願い事項) ★仕事の前にメモを見る。 ◇毎朝、今日することの確認を行う。 ★音声認識アプリをメモ代わりに使用 ◇箇条書きのメモを渡して説明する  メモ 作業中 3 作業でよくあるエラー・変更への対応 よく聞かれるエピソード 同じミスが続いてしまう 【例】入力ミス、計算ミス、誤字脱字 報告や約束時間を忘れてしまう 【例】同僚に指摘されて気が付くことが多い いつもと違ったり、急な変更があると、慌てたり混乱してしまう 【例】手が止まってしまう 【例】違うことを始めてしまい、上司に指摘される 解決法(★対処の工夫、◇配慮のお願い事項) ★指差しやルーラーを使って見直す  ◇重要な書類はダブルチェックを依頼 ★アラームやリマインダーを使う   ★「何を」「誰に」「いつまでに」をメモする   ◇どこが変わるのか、早めに伝えてもらう  メモ 昼休み 4 休憩時間の過ごし方 よく聞かれるエピソード 休憩時間の過ごし方がわからない 【例】休憩を取らずに仕事をしている 午後の作業開始時間に少し遅れる 【例】気づいたら、午後の作業開始時間1分前だった 解決法(★対処の工夫、◇配慮のお願い事項) ★休憩場所や過ごし方を決めておく ◇落ち着いて休める場所を本人と確認 ★アラームをかけておく  メモ 午後の仕事 5 疲れの影響 よく聞かれるエピソード 午後になると集中力が下がってくる 【例】ミスが増える、頭がぼーっとする、反応がゆっくり 今何をしていたのか、少し前のことが思い出せない 【例】午前中にお願いされていたことは何だっけ? 眠くて、仕方がない 【例】眠けが強くて作業が進まない 解決法(★対処の工夫、◇配慮のお願い事項) ★休憩の目安を決めておく ◇午前と午後で作業を変える ★午前中のメモを読み返す時間を設ける ◇休憩時間を長めにとる ★休憩を使い、ストレッチ等体を動かす   ★自席から離れて休憩する  メモ 仕事終了 その他 6 その他(仕事の周辺でのことがら) よく聞かれるエピソード 何度も同じこと言われてしまう 【例】自分は、ちゃんとやっているつもりなのに イライラしたりすることが増えた 【例】話し声や音、言いたいことが伝わらない・ミスが続くとき、指摘される時 解決法(★対処の工夫、◇配慮のお願い事項) ★よく言われることを付箋に残し、いつで も確認できるようにする ★イライラしたときの対処を決めておく ◇クールダウンの声かけをしてもらう  メモ 【事業所用】 働いている高次脳機能障害のある方との相談シート 「思い当たることはありませんか?」のご紹介 相談シート「思い当たることはありませんか?」とは? 職場での適応に課題が生じている高次脳機能障害のある従業員の方と、課題解決に向けた手立てを考えるツールとして作成しました。  事業所の方が課題として認識している事実について、従業員の方に説明した結果、概ね共通認識が図れた場合には、支援者との相談を提案するきっかけとして、本シートを従業員の方との相談でご活用ください。 添付資料 ■ (参考資料)高次脳機能障害の主な症状 ■ 相談シート「思い当たることはありませんか?」 活用方法 ① 事実に対して概ね共通認識ができている場合従業員へ課題として認識している事実を伝える 従業員と事実に関して概ね共通認識が図れた (従業員が自分の言葉でエピソードを語ってもらう等で確認) シートを活用した相談の提案 ①(シートを活用した相談について)本人の同意を得る ②シートの記入 ③支援者との相談提案 ④③への同意 支援へつなげる ※従業員の方と相談する場合には、本人への指導や一方的な労働条件の不利益変更等のために利用することのないようご注意ください。 ② 事実に対して従業員と事実認識の齟齬が大きい場合  事実を本人が理解しやすい方法を検討しながら、安心して話せる環境の中で説明を重ねる。 (②でシートが活用できる場合) ■ 事業所内の担当者が現状を整理に活用 ■ 事業所の方と支援者の相談で活用 高次脳機能障害に関する専門知識がない事業所担当者が、現状を整理し解決のヒントを探る。 事業所で起きている状況を記入し、事業所の方が支援者と相談する際に、活用する。 ※必要最小限の範囲で使用し、従業員の方のプライバシーに十分配慮ください。 ※支援者との相談にあたっては、従業員の方のプライバシーに十分配慮ください。 相談シートの活用方法や、従業員の方の雇用定着に向けたご相談がありましたら、 までご相談ください。 〔参考〕高次脳機能障害の主な症状 高次脳機能障害の主な症状は以下のとおりです。ただし、症状の現れ方には個人差があります。 注意障害 注意を持続する、集中する、周囲に注意をはらう、すばやく注意を切りかえるといったことが難しい。 ケアレスミスが多い。 周りの音や声に注意が散りやすい。 作業している途中で話しかけられると、その内容を後で覚えていない。 細かいところに気づくことが難しい。 複数のことを行うと、どちらかがおろそかになる。 記憶障害 昔のことが思い出せなかったり、新しいことをおぼえておくことが難しい。 見たことや聞いたことを忘れる。 日課や約束を忘れる。 