実践報告書 令和8 年3月 No.44 雇用管理場面における 職場適応を促進するための相談技法 自社社員との相互理解を 図る視聴覚教材 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター職業センター はじめに 障害者職業総合センター職業センターでは、発達障害、精神障害、高次脳機能障害のある方の職業の安定を図るため、事業主や関係機関の支援者等に対して、より効果的な支援が行えるよう、職業リハビリテーション技法の開発、改良及び普及を行っています。  令和4年12月、障害者の雇用の促進等に関する法律の改正により、事業主の責務について、障害者の適当な雇用の場の提供、適正な雇用管理等に加え、職業能力の開発及び向上に関する措置が含まれることが明示されるなど、事業主は、障害者が企業の成長、発展にとって無くてはならない人材として活躍し続けることができる環境づくりを一層進めることが求められています。  このような中、当センターが令和6年度に行った地域障害者職業センター等を対象としたヒアリング調査において、地域障害者職業センター等が相談を実施している事業主の状況として、障害のある社員との距離の取り方がよくわからない、率直な意見交換ができていないといったコミュニケーション形成に係る課題を抱えている企業担当者が少なくないことがわかりました。  上司・部下、社員間において円滑なコミュニケーションが図られることは、職場の心理的安全性の確保や労働生産性の向上にも寄与するとともに、障害のある方を含む社員のワークエンゲージメントの観点からも重要なファクターだと考えます。  本実践報告書は、これまで当センターで開発してきた様々な教材やツールの中から、誰もがいろいろと工夫しながら日々経験していることで、それぞれの経験を素直に共感しあえる話題を選定し、雇用管理場面における職場適応を促進するための相談技法について、簡便な動画とレジュメからなる視聴覚教材としてとりまとめたものです。これを、障害のある社員と企業の担当者等が一緒に視聴し、お互いの経験を話し合うことで、ちょっとした雑談ができるような打ち解けた関係づくりに資することを念頭に置いて作成しました。  本実践報告書が、事業主や関係機関の支援者等に活用され、職場や支援現場等の心理的安全性の確保等に役立てられることを期待しています。 令和8年3月 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター 職業センター 職業センター長    那須 利久  雇用管理場面における職場適応を促進するための相談技法  ~自社社員との相互理解を図る視聴覚教材~ 目 次 第1章 開発の背景と目的 1 開発の背景と目的 3 2 ニーズ等の調査 3 3 視聴覚教材の開発 5 第2章 視聴覚教材活用のポイントと注意点   1 活用のポイント (1) 「同じ情報を共有する」という立場で向き合う 9 (2) 双方向のコミュニケーションを図る 10 (3) 担当者が自己開示をして関係性を深める 11 (4) 否定しない 12   2 視聴覚教材を使った関係づくりの事例 13 3 視聴覚教材活用の注意点 14 (1) 視聴覚教材を活用した相談の中止も検討する (2) 本人が率直に話した内容に対して「指摘」や「指導」等はしない   【特別寄稿】「伝えたい」を「伝わる」に変える相談技法         職業能力開発総合大学校能力開発院 石田 百合子 助教 15 第3章 視聴覚教材の構成・活用方法・内容   1 視聴覚教材の構成 21   2 視聴覚教材の活用方法 22   3 視聴覚教材の内容    (1) 運動 23    (2) 食事 27    (3) 睡眠 32    (4) 習慣化をめざそう  39    (5) 怒りのしくみと付き合い方  45 おわりに 53 別冊 雇用管理場面における職場適応を促進するための視聴覚教材       第1章 開発の背景と目的 第1章 開発の背景と目的 障害者職業総合センター職業センターでは、気分障害等の精神疾患による休職者を対象とした精神障害者職場再適応支援プログラム(JDSP:Job Design Support Program)、発達障害者を対象としたワークシステム・サポートプログラム、高次脳機能障害者に対する職場復帰・就職支援プログラムを実施し、実践を通じて就職や復職に必要な各種スキルの付与に係る効果的な支援技法の開発に取り組んでいます。 1 開発の背景と目的 令和4(2022)年、障害者の雇用の促進等に関する法律の改正により、事業主の責務について、適当な雇用の場の提供、適正な雇用管理等に加え、職業能力の開発及び向上に関する措置が含まれることが明示されました。 このような中、職業センターでは、事業主が障害のある自社社員の能力を引き出せるよう、雇用管理場面において職場適応を促進するための相談支援ツールを開発するとともに、相談支援ツールの活用のポイント及び注意点を整理することとしました。 2 ニーズ等の調査  職業センターは、令和6(2024)年度に全国の地域障害者職業センター及び広域障害者職業センター(以下「地域センター等」という。)を対象に「支援技法の開発ニーズ等に関するヒアリング調査」(以下「地域センター等ヒアリング」という。)を実施しました。その結果、「事業主から職場適応を促進するための面談・相談の仕方について、相談を受けたことがあるか」という問いに対して87.5%が「ある」と回答しました。その中で、「雇用管理担当者と障害のある社員とが円滑なコミュニケーションを図れるような相談支援ツールがあると良い」といった声が散見されたことから、地域センター等及び事業主に対して、企業における障害のある社員との面接・相談等の状況についてヒアリングを行いました。 (1) 地域センター等へのヒアリング  令和6年度及び令和7(2025)年度に地域センター等(27か所)に対してヒアリングを実施したところ、地域センター等が把握している企業の雇用管理担当者(以下「担当者」という。)の意見としては次のようなものがありました。  指導的、一方的に話をしてしまいがちで、社員の話をうまく引き出せていないという思いがある。  雇用管理担当者のバックグラウンドによって、障害のある社員への対応が異なる等スキルにばらつきがある。  多くの業務を抱えており、障害者の雇用管理に関する情報収集が十分にできない。  本人を傷つけてしまうのではとの不安があり、フィードバックを躊躇している。  障害者支援の専門家ではないという気持ちから、支援ツールの活用に不安を感じ、躊躇している。  体調が不安定、怒りの表出が強い社員とどう面接してよいのか困っている。  睡眠等生活習慣が課題だった場合、企業としてどこまで触れてよい内容なのか迷う。 (2) 事業主へのヒアリング 令和6年度及び令和7年度に、障害のある社員の雇用管理を行う担当者(5社)に対してヒアリングを実施したところ、次のような意見がありました。  立場上の上下関係によって指導的な関わりになりやすいことや、担当者にそのつもりはなくても障害のある社員が「指導されている」という受け止めをする可能性もあるため、助言すべき内容であっても躊躇してしまう。  困っていること等を話してもらえるような相談の仕方が知りたい。  障害者の雇用が進む一方で、担当者の人員は増えていない。その中でどのように担当者側の人材育成をしたらよいのか困っている。  生活面の課題には基本的に踏み込まないようにしているが、安定勤務を目指した場合に生活面の課題は切り離せないことがある。  課題改善へ向けた単発的な取組はできているが、習慣化していくことが難しい。 (3) ニーズ等調査のまとめ  地域センター等及び事業主へのヒアリングにおいて把握できた面接・相談における課題についてカテゴリー化を行ったところ、表1のようになりました。 表1 ニーズ等調査結果 カテゴリー 課題 ① 関係性づくり ・本人からの話の引き出し方、話しやすい雰囲気づくり ② 課題の把握 ・不調の背景の確認方法 ・生活面の課題について、どこまで相談対応をするべきか ③ 目標設定 ・適切な目標設定の方法 ④ フィードバック ・批判にならない、一方的にならない注意等の伝え方 ・伝えるべきことを伝える際に配慮すべきこと ヒアリングの結果から、面接・相談における課題の多くは、障害のある社員との距離の取り方や率直な意見交換ができていない等コミュニケーション形成に係るものと推察されます。 職場でのコミュニケーションとしては、業務に関することが中心となるフォーマルなコミュニケーションと、会社や仕事に関わることや個人的な内容が含まれる、いわゆる雑談のようなインフォーマルなコミュニケーションがあります。なかでも、インフォーマルなコミュニケーションを通した相互理解が、日ごろのフォーマルな場面での障害者の働きやすさに寄与し得ると言われています。 しかし、いざ職場で雑談をしようと考えても、うまくコミュニケーションが取れない場合があると思います。 そこで、双方向のコミュニケーションを図るきっかけづくり(雑談できるような関係性づくり)のため、両者が「ともに学ぶ」形式の相談支援ツールとして視聴覚教材を開発することとしました。 3 視聴覚教材の開発 職業センターで開発した支援マニュアルNo.26別冊「職場適応を促進するための相談支援ツール集」をもとに、資料の改良、音声や字幕付きの視聴覚教材を開発しました。視聴覚教材活用の目的(イメージ)は図1のとおりです。 視聴覚教材のテーマとしては、誰もが心当たりのある、雇用管理担当者と障害のある社員との間で共通の話題としやすく、かつ相互理解に有効と思われるものを重視し、「運動」「食事」「睡眠」「習慣化」を選定しました。 また、事業主へのヒアリングの中で「職業センターの支援マニュアルNo.26別冊の中から『怒り』をテーマに取り上げて相談したところ、本人が怒っている理由がわかり、課題の背景の把握や問題解決がしやすくなった」といった意見がありました。さらに、地域センター等から「怒りのコントロールが課題の在職者に対する相談に利用しやすいツールがあるとよい」といった意見があったこと等を踏まえ、「怒り」についてもテーマに加えることとしました。 一緒に視聴覚教材を視聴する =「ともに学ぶ」ことで 共通の話題ができる 対話する =共通の話題で話をすることで 相互理解が図られる 図1 視聴覚教材活用の目的(イメージ)  これらの視聴覚教材の視聴を通してコミュニケーションのきっかけとし、どのように相互理解を図るか、そのポイントと注意点を併せて整理することとしました。詳しくは「第2章 視聴覚教材活用のポイントと注意点」(7頁以降)をご参照ください。  視聴覚教材の内容等詳細については、「第3章 視聴覚教材の構成・実施方法・内容」(19頁以降)をご覧ください。 なお、視聴用DVDと視聴時の配付資料は、別冊「雇用管理場面における職場適応を促進するための視聴覚教材」としてとりまとめています。 【参考文献】 障害者職業総合センター:調査研究報告書No.179「職場における情報共有の課題に関す る研究―オンラインコミュニケーションの広がりなど職場環境の変化を踏まえて―」(2025年) 第2章 視聴覚教材活用のポイントと注意点 第2章 視聴覚教材活用のポイントと注意点 視聴覚教材は、担当者と障害のある社員(以下「本人」という。)とが、「ともに学ぶ」こと、その体験を通じて両者が安心して話ができる関係性を構築していくことを目的とした支援ツールです。そのため、視聴するとともに、視聴中や視聴後に意見交換を行い、視聴覚教材の内容をきっかけにしてコミュニケーションを図っていくことが大切です。 視聴覚教材を活用したきっかけづくりと留意点を意識することで、より効果的な相談につながります。 1 活用のポイント (1) 「同じ情報を共有する」という立場で向き合う  視聴覚教材の内容を担当者自らが説明すると、指導的な立ち位置になってしまう可能性もあります。そうなると、「評価をされるかもしれない」と正直な気持ちを伝えづらくなることや、相談すること自体に消極的になってしまうかもしれません。しかし、視聴覚教材を一緒に視聴することで、「ともに学ぶ」立ち位置をとることができ、担当者は「一緒に考える人」として関わっていくことができます。  「一緒に考える人」という関係性ができると、本人も「指導・指摘される」という感覚ではなくなり、緊張感が緩和され、話しやすい雰囲気を作っていくことができます。 担当者 視聴覚教材を使うことで、指導者・支援者という立場を一旦脇に置いて、相手と関わることができました。セルフワークにお互いに取り組み、話し合うことで「一緒に取り組む」という一体感が生まれたように感じます。 (2) 双方向のコミュニケーションを図る  視聴覚教材を活用した意見交換では、担当者と本人が、お互いの状況や考え方等を伝え合い、双方向のコミュニケーションを図ることが重要です。「運動」「食事」「睡眠」等誰にとっても共通する話題では、自然な会話が生まれやすくなります。 視聴後に生活リズムや食事等、視聴した内容に関連するお互いの状況や工夫していること、気をつけていること等を伝え合うことで、双方向のコミュニケーションを図るきっかけにつながります。本人のことを少しでも理解できると、「理解してもらえている」という安心感が本人のなかで生まれます。その結果、以降の相談等に進んだ際に「安心して話ができる場」となることや、安心できることによって率直な意見を伝えやすくなるといった効果が期待できます。 ただし、生活習慣に密接に関わる話題は、個人の価値観が大きく影響しているため、過度に踏み込まないようにしましょう。人によっては「こうしなければならない」とルールのように受け取ってしまう可能性もあります。 率直に話し合える関係性を作っていくためには、「全部に取り組むことはなかなか難しいよね」等、視聴覚教材に対する意見も含めて、お互いに確認していくことが大切です。 本人 生活習慣に関する事柄だったので、話しやすかったです。 担当者 「一人暮らししながら働くって大変だよね」と話していると、「そうなんですよ」と現状の困りごとを続けて話してもらえました。そこから、働く上で課題となりそうな内容を拾っていくことができました。 (3) 担当者が自己開示をして関係性を深める  担当者が自分自身の困りごと等を自己開示し、本人と共有することで本人に安心感を与え、率直な意見交換がしやすくなり、本人も自己開示しやすい雰囲気になることが期待できます。 例えば、「教材ではこのように説明しているけど、実際に取り組んでいくことを考えると難しいところもあるよね」等と担当者が投げかけていくことで、「みんな完璧にできているわけではない」「苦手なことを話しても大丈夫かもしれない」等といった安心感を本人に与えることができます。 対処方法や工夫等を担当者が自己開示する場合は、相手が実際に取り入れられそうな内容について情報提供するイメージで、無理なくやってみようと思える範囲のことを伝えることもポイントです。 担当者 自分が実際に取り入れている対処方法を伝えることで、すぐに試してもらえました。それ以来、他の助言も聞き入れてもらいやすくなった気がします。 本人 担当者の方が「自分は~」と苦手なことも話してくださったので、自分の話がしやすかったです。 (4) 否定しない  関係づくりのための意見交換やその後の相談の場では、「評価される」「批判される」と本人が感じないように接することが大切です。否定的な反応や「あなたの課題は」等といきなり課題を提示するような言葉により、その場を苦痛に感じてさせてしまい、「もう話したくない」と逆効果になりかねません。 まずは、本人の話を否定せずに受け止めることで、安心して話ができる雰囲気を作ることが大切です。うなづきや相づちを通して、「話を聴いてもらえている」「受け止めてもらえている」といった姿勢を本人に示すことができ、安心感を与えることができます。 「それは大変ですね」等、相手の感情を言葉にして返すことも、共感を示す方法の一つです。  質問する際は、「なにかありますか?」と丸投げせず、「睡眠について、気をつけていることはありますか?」等同じ視聴覚教材を視聴しているメリットを活かし、共通の話題から自然に話を展開していくことで、話しやすい雰囲気づくりにつながります。 本人 否定されることがなかったので、少し言いづらい意見も安心して話すことができました。 担当者 「視聴覚教材のように取り組むのは簡単じゃないよね」等共感的に関わることで、本人からも「どうしたらいいかな」「これだったらできるかな」と率直に話してもらえるようになりました。 2 視聴覚教材を使った関係づくりの事例 場   面:「睡眠」を視聴したあとの意見交換 関 係 性:担当者が異動してきて1か月程度経った頃合い 視聴方法:1台のPCの前に並んで座り、一緒に視聴した 視聴後の意見交換にて… 本人  一緒に視聴したため、共通言語があって話しやすかったです。  