人の名前や顔がなかなかおぼえられない。 同じ質問を何度もする。 メモを書いても、書いたこと自体を忘れたり、どこに書いたかわからなくなる。 半側空間無視 事物や空間の左右どちらかに注意が向きにくくなる(多くの場合は左側)。 左側にある人や物を無視する。 自分の左側に置いた持ち物を置き忘れる。 作業上の見直しが特に左側に多い。 左の道を見落として道に迷う。 横書き文章の文頭の文字や単語を見落とす。 8と3を見まちがえる。 遂行機能障害 目標や予定を達成したり、計画的に段取りよく行動したり、変化にうまく対応して行動することが難しい。 家事や作業を行うとき、段取りや効率が悪い。 「行き当たりばったり」な行動をする。 複数の担当作業の優先順位の判断が難しい。 困ったときに誰かに相談することができない。 先を見越した行動をとることが難しい。 社会的行動障害 行動や言動、感情をその場の状況に合わせてコントロールすることが難しい。 我慢できず、無計画にお金を使う。 イライラして、すぐに機嫌がわるくなる。 場をわきまえず発言したり、行動する。 気になることがあると、そのことばかり言う。 悲観的な言動が目立つ。 失語 会話や読み書き、計算など、言語を使う行為に困難が生じる。 口頭説明だけでは作業手順を理解できない。 複雑、抽象的な話は理解が追いつかない。 文字を読みまちがえる。文章が読めない。 漢字を思い出しにくい。 以前にできた簡単な計算が苦手。 易疲労 いひろう 一般的に疲れやすく、特に脳が疲労しやすい。 集中力や注意力の低下、あくび、眠気などがあらわれ、作業のミスにつながりやすい。 一定時間作業を継続すると、ミスが増えたり、話を理解しにくくなる。 一定時間作業を継続すると、集中力や注意力が低下する。 日中の眠気が強い。 疲れていることに自分で気づかない。 職場の“今”の共有シート 職場の“今”の共有シート 働いているご本人様と事業所ご担当者様、支援者がコミュニケーションをとり、現状の把握や共通の目標設定に活用できるツールです。 現状の把握 ご本人様の仕事内容やマニュアルの有無 ご本人様が取り組んでいる工夫や起きやすい事象 事業所様が取り組んでいる配慮内容の確認 事業所様がご本人様に期待されていること など 共通の目標設定 働き方の“今”を見える化して、できていること、課題を整理 課題解決に向け、今からできそうな行動の共有 支援者からの具体的な支援についての情報提供 など 記入方法 【記入者】 ・支援者 ・ご本人様 【手順】 ・出勤時~退勤時までのタスクを書き出します。 ・それぞれのタスクにマニュアルの有無をチェックします。 ・習得状況は、従業員が 「できている」     ・・・A 「時々困ることがある」・・・B 「自信がない、困っている」・・・C と感じている箇所をチェックします。 ・働いている中で行っている工夫や起きやすい事象があれば記入します。 【記入者】 ・支援者 ・事業所 様 【手順】 ・項目を読みながら、ご本人様の職場定着のために、事業所様がこれまで取り組んでいる配慮内容ついて、確認します。 ・課題の解決に向け、事業所様からご本人様へ期待したいことについて、記入します。 記入後の流れ(イメージ) ご本人様、事象所様、支援者の三者で、整理した情報を共有 ・できていること ・課題 を整理 課題解決に向けて取り組む行動を確認 具体的な支援計画の作成 目標の設定 目標 取り組む行動 目標の振返り時期 ご本人様 【例】手順書に沿って作業する 手順書チェックボックスに☑を入れる 1か月後 事業所様 【例】手順書の使いやすさの検証 使用状況を確認し、必要な改訂を行う 1か月後 その他 ジョブコーチ支援➡手順書活用の習慣化へのサポート、改訂が必要な個所は会社と共有します。 留意事項 ・このシートは、ご本人様の雇用継続の可否判断をするためのものではありません。 (シートA)仕事の流れや工夫を聞かせていただくための確認シート 時間 作業名 タスク(やること) マニュアル 習得状況 行っている工夫起きやすいこと 出勤 有 無 A B C 仕事の準備 有 無 A B C 有 無 A B C 仕事開始 有 無 A B C 有 無 A B C 有 無 A B C 有 無 A B C 有 無 A B C 有 無 A B C 有 無 A B C 有 無 A B C 休憩 有 無 A B C 仕事再開 有 無 A B C 有 無 A B C 有 無 A B C 有 無 A B C 有 無 A B C 有 無 A B C 有 無 A B C 仕事 有 無 A B C 退勤 有 無 A B C その他 (シートB)職場での配慮事項を聞かせていただくための確認シート 仕事前 体調把握のため、声掛けや日誌を活用している 本人がメモを取りやすいスピードで話す 指示は一つずつ出すようにしている 仕事の指示 マニュアルや工程表を作成している 指示にあたり、まずは見本を示すようにしている 作業の抜けなどがないよう、チェック表を活用している 業務指導の担当者を決めている