質の良い睡眠をとるために気をつけている嗜好品等について話し合うことができました。 担当者  話題を選びやすかった。今回の内容に触れるなかで、自然に少しずつ「食事」等、他の話題へと移行していくことができました。  「伝える立場」から「一緒に受講する立場」になることで、担当者の率直な意見を言いやすくなったと思います。それを聞いた本人からの、率直な意見も引き出しやすくなりました。  質の良い睡眠をとるために実践していることがたくさんあると知り、本人が頑張っていることを知る機会になりました。 結果  関係が変化  雑談が自然にできる関係性になり、その後、本人から自主的に体調面についての相談をしてもらえるようになりました。 3 視聴覚教材活用の注意点  (1) 視聴覚教材を活用した相談の中止も検討する   視聴覚教材を活用した意見交換を一度行った上で、効果が感じられなかったり、本人からの訴え等が多くなっていく場合等、継続して視聴覚教材を活用することが難しいこともあります。  特に、視聴覚教材で紹介している内容を「絶対にこうしなければいけない」とルールのように捉えてしまう方の場合は、本人が苦しくなってしまいます。相談場面を苦痛に感じてしまうような材料になってしまう場合も逆効果です。   視聴覚教材の活用は、本人の様子・反応等を確認しながら検討していく必要があります。  (2) 本人が率直に話した内容に対して「指摘」や「指導」等はしない  視聴覚教材は、あくまでも「双方向のコミュニケーションを図るきっかけづくり」が目的です。 そのため、視聴後の意見交換で本人が率直に話した内容について指摘や指導等を行ってしまう(「朝食は食べないとだめ」「運動して体力をつけた方がいい」等)と、本人は「指導される」等と捉えてしまい、せっかくのインフォーマルなコミュニケーションの機会が逆効果になりかねません。指摘や指導をする必要がある場合には、日を改める等工夫することが望ましいでしょう。 双方向のコミュニケーションが図られ、「相談」に進む際の参考として、【特別寄稿】「『伝えたい』を『伝わる』に変える相談技法」(15~17頁)をご参照ください。 【特別寄稿】 「伝えたい」を「伝わる」に変える相談技法 職業能力開発総合大学校 能力開発院 助教 石田 百合子 1. はじめに:なぜ伝わらないのか 部下をお持ちの方にとって、部下へ指示やフィードバックをしたときに、「うまく伝わっていないな」と感じた経験は少なくないのではないでしょうか。また部下の相談を受けていて、励ますつもりで「もっと頑張って」と伝えたのにも関わらず、部下からは「叱責」と受け止められてしまったなど、「伝えること」、そして「伝わること」の難しさは、部下がいる方にとっては悩みの種のひとつかもしれません。 組織心理学の研究によれば、人は曖昧な指示よりも具体的な行動目標を与えられた方が、パフォーマンスが高まるとされています。またフィードバックの効果に関する研究でも、指摘だけするよりも、「できている点+改善点」を組み合わせた方が行動変容につながりやすいことが示されています。こうした知見は古くから知られていますが、実際の職場ではあまり徹底されていないというのが実情ではないでしょうか。だからこそ、現場で意識的に取り入れることに意味があります。 こうした「伝えたい」と「伝わる」のギャップを埋める工夫をすることは、日常的な部下指導や相談の場面では欠かせません。そしてこれらの工夫は、障害者の職場適応や休職者の復職支援といった、配慮が必要な場面にも有効です。 2. 伝わるための「伝え方」の基本原則 相手のポジティブな行動につながるような伝え方をするには、どんな工夫をしたらよいでしょうか。基本となる、4つのポイントをご紹介します。 1. 具体化する:「10時までに報告書を提出」のように行動レベルで伝える。 2. 肯定と修正のバランスをとる:まず「できている点」を認め、次に改善点を示す。 3. 双方向性を意識する:「どう理解しましたか?」と確認し、認知のずれを防ぐ。 4. 記憶・記録に残る工夫をする:情報を短く区切る、メモを残すなど。これは従業員全般に有効ですが、復職直後や配慮が必要な社員には特に効果的。 コミュニケーションとは、話し手が一方的に情報を「発信」するだけでなく、受け手の「理解」があって初めて成立します。つまり、フィードバックを単なる「伝達」ではなく、「相互作用」としてとらえることがとても大切です。そしてこれらの工夫が、「相互作用」の強化につながります。 3. 多様な場面で活かせる工夫 それでは上記の4つのポイントを踏まえ、具体的にどんな場面で活用できそうかを考えてみましょう。 3-1. 日常的な部下指導の場面 よく知られているフィードバック手法として、「サンドイッチ型(できている点→改善点→期待)」や「KPT(Keep(維持していきたいこと)/Problem(改善すべきこと)/Try(改善のために挑戦すること))」があります。この順番でフィードバックすることで、部下は「自分は何を続け、何を直し、何に挑戦すればよいか」を理解しやすくなります。 例:サンドイッチ型の例 「資料は読みやすくまとまっていたね。ただ、数字の根拠を明記するとさらに良くなるよ。次回はその工夫も期待しています。」 KPTの例 「全員が意見を出せたのは良かった。しかし発言が重なったのは課題だから、次回は順番を決めてみよう。」 フィードバックをしたあとは、相手がどう理解して、どのような行動につなげようとしているかを確認することもポイントです。 3-2. 復職支援での工夫 復職直後の従業員は、特に不安を感じていることが多いので、「できている部分」を強調すると安心につながります。 例:面談で「午後は疲れる」ことを悩んでいると話す社員に「午前中は集中できていますね」と確認し、「午後は短い休憩を挟んでみましょう」と提案し、小さな成功体験を積むことで、体調も安定した。 ここで大切なのは「できないこと」ばかりを指摘せず、本人がすでに取り組めている点にも光を当てることです。これにより自分にできそうだという自己効力感が維持され、復職初期の不安定な時期でも前向きな行動を促すことができます。 3-3. 配慮が必要な従業員への工夫 「一度に多く伝えない」「書面で補足する」といった配慮は、障害のある従業員や復職者に限らず、新人や慣れない業務を担当する従業員にも有効です。 例:「電話対応では臨機応変に動いてください」と伝える代わりに、「①自分で判断できる内容」「②上司に確認が必要な内容」をリスト化して机に貼ることで、不安が軽減され、業務の進め方がスムーズになった。 このような工夫は特別なものではなく、誰にとってもわかりやすく安心できる働き方につながります。 4. 短期療法的アプローチを活用する もし上記でご紹介した工夫を試してもうまくいかない場合、さらに一歩踏み込んだアプローチが必要になってきます。ここでは、「短期療法的アプローチ」についてご紹介します。 臨床心理学の分野では、限られた回数の面談で効果を生み出す「短期療法(Brief Therapy)」という枠組みが発展してきました。特徴は、問題の深い原因を掘り下げるよりも、短期間で行動を変えるきっかけや糸口を見つけることに重視する点です。その中でも代表的なのが MRIアプローチ と SFA(解決志向アプローチ) です。どちらも「短期間で前に進むこと」を目指していますが、着眼点に違いがあります。 MRIアプローチ:パターンを変える発想 MRIアプローチでは、問題を深掘りするよりも「同じやり方を繰り返してもうまくいかないときは、やり方自体を変える」ことに焦点を当てます。 例えば、遅刻が改善しない社員に「もっと早く来て」と言い続けても効果がない場合、出勤直後に同僚と一緒に取り組むタスクを設定するなど「環境や仕組み」を変えることが効果的です。つまり「叱る言葉」ではなく「別の方法」で行動を促すのです。 解決志向アプローチ(SFA):うまくいく条件を見つける SFAでは「問題の原因」より「うまくいったとき」に注目します。「仕事を最後までやりきれない」との訴えに「一部でもできた日はありましたか?」と尋ねると、「午前中は進みやすい」「先輩に相談したら進んだ」と答えが返ってきます。つまり、本人の中にある「成功条件」を引き出すことで、次の行動につなげられるのです。 障害者雇用の現場でも、ジョブコーチと担当者が「できているときはどんな状況でしたか?」と共通の質問を使うことで、強みを共有でき、チームとして一貫した支援につなげることができます。 5. まとめ:フィードバックから対話へ 「伝えたこと」と「伝わったこと」は同じではありません。フィードバックとは単なる情報伝達ではなく、相手に理解され行動につながるための「コミュニケーションのプロセス」であり、「対話の入り口」です。「どう理解しましたか?」と尋ねたり、「次はどんな工夫ができそうですか?」と問いかけたりすることで、一方通行の伝達に終わらず、上司と部下が共に考える時間になります。こうした小さなやり取りを積み重ねることで、信頼関係が深まり、部下が主体的に動ける土台が育ちます。最近は、経営層と従業員、従業員同士での対話を重視する職場も増えています。普段からの対話を大切にすることが、個人の問題解決だけでなく、職場の問題解決や職場環境の改善にもつながります。 次に部下との面談やフィードバックをするとき、あなたはどんな工夫を試してみますか。 常にその問いを意識しながら実践を重ねることが、「伝えたい」を「伝わる」に変え、さらに「共に考える対話」へと発展させる第一歩となるはずです。 第3章 視聴覚教材の構成・活用方法・内容 第3章 視聴覚教材の構成・活用方法・内容 1 視聴覚教材の構成  視聴覚教材の構成は、表2のとおりです。なお、視聴覚教材本体は、別冊「雇用管理場面における職場適応を促進するための視聴覚教材」にとりまとめていますので、ご参照ください。 表2 視聴覚教材の構成  テーマ 主な内容 視聴時間 運動 ・運動習慣の振返り ・+10(プラス・テン)今より10分多く体を動かそう ・安全な運動習慣づくりのために 約5分 食事 ・栄養バランスついて ・心の健康と食習慣との関連 ・家計とのバランスを考えよう ・生活リズム・ライフスタイルとのバランス 約10分 睡眠 ・寝だめの効果は…? ・良い睡眠のためのポイント (環境/朝・日中・寝る前の過ごし方) ・睡眠に悪影響を及ぼすもの 約13分 習慣化をめざそう ・習慣化を考える際の留意点 ・行動目標を決めるコツ ・行動目標を続けるための工夫 ・行動目標を考えよう 約13分 怒りのしくみと 付き合い方 ・体・心に起きる怒りのサイン ・怒りに隠れている“本当の気持ち” ・怒りが生まれるメカニズム ・怒りへの対処(アンガーログ・怒りへの対処方法リスト) 約11分 ※ 視聴時間は、視聴覚教材自体の長さです。そのため、チェックをつけたり、考えたりする等の演習にかかる時間は含まれていません。実際に活用する際は、演習時間を考慮した時間設定をする必要があります。 視聴覚教材の中では、質問を投げかけていたり、チェック項目を設けたりしています。それらの項目について「どこにチェックがつきましたか?」「工夫していることは何ですか?」等と質問することや、「私はなかなか続かなくて…」等と自己開示をすることで、双方向のコミュニケーションを図るきっかけづくりをねらいとしています。 視聴覚教材をともに視聴することで、同じ情報や言葉の意味を共有した上で話をすることができ、会話の内容をお互いに理解しやすくなります。 (1)視聴覚教材作成にあたっての工夫  視聴覚教材の作成にあたり、以下の点を工夫しています。  双方向のコミュニケーションを図るきっかけづくりを目的としていることや視聴にかかる時間を短くするため、各視聴覚教材の情報量は最低限に抑えています。  視聴覚教材の内容から注意が逸れることを避けるため、色味やイラストといった視覚情報を最小限にしています。同様に、内容に集中できるよう、音量は一定に保っています。  画面に一度に表示する文字数を減らし、スライドに掲載していない説明は字幕(グレー背景に黒文字のもの)を挿入しています。  情報量や文字数が多いスライドについては、AI音声が読み上げる文章をアニメーションで表示し、説明している箇所を目で追えるようにしています。  視聴覚教材の内容により注意が向くよう、背景の色を、説明箇所は白、話題の切り替え箇所は色を付け、場面を切り替えています。  音声の再生スピードを標準よりもゆっくりにしたり、場面転換の際に1呼吸間をおいたり、句読点箇所では少し長めに間をあけるようにしています。  目立たせたい単語を強調するために、接続詞や助詞のアクセントを低くしています。 2 視聴覚教材の活用方法  以下のように、様々な形式で活用することができます。 ・雇用管理担当者と障害のある社員とで一緒に視聴して意見交換を行う。 ・個々人で視聴し、振返り相談を行う。 ・社員研修等複数名で同時に視聴し、意見交換を行う 等。 3 視聴覚教材の内容 (1)運動 ア.準備する物  視聴覚教材「運動」  視聴するための機器  配付資料 ※「イ.視聴覚教材の紹介」で使用している資料と内容は同じです。 イ.視聴覚教材の紹介  配付資料をもとに、視聴覚教材の内容を紹介します。 「運動」  *配付資料は動画視聴開始時に配付します。 1 安定して働き続け、皆さんの力を発揮していくためには、心と体の健康を保つことが必要です。 そこで、この動画では、健康を保つために必要な生活習慣のうち、運動に注目し、一般的な知識をご紹介します。 2 まず、自分の生活習慣を振り返ってみましょう。これから、日頃の生活を振り返る6つの質問をします。 当てはまるものがあれば、チェックをつけてみましょう。 □上の階に行くときは、ほとんどエレベーターやエスカレーターを使う。 □体を動かす、動き出すのはおっくうだ。 □階段を少し上がったり、いつもより多く歩いただけで息が切れる。 □休みの日は家でゴロゴロしている。 □5~10分程度の距離でも歩きたくない。 □最近、疲れやすい。 当てはまるものはありましたか?運動について、日頃意識して取り組んでいることはあるか、動画を止めて、周囲の方と話し合ってみましょう。 意見交換の時間は終了です。 3 今よりも10分多く体を動かす取組「プラステン」と呼ばれる活動を知っていますか? 座りっぱなしの時間が長くなりすぎないように、少しでも体を動かしましょう。 1日合計60分を目安に、今より10分多く体を動かすようこころがけてみてはいかがでしょうか。 4 日常生活に+10分の活動を加えるためには、例えば朝、自転車通勤をする、歩いて子どもを送る、ラジオ体操、ウォーキングをするなどの工夫が考えられます。 午前中は、階段を使う、仕事の合間に立ち上がり、座りっぱなしを防ぎましょう。 昼は、ランチを兼ねてちょっと歩きに行く、休憩中にストレッチをする。 夕方は、自転車通勤、運動施設に通う、ウォーキングをする、テレビを見ながら筋トレをするなどです。 普段の生活で意識して体を動かすことも、健康づくりになります。 5 運動習慣づくりの際に、誤ったやり方で体を動かすと、思わぬ事故やケガにつながることがあるので、注意が必要です。 □体を動かす時間は少しずつ増やしていく。 □体調が悪いときは無理をしない。 □体調が悪くなった場合や痛みが継続するような場合等は、医師などの専門家に相談することが大切です。 6 最後に、体調を維持するために、毎日の生活の中で+10分の運動に取り組んだ例と効果をご紹介します。 毎日10分間ウォーキングをした結果、疲れを感じにくくなりました。 パソコン作業30分ごとに首・肩・背中等のストレッチをするように意識したところ、頭痛・肩こりが緩和されたと感じた方もいます。 歯磨きをしながら、スクワットをするようにしたところ、汗をかきやすくなったと感じた方もいました。 このように、皆さんも手軽に始められる運動を日頃の生活に取り入れていったらいかがでしょうか。 運動についてのご紹介は以上です。皆さん、お疲れ様でした。 ウ.双方向のコミュニケーションを図るきっかけづくりとして工夫している点 運動に関する6つの質問にチェックをつけた後「運動について、日頃意識して取り組んでいることはあるか、動画を止めて、周囲の方と話し合ってみましょう」と意見交換のきっかけになるよう投げかけています。 取り組んでいることの具体例について話が展開できれば「それ、いいですね」「続けているのはすごいことです」と肯定し、「特に取り組んでいることがない」等の回答の場合は「実は私も運動は苦手です」等と返答をすることで、できていることを求めているわけではないことを伝えることができます。 言葉が出づらい人にとっても、選択肢を設けることで発言を引き出し、会話を広げるきっかけとして使用できます。 エ.