できる限り、指導する担当者とシフトを合わせている 職場の環境 作業場所や使用する道具が分かるよう、写真や紙を貼った 照明や音など物理的な刺激が少ない環境を設定している 特性やできることに応じて作業内容や手順を見直している 仕事の内容 できるだけわかりやすく、定型的な仕事を依頼している 業務量は、疲労などを考慮し、いきなり増やさないようにしている 疲れが顕著にならないよう、こまめに休憩をとってもらっている 休憩 できるだけ静かな場所で休憩できるようにしている (本人のプライバシーに配慮したうえで、本人の希望を踏まえて) 障害の内容や必要な配慮の説明 相手の例 総務や人事担当者 上司 同僚 説明した内容例 疾患名 接し方(ペース配分、指示出しの工夫、声掛けのお願い等) 安全面の配慮 説明方法の例 本人より提供された資料を活用した 本人の説明を聞き、別途資料を作成した 支援機関による研修課を実施した その他 業務指示を出す担当者と、相談対応を行う担当者を分けるようにしている 慣れるまで、定期的な面談を継続している 産業保健スタッフ(産業医、保健師など)にも協力を仰いでいる 必要に応じて、ご家族や主治医と連絡を取っている 就労状況は、担当者間で共有している 支援機関へ、定期的なサポートを依頼している ★業務指示を出す担当者が変わる可能性 無 有(     年目安) ★会社が期待したいこと 仕事のアイディア広場 15:00~16:00 参加者 働いている高次脳機能障害のある方(プログラム終了者を含む) 目的 働いている高次脳機能障害のある方々が集まり、働くためのアイディアやヒントを交換し、お互いの成長や支えあいを目的とする時間です。 内容 ・簡単な自己紹介をしてから、始めます。 ・職業生活を送る中で、自ら工夫していることや周囲に理解してもらい対処していることがあれば、参加されている方へ共有をお願いします。 ・ほかの参加者へ聞いてみたいことがあれば、アイディアやヒントが生まれる機会になるかもしれません。質問ください。 「こんなとき、他の人はどうやって乗り越えているんだろう?」 「会社の人とのコミュニケーションを円滑にするアイディアはないかな?」 「休みの日、疲れて何もできないが、他の方はどうなんだろう?」 など、こんな疑問についてアイディアやヒントを意見交換をしていきます。 留意事項 ①回答を控えたい場合は、パスすることもできます。 ②挙がった意見は、どれも貴重な情報です。否定せず、最後まで聞いてください。 ③意見をだしてもらった相手には、感謝の気持ちを表現しましょう。 ④参考となった意見は、忘れないようメモに残してください。 ⑤体調不良などがあれば、スタッフに申し出てください。 ⑥情報交換会で得た個人情報・企業情報については、口外しないようにお願いします。 試行開催 仕事のアイディア広場 働いている高次脳機能障害のある方が集う 意見交換・勉強会 「仕事のアイディア広場」は、働いている高次脳機能障害のある方々が集まり、働くためのアイディアやヒントを交換し、お互いの成長や支えあいを支援する目的として企画しました。 こんなとき、他の人はどうやって乗り越えているんだろう? 会社の人とのコミュニケーションを円滑にするアイディアはないかな? 休みの日、疲れて何もできないが、他の方はどうなんだろう? 等 こんな疑問について、アイディアやヒントを意見交換していきます。 【意見交換】 参加者同士でアイディアやヒントを交換します。 【日時】 令和〇年〇月〇日(〇曜日)  15時00分~16時00分 【アンケート】 本日は、「仕事のアイディア広場」に参加いただき、ありがとうございました。 参加いただいた皆様の声を、お聞かせいただきたく、アンケートにご協力お願いいたします。 Q1 現在所属されている会社の在籍年数 ☐ 1年未満 ☐ 1~5年未満 ☐ 5年以上 Q2 参加された理由やきっかけはありますか?(複数回答可) ☐プログラム担当職員から案内があった ☐同じ症状ある方の取組みや工夫を聞いてみたかった ☐自分の取組みや工夫を紹介したかった ☐久しぶりにセンターを訪ねてみたかった ☐特になし ☐その他(                   ) Q3 参加にあたり、大変だったこと、不安だったことはありますか?(複数回答可) ☐どんな人が参加するか、不安だった ☐他の人と話ができるか、心配だった ☐会社との調整(時間休、シフトや公休日変更) ☐センターまでの来所経路 ☐特になし ☐その他(                   ) Q4 参加された感想を教えてください。 Q5 今後の開催頻度や日時について、適切だと思うものを選んでください。 ☐2~3か月ごと ☐ 半年 ☐1年 ☐不定期 Q6 オンライン会議で開催されるとしたら、参加してみたいですか? ☐参加してみたい(⇒参加場所 ☐ 自宅 ☐ 会社 ☐ その他) ☐参加したくない ☐分からない Q7 その他、ご意見がありましたが、記入ください。 ISSN 1881-0381 リサイクル適性A この印刷物は、印刷用の紙へリサイクルできます。 (表紙とCDを除く)