意見交換にあたってのヒント  意見交換を行う際の会話の例を紹介します。ご自分の話しやすいセリフや内容にアレンジする際の参考にしてください。 (例) ●「日頃、運動について意識して取り組んでいることはありますか?」 ●「通勤でどれくらい歩いている?それだけでも実は結構な運動になりそうだよね。」 ●「歯磨きをしながらスクワットしている人がいるって聞いたのですが、やったことはありますか?」 ●「退勤後にジムやヨガに行っている人って結構聞くけどすごいよね。自分は難しいなと思っちゃうことがあるけど、どう思う?」 ●「家で手軽にできる運動ってどんなものがありそう?」 ●「私も運動が苦手で、エレベーターやエスカレーターではなく階段を使うよう意識してみたのですが、最初は息が上がっちゃって大変でした。」 (2)食事 ア.準備する物  視聴覚教材「食事」  視聴するための機器  配付資料 ※「イ.視聴覚教材の紹介」で使用している資料と内容は同じです。 イ.視聴覚教材の紹介  配付資料をもとに、視聴覚教材の内容を紹介します。 「食事」  *配付資料は動画視聴開始時に配付します。 1 安定して働き続け、皆さんの力を発揮していくためには、心と体の健康を保つことが必要です。 そこで、この動画では、健康を保つために必要な生活習慣のうち食事に注目し、一般的な知識をご紹介します。 大切な食事についてみていきましょう。 2 これから、6つの問題に答えていただきます。正しいと思うものは〇、違うと思うものは×で答えてください。動画を止めて、個人ワークを行ってください。 個人ワークの時間は終了です。1問ずつ答え合わせをしましょう。 Q:①野菜をたくさん食べれば、栄養バランスは完璧。 A:×です。 Q:②炭水化物(糖質)はできるだけ摂取しない方がよい。 A:×です。 Q:③一日に必要なエネルギー量(カロリー)を超えなければ、どんな食べ方でもOK。  A:×です。 【解説】三大栄養素であるタンパク質、脂質、炭水化物は、エネルギーのもとになり、バランスよく摂取することが大切です。野菜だけでは、タンパク質も脂質も足りません。バランスを意識して、選び方を工夫しましょう。パッケージの栄養成分表示を活用するのもよいでしょう。 Q:④自分のエネルギー摂取量が適切かどうかは、食べたもののエネルギーを計算しないとわからない。 A:×です。 【解説】体重の変化を見ればわかります。体重の増減は、エネルギーの摂取量と消費量 のバランスの目安です。 Q:⑤スリムな体型であれば、食事を見直す必要はない。 A:×です。 【解説】痩せすぎは問題ありです。また、痩せている人でも、筋肉や骨と比べて脂肪が多い「隠れ肥満」の人がいると言われています。必要なエネルギー量が摂取できていない、筋肉の材料になるタンパク質や筋肉をつくるために必要な栄養素が不足している可能性があります。痩せていても、偏った食事をしている人は要注意です。しっかり食べて、健康的な体を目指しましょう。 Q:⑥朝食を食べなくても、1日に必要なエネルギー量や栄養素がとれていれば問題ない。 A:△です。 【解説】1日2食で必要な栄養素をとることは、かなり難しいです。朝食を食べない人は、いくつかの栄養素が1日に必要な量と比べて不足しがちなことがわかっています。 3 食習慣は心の健康にも関連があります。近年、偏った食生活やカロリーのとりすぎ、栄養不足等の食習慣の問題が、心の不調にもつながるということが明らかになってきました。 日々の生活の中で、やる気が起きなかったり、気分が落ち込んだり、そうしたちょっとした不調を抱えてはいませんか。その不調は食事の乱れのせいかもしれません。 例えば、毎日しっかり食べていても、スナック菓子や菓子パン、カップ麺ばかりでは必要な栄養が不足します。バランスよく食べることが大切です。普段の食習慣を振り返りましょう。 この後、いくつか取り組めそうな工夫の例をご紹介するので、取り組めそうなことがあるか考えてみてください。 4 食事は、心のケアにもつながります。例えば、元気がない時に食事をするのが億劫になるといった経験はありませんか? 心を元気にする代表的な栄養素として、タンパク質、食物繊維、鉄、葉酸等があります。どのような食品に多く含まれているかをまとめていますので、参考にしてください。 5 健康のために必要な栄養素をとるためには、どのように食事をとればよいでしょうか。 バランスのとれた適切な量と質の食事を、1日3食規則正しく食べることが健康な体の土台となるため、毎日3食「主食」「主菜」「副菜」を組み合わせて適切な量の食事をバランスよくとるとよいと言われています。 「主食」は、ご飯やパン、麺類等の炭水化物を多く含むものです。体を動かすエネルギーになります。 「主菜」は、魚や肉、卵、大豆等のタンパク質や脂質を多く含むもので、体をつくるものです。 「副菜」は、ビタミン、ミネラル、食物繊維等体の調子を整えるものです。野菜、いも、海藻、きのこ等があげられます。 「汁物」は、具だくさんの味噌汁やスープがおすすめです。加えて、1日1回「牛乳・乳製品」、「果物」をとるとよいと言われています。 食べ方の癖はあるものです。体のだるさを感じた時等は栄養素を確認してみてください。 6 ここまで、食事の栄養バランスについて考えてきました。しかし、栄養バランスのよい食事をするには、家計やライフスタイル、生活リズム等色々なハードルがあるものです。 例えば、家計とのバランスを考えてみましょう。野菜の旬を知って買い物をすることや、冷凍野菜を活用する方法もあります。旬の野菜は値段が手頃なだけでなく、豊富な栄養素を含みます。また、もやし、玉ねぎ、じゃがいものように、一年を通して比較的価格が安定している野菜もあります。その時々の、お買い得な野菜をうまくとり入れましょう。 いつも買い物に行くのは誰ですか?仕事をしている時、仕事を始めた後は誰が買い物に行きますか?周りの人に買い物の工夫を聞いてみましょう。 7 生活リズムとライフスタイルとのバランスについても見てみましょう。 忙しい日は、夕飯が遅くなってしまう時があるかもしれません。そんな時は、夕方に軽く食べておくと、帰宅後の食事の後、血糖値の急上昇を抑えられ、また、空腹で帰宅した際の食べ過ぎの予防にもなります。 遅い時間の食事になってしまった時には、コンビニ食材でも作れる、こんな簡単なメニューを考えてみました。カット野菜と豆腐でさっぱり鍋にする、ネギと温泉卵をカップスープにプラスする等のメニューはいかがでしょうか?翌日に影響しないように、胃に負担をかけない食事を選ぶことが大事です。 8 次のスライド、「考えてみよう!」では、 ①食事について、意識していることや改善できるといいなと思うことを書き出してみましょう。 ②今日からできそうな工夫を書き出してみましょう。大きな目標ではなく、今日からできそうなことで構いません。 動画を止めて、個人ワークを行ってください。 個人ワークの時間は終了です。工夫できそうなことについて、ぜひ取り組んでみてください。以上で「食事」を終わります。 ウ.双方向のコミュニケーションを図るきっかけづくりとして工夫している点 「1日3食『主食』『主菜』『副菜』をとろう!」とバランス良く食べる大切さを解説した後に、「食べ方の癖はあるものです」と補足説明を加えました。人それぞれ食べ方の特徴があることを伝えることにより、食事について話がしやすくなるよう工夫しています。 「皆さんは、元気な時は食事に興味がある。逆に元気がない時は食事をすることが億劫になる。そんな経験はありませんか?」と誰にでも生じうる場面を想像できるよう、字幕・音声で問いかけています。誰もが経験のある内容を問いかけることにより、自分自身の経験を振り返る機会となり、スムーズな意見交換が期待できます。 「買い物はいつも誰がしていますか?」「仕事をしている時、仕事を始めた後は誰が買い物に行きますか?」と問いかけ、家族等と同居している人も、単身生活の人も回答できる質問を設けています。食事の話題から、生活習慣等自然に会話を広げていくことも可能です。 エ.意見交換にあたってのヒント  意見交換を行う際の会話の例を紹介します。ご自分の話しやすいセリフや内容にアレンジする際の参考にしてください。 (例) ●「昨日の夜、何食べました?」 ●「(スライド4「心を元気にする栄養素」を示しながら)昨日の夕食やよく食べるものに〇をつけてみませんか?」「〇がついた栄養素ってなにかありました?」 ●「朝食を摂った方がよいとよく聞きますが、なかなか食べる気にならなくて」「朝ごはんは食べる派ですか?」 ●「ついつい食べたくなるものってありますか?」 ●「外食やお惣菜等を買う時に気を付けていることはありますか?」 ●「普段、お昼ご飯はどこで食べていますか?自席?休憩室?」 (3)睡眠 ア.準備する物  視聴覚教材「睡眠」  視聴するための機器  配付資料 ※「イ.視聴覚教材の紹介」で使用している資料と内容は同じです。 イ.視聴覚教材の紹介  配付資料をもとに、視聴覚教材の内容を紹介します。 「睡眠」  *配付資料は動画視聴開始時に配付します。 1 安定して働き続け、皆さんの力を発揮していくためには、心と体の健康を保つことが必要です。 そこで、この動画では、健康を保つために必要な生活習慣のうち睡眠に注目し、一般的な知識をご紹介します。 大切な、睡眠についてみていきましょう。 2 睡眠は健康の増進や維持に必要不可欠な休養活動です。 良い睡眠は、脳や心血管等だけでなく、精神的な健康の増進や維持に重要です。睡眠が悪化することで、これらに関連した様々な疾患の発症リスクが増加し、寿命短縮リスクが高まると報告されています。 また、睡眠は日中の活動で生じた心身の疲労を回復する機能とともに、成長や記憶(学習)の定着・強化等環境への適応能力を向上させる機能を備えています。 3  まずは、必要な睡眠時間の考え方についてご紹介します。 必要な睡眠時間は人それぞれです。日中の眠気が生じなければ十分とされています。必要な睡眠時間は、個人差があるとともに、年代によっても変化します。 睡眠時間は季節によっても変化し、夏季に比べて冬季に10~40分程度長くなることが示されています。 成人においては、おおよそ6~8時間が適正な睡眠時間と考えられ、1日の睡眠時間が少なくとも6時間以上確保できるように努めることが推奨されます。 現在のあなたの平均的な睡眠時間はどのくらいですか?振り返ってみましょう。 (個人ワーク終了後) 何時間と書きましたか?また、ちょうどよいと感じる睡眠時間は何時間でしょうか? 4 平日と休日で、睡眠時間に大きな開きがある方はいませんか?寝だめの効果はあるのでしょうか? 平日の睡眠不足(睡眠負債)を休日に取り戻そうと、長い睡眠時間を確保する「寝だめ」では、実際には眠りを「ためる」ことはできません。休日に長時間の睡眠が必要な場合は、平日の睡眠時間が不足しているサインです。平日に十分な睡眠時間を確保できるよう、睡眠習慣を見直す必要があります。 5  良い睡眠は、量と質、睡眠時間と睡眠休養感が十分に確保されていることで担保されます。 睡眠の量と質を十分に確保するために必要な3つのポイントを見ていきましょう。 ポイントの1つ目は「睡眠環境」、2つ目は「生活習慣~質のよい睡眠につながる過ごし方~」、3つ目は「嗜好品のとり方~睡眠に悪影響を及ぼすもの~」です。 6 これから、良い睡眠をとるための環境づくりや過ごし方をご紹介します。 資料のチェックボックスに、すでに取り入れていることには〇、これから取り入れたいことにはチェックを記入してください。 資料に記入しながら、動画を視聴してください。 7 睡眠環境について、まずは「光の環境づくり」を見ていきましょう。寝室が明るすぎる、眠る直前までスマートフォンやタブレット端末を操作していることはありませんか? 「できるだけ暗くして寝る」寝ている間は、低い照度の光でも睡眠の効率を下げてしまいます。スマートフォンやタブレット端末を持ち込まず、できるだけ暗くして寝ることが良い睡眠をとるポイントです。 8 睡眠環境には、温度も重要です。夏は涼しく、冬は温かくする。寝室が暑すぎる、寒すぎることはありませんか? 夏の寝室の室温上昇時に睡眠時間が短くなり、睡眠効率が低下します。涼しさを維持することが重要です。 一方、冬は、就寝前に過ごす部屋の室温が低いと寝つくまでの時間が長くなります。冬は、就寝前にできるだけ温かい部屋で過ごすことも重要です。 9 良い睡眠のためのポイントの2つ目は「生活習慣~良い睡眠につながる過ごし方~」です。朝、日中、寝る前に分けてみていきましょう。 良い睡眠につながる朝の過ごし方です。 朝日を浴びる。朝目が覚めたら部屋に朝日をとり入れ、日中はできるだけ日光を浴びるように心がけましょう。就寝時の速やかな入眠が期待できます。 10 続いては、朝食をとる、です。朝食も体内時計の調整に役立ちます。朝食を欠食すると、体内時計がずれてしまい、寝つきの悪化によって睡眠不足を生じやすくなります。 11 質の良い睡眠につながる日中の過ごし方です。 適度な運動をする。日中に体をしっかり動かすことは、眠りやすくする効果がある等睡眠の質を高めます。 まずは定期的に運動する習慣を身につけ、少しずつ運動時間を増やしていきましょう。 12 良い睡眠のための日中の過ごし方として、いくつかご紹介します。 生活活動は、日常生活における労働、家事、通勤・通学等の活動のことを指します。例えば、買い物、洗濯、掃除等の家事、犬の散歩、子どもと遊ぶ、通学・階段昇降、荷物運搬、農作業等の仕事上の活動等です。 対して、運動は、体力の維持、向上を目的に計画的・意図的に実施する活動のことです。例えば、ウォーキング等の有酸素運動、エアロビクス、ジョギング、サイクリング、太極拳、スポーツ、筋力トレーニング、ヨガ、余暇時間の散歩等です。 意識的に時間を長めに設ける等により、適度な運動時間を確保することができるでしょう。参考にしてみてください。 13 良い睡眠のための寝る前の過ごし方についてもみていきましょう。 リラックスする時間を確保する。寝床につく少なくとも1時間前には家事や仕事等を終えましょう。リラックスする時間を確保することは、眠りやすさにつながります。 14 寝る前の過ごし方2つ目は、リラクゼーション法を試すです。就寝前にリラックスするための方法として、瞑想法、ヨガ、腹式呼吸、筋弛緩法、音楽やアロマ等があり、それらにより眠りやすさにつながり、睡眠の質を高める可能性が示されています。 ただし、全ての人に効果があるリラクゼーション法はありませんので、いろいろと試してみながら、自分に合った方法を探してみましょう。 15 寝る前の過ごし方の3つ目は、入浴です。就寝前に少しぬるめの湯船にゆっくりつかると、体全体が温まり、血行が良くなります。その結果、寝つきが良くなる、睡眠が深くなる効果があり、睡眠の質も良くなります。 いくつチェックがつきましたか? 16 良い睡眠をとるために、悪影響を及ぼすものを避けるとよいでしょう。 睡眠に悪影響を及ぼすものの1つ目は、カフェインです。カフェインは、寝つきの悪化等睡眠の質を低下させる可能性があります。そのため、カフェインの量を確認し、飲みすぎないようにしましょう。エナジードリンク等のカフェインを多く含む清涼飲料水とアルコールを一緒に摂取しないように注意しましょう。 カフェインは、コーヒー以外に、緑茶、ほうじ茶、玄米茶、ジャスミン茶、ウーロン茶、紅茶、エナジードリンク等にも含まれていますので、ノンカフェインの飲料に代えてみることもおすすめです。 17 睡眠に悪影響を及ぼすものの2つ目は、アルコールです。寝酒(ねざけ)として、眠るためにアルコールを飲まれる方もいらっしゃるかもしれません。アルコ―ルを飲むと寝つきがよくなることもある一方で、睡眠が浅くなり、利尿作用もあることから中途覚醒、早朝覚醒しやすくなると言われています。 習慣的な寝酒は、中途覚醒の増加等睡眠の質の悪化とも関連していると言われています。 寝酒も含めて、大量のアルコール摂取や毎日の飲酒を避けることがポイントです。飲酒の量、時間、頻度を気にかけましょう。 18 睡眠に悪影響を及ぼすものの3つ目は、タバコです。タバコに含まれるニコチンには、覚醒作用があります。睡眠前の喫煙は、寝つきの悪化、中途覚醒の増加、睡眠効率の低下、深睡眠の減少をもたらします。 また、夕方以降の喫煙であっても、眠る前までその作用は残存することがあります。 夕方以降の喫煙は避ける等注意した方が良さそうです。 19 最後に、睡眠に関して、自分が行動できそうな目標を設定し取り組まれ、効果がみられた経験者の例をご紹介します。 できそうなもの、自分ならこのような目標を立てたい等と思ったことがあれば、皆さんの取組の参考にしていただけたらと思います。 目的を「生活リズムを安定させる」として、行動目標を「毎日23時までにベットに入る」として取り組んだところ、「23時が近づくと眠くなるようになった」と効果を感じた方もいます。 「睡眠の質を向上させる」ために、「毎日就寝前の5分間マッサージ」をしたところ、「入眠しやすくなった」方もいました。 「睡眠をとって疲れを翌日に持ち越さずに働く」ために「お風呂上がりにストレッチ」を取り入れたところ、「リラックスでき、睡眠の質がよくなった」と感じた方もいました。 睡眠についてのご紹介は以上です。 ウ.双方向のコミュニケーションを図るきっかけづくりとして工夫している点  「良い睡眠をとるために、工夫していることはありますか?」と音声が読み上げることで、視聴者全員に向けて自分自身の振り返りと発話を促しています。  睡眠は心身の健康に直結する重要な要素ではありますが、その改善方法は人それぞれ異なります。そのため、意見交換の中で相手の取組を引き出し、認め合うプロセスが大切です。  「朝」「日中」「就寝前」と3つの場面に分けて、質の良い睡眠につながる過ごし方を紹介しています。配付資料には、「すでに取り入れていること」には〇を、「これから取り入れたいこと」にはチェックを付けられる欄を設け、視覚的に「できていること」「やってみたいと思っていること」を振り返ることができるようにしています。これらの欄をお互いに確認し合いながら話をすることで、「できていること」を認める・褒める等相手の努力を自然と肯定しやすくなります。「やってみたいこと」を確認しながら「私はこう取り組んでいるよ」等情報提供を行い自然と担当者が自己開示できる点もねらいとしています。  「睡眠に悪影響を及ぼすもの」も紹介しています。このパートでは、チェック欄はあえて設けず、「体に悪いから止める」ではなく、代わりに何をするか、どこまでなら良いこととするのかを一緒に考える際のヒントとして活用いただけるよう工夫しています。 エ.意見交換にあたってのヒント  意見交換を行う際の会話の例を紹介します。ご自分の話しやすいセリフや内容にアレンジする際の参考にしてください。 (例) ●「何時間寝るとちょうどよいと感じますか?」 ●「理想の睡眠時間は何時間くらいですか?」 ●「寝る前に、私は読書を習慣にしているのですが、○○さんが習慣にしていることは なにかありますか?」 ●「休日は何時ごろに起きてますか?」「よくないとわかってはいるのですが…私は昼ご ろまで寝てしまうことがあります」 ●「寝不足の日はどうしていますか?」 ●「良い睡眠をとるために、工夫していることってなにかありますか?」 (4)習慣化をめざそう ア.準備する物  視聴覚教材「習慣化をめざそう」  視聴するための機器  配付資料 ※「イ.視聴覚教材の紹介」で使用している資料と内容は同じです。  ワークシート「行動目標を考えよう」  「行動ノート」 イ.視聴覚教材の紹介  配付資料をもとに、視聴覚教材の内容を紹介します。 「習慣化をめざそう」 *配付資料・ワークシート・行動ノートは動画視聴開始時に配付します。 1 習慣化された行動は、強い意思がなくても無意識で行うことができます。「やる必要はあるけど、面倒に感じる」といった行動も習慣化できると継続することが、苦ではなくなります。 職場で長く働くために「できたらいいな」と思う行動が自然にできる状態を目指し、どうするとよいかというコツを知るために、「習慣化をめざそう」 を一緒に見てみまし ょう。 2 習慣化には、段階があります。行動変容ステージモデルでは、人が行動を変える場合、5つのステージを通ると考えます。 行動変容のステージを一つでも先に進むには、その人が今どのステージにいるかを把握し、それぞれのステージに合わせた働きかけが必要になります。 行動変容のステージモデルは、無関心期、関心期、準備期、実行期、維持期があります。 3  習慣化を考える際の留意点です。 常に「無関心期」から「維持期」に順調に進むとは限りません。いったん「実行期」や「維持期」に入ったのに、その後行動変容する前のステージに戻ってしまう「逆戻り」という現象も起こり得ます。焦らず取り組みましょう。 (この後、習慣化したい行動目標のワークに進むかどうかを決められます。以下の通り音声が流れますので、受講者の状況によって使い分けてください。) ・動画視聴を終了し、周囲の方と「最近意識して行っていること」「毎日行っていること」等について話し合ってみるのもよいでしょう。 ・習慣化を目指し、行動目標を設定するコツを知りたい方は動画の続きをご覧ください。 4 それでは、習慣化したい行動目標を決めていきましょう 5  「できたらいいな」と思う行動を考えましょう。 行動目標を決める前に、注意点として、通院していらっしゃる方は、医師の指導内容を確認し必要なことに取り組みましょう。 心の安定や体調の維持、健康増進のために、今自分に必要な生活習慣は何か、改めて確認しましょう。 取り組む内容について、正確な知識を学習することも大切です。偏った情報や極端な情報に注意しましょう。医師からの情報や信頼性の高い根拠に基づいた情報等を踏まえて、目標を考えてみましょう。 6 行動目標の決め方には、順番があります。これから、行動目標を決める際のコツを2つご紹介します。 コツのその1は、将来の目的を意識することです。将来的に目指したい自分のイメージを考えてみましょう。例えば、「健康的に働き続ける」を将来の目的としたとします。 次に、3か月後にどうなっていたいかをイメージしてみましょう。例えば、無理のない運動を継続し、体力がついている等です。 最後に、そのために習慣化したい、今できる行動目標を考えます。3か月後には無理のない運動を継続し体力がついていることをイメージして、行動目標は1駅分歩くこととしました。 行動目標を立てる際は、メリットも一緒に考えることがポイントです。 7 コツのその2は、達成できそうな目標にすることです。意欲を持って取り組むためには、その目標が自分にとって「達成できそうだな」と感じられることが重要です。 行動目標を決める時は、それが3か月後にも継続できているという自信が80%ぐらいあるものにすることがコツです。例えば、「毎日ジョギングを1時間する」よりも「週3回1駅分歩く」等です。 複数のことを同時に行わず、“1つに絞って”やってみましょう。例えば、「早起きして、散歩もする!」よりも「帰宅時に1駅分歩く」から始める等です。複数のことに同時に取り組むと、結果的にエネルギー切れになり続かなかったということが考えられます。1つの目標に絞って取り組んでみましょう。 負荷の低い目標からはじめて、それができてから、目標のレベルを上げていきましょう。例えば、「週3回、1駅分歩くことができたら、次に、週5回や行き帰りにしてみる」等です。 急に大きな変化を伴う行動をするよりも、小さな変化から始めてみることがコツです。 急激な変化を与えることは、体の痛みを伴ったり、ストレスをもたらしたりする場合があります。負荷は少しずつ高めていきましょう。 8 行動目標を続けるための工夫についても考えておくことが大切です。 すでに習慣化されている行動に関連付けると、取り組みやすいと言われています。例えば、帰宅時に電車に乗る行動が習慣化しているから、1駅分歩いてから電車に乗ろう等です。 想定しない事態が起こることもあるので、いつもと違うことが起こった時の対応を事前に考えておきましょう。例えば、一駅分歩こうと思ったら雨が降ってきた。「今日は、家でスクワットを20回にしよう」等です。 おっくう感や面倒くささを感じないように準備をしておくことも大切です。例えば、通勤はスニーカーにしてみよう等です。何か行動を起こす際には、労力を少なくすると、行動に移しやすくなります。 新しい行動を開始すると、やれる日もやれない日も発生します。できなかった時の気持ちの切り替え方法を考えておくことも大切です。例えば、「今日はできなかったけど、今週は2回歩けたなあ」と、できたこと・気持ちを切り替えられたことに目を向ける等です。  うまくいかなかった時の自分なりの対処方法や気持ちの持ち直し方について、あらかじめ考えておきましょう。 9  習慣化に取り組んだ、経験者の例をご紹介します。できそうなもの、自分ならこのような目標を立てたい等思ったことがあれば、皆さんの取組の参考にしていただけたらと思います。 習慣化したい行動をテーマごとにご紹介します。まずは、食事に関する行動目標を設定した事例です。 ・健康的な状態を維持したいので、行動目標を「野菜から食べる」に設定しました。 ・働き続けるための体力をつけたいので、行動目標は「朝食を食べる」としました。 ・定年まで健康でいたいので「一口30回以上噛む」を行動目標に設定した方もいます。 取り組みたいことと、近い内容の行動目標はありましたか? 次は、運動を行動目標にした例をご紹介します。 ・無理のない運動を継続することを目的に、「散歩またはランニングを週2回、30分やる」を行動目標としました。 ・体を動かすことの習慣化を目的に、「平日は“みんなの体操”土日は“ラジオ体操”をする」を行動目標としました。 ・通勤と働き続けるための体力をつけるために、毎日10分間、ウォーキングをするを行動目標にした方もいます。運動を習慣にしたい方は、参考にしてみてください。 10 最後に、睡眠をテーマに、習慣化に取り組んだ例をご紹介します。 ・生活リズムを安定させるために、毎日就寝前に5分間マッサージをする。 ・翌日に疲れを持ち越さずに働くために、毎日23時までにベットに入ることを行動目標にした方もいます。 ・寝つきをよくするために、好きなアロマの香りを嗅ぐといった行動目標を設定し、取り組まれた方もいます。 疲労の蓄積や寝つき等睡眠に関する行動目標を設定する方は、参考にしてみてください。 習慣化に取り組んだ事例の紹介は以上です。 11 *ワークシート「行動目標を考えよう」を手元に準備する。 それでは、自分自身の行動目標を考えてみましょう。ワークシート「行動目標を考えよう」をご用意ください。 記入する内容を説明します。まず最初に、将来の目的や数年後、数か月後をイメージしましょう。将来的に目指したいイメージ、3か月後のイメージを考え、そのために習慣化したい行動目標を決めましょう。 次に、行動目標のメリットやメリットを増やすためにできる工夫を考えます。目標に取り組むメリットの例は、運動すると気分転換になる、体を動かすことが楽になる等です。メリットを増やすためにできる工夫の例は、カレンダーにシールを貼る、運動の後は好きなものを食べる等です。 最後に、続けるための工夫を考えましょう。 ・いつもと違うことが起こった時、どのように対応しますか? ・おっくう感や面倒くささを感じないために何を準備しますか? ・できなかった時の気持ちの切り替え方法も事前に考えておきましょう。 12 *「行動ノート」を手元に準備する。 行動目標を決めたら、「行動ノート」に記録しましょう。 行動ノートは、行動目標の取組状況を記録するシートです。先ほど考えた、数か月後の目的と行動目標を、それぞれ「目的」と「行動目標」の欄に書き写します。結果欄には、日付と曜日を記入し、行動目標に取り組んだ日は〇をつけます。ふり返り欄には、1週間ごとに、得られた効果や翌週の取組に向けた改善点があれば、記入していきましょう。 行動ノートの一番下には、体の変化と気分の変化を記録する欄があります。 ①体の変化について、「体力」「体調」「生活リズム」「変化なし」「その他」の項目から選んでください。 ②気分の変化は、「楽しい」「嬉しい」「わくわく」「幸せ」「自信」「リフレッシュ」「安心」「達成感」「落ち着き」「つらい」「悲しい」「うんざり」「落ち込み」「変化なし」「その他」の項目から、当てはまるものにチェックをつけてください。 職場で長く働くために「できたらいいな」と思う行動が、自然にできる状態を目指しましょう。 以上で、「習慣化をめざそう」を終わります。 ウ.双方向のコミュニケーションを図るきっかけづくりとして工夫している点 「知識付与」と「行動目標を立てる」ことの2段階構成としています。知識付与の部分のみの視聴の場合も「動画を止めて『最近意識して行っていること』『毎日続けていること』等について話し合ってみることもよいでしょう」と意見交換を促す工夫をしています。 「行動目標を立てる」まで視聴し、行動目標を立てた場合は、その後に「この前立てた行動目標の取り組み状況はどう?」等と会話をするきっかけにもつながります。 エ.意見交換にあたってのヒント  意見交換を行う際の会話の例を紹介します。ご自分の話しやすいセリフや内容にアレンジする際の参考にしてください。 (例) ●「習慣にしていることってなにかありますか?」 ●「私はなかなか続けることが難しくて…」 ●「最近、意識して行っていることはありますか?」 ●「毎日習慣にしていることはありますか?」 ●「仕事を始める前のルーティンは、何かありますか?」 ●「最近気になっていることや学んでみたいと思っていることはありますか?」 ●「もし時間がもっとあったら、何をしたいですか?」 (5)怒りのしくみと付き合い方 ア.準備する物  視聴覚教材「怒りのしくみと付き合い方」  視聴するための機器  配付資料 ※「イ.視聴覚教材の紹介」で使用している資料と内容は同じです。 イ.視聴覚教材の紹介  配付資料をもとに、視聴覚教材の内容を紹介します。 「怒りのしくみと付き合い方」  *配付資料は動画視聴開始時に配付します。 1 「怒り」はそれ自体が不快なものなので、私たちは、できるだけ怒りの感情を抑えようとします。 2 ですが、怒りの感情に気がつかないでいると、「肩こり」「頭痛、めまい」「食欲がなくなる」「睡眠の質が低下する」等の症状があらわれることがあります。 3 怒りは、心にも変化を与えます。「ささいなことでイライラする」「相手に責任があると強く感じる」「責める気持ちが高まる」「自分が傷ついた、犠牲になっていると感じる」等があげられます。 心の健康も、人間関係も、職業生活を送る上では、どちらも重要なものです。 怒りのしくみと付き合い方について、一緒にみていきま しょう。 4 怒りの感情は、何の前触れもなく、生まれる感情ではありません。怒りの奥には、本当の気持ちが隠れています。 怒りは、二次感情と呼ばれ、怒りの奥に隠れている本当の気持ちは、一次感情と呼ばれています。一次感情は、「期待感」「悲しみ」「失望感」「疲労」「不安感」「挫折感」等です。自分でもなかなか気づきにくい気持ちや要望が隠れていて、つらい感情ほど気づきにくいものです。 怒りに隠れている本当の気持ちに気がつきにくい方は、自分自身に問いかけてみましょう。 ・「今日、イライラしているのは?」→「疲れているから」 ・「上司の言葉にムッとしたのは?」→「突然だったから」 ・「後輩に怒ったのは?」→「がっかりしたから」 ・「子どもを𠮟りつけたのは?」→「心配したから」 ・「思わず言い返したのは?」→「否定されたようで、悔しかったから」 誰しも思い当たるような経験があるのではないでしょうか? 5  次に、怒りの気持ちがどのように大きくなっていくのかをみてみましょう。 怒りは、「絶対に許さない!」「やっつけてやる!」等はじめから大きいことはあまりありません。最初は「好きじゃないな」「がっかりだ」等怒りとは感じないようなマイルドな感情が芽生えます。この段階で怒りをうまく伝えることができれば、冷静さを保ちつつ相手にうまく伝えることができます。 しかし、マイルドな怒りの段階で、自分の気持ちを伝えずに怒りを内側に溜めていると、怒りは徐々に「腹立たしい」「イライラする」「反対だ」等中程度の怒りへと高まります。 そして、いつのまにか自分では対処不能なものになっています。 さらに怒りが高まると、「激怒」「はらわたが煮えくり返る」といった最も強度な怒りにまでエスカレートしてしまいます。この段階では、怒りは攻撃で出すしかなくなってしまいます。 怒りは、大きくならないうちに小出しにする等の対処をすることが大切です。 6 怒りが生まれるメカニズムをみていきましょう。怒りの感情は、3つの段階があります。 第1段階では、何らかの出来事や言動を見たり聞いたりします。例えば、「会議中に携帯電話が鳴る」等です。 第2段階では、その出来事や言動の意味づけをします。例えば、「会議中に携帯電話を鳴らすべきではない」等です。 ここでネガティブな意味づけが行われると、第3段階として、怒りの感情が発生します。例えば、「常識がない!」とイライラする等です。 反対に、第2段階でポジティブな意味づけが行われれば、怒りの感情が引き起こされることはないでしょう。 7 例えば、第2段階で「誰にでも起こりうることだ」「先輩も忙しい証拠だ」等とポジティブな受け止め方ができると、「今、大切なのは会議の内容だ」と自分の役割に集中できるかもしれません。 つまり、怒りの感情は出来事そのものではなく、それをどう意味づけするか、どのように捉えるのかによって引き起こされます 8 怒りをコントロールしよう。 怒りを感じるのは自然なことです。怒りは自分自身を守るという役割があります。ただし、怒りに縛られると、自分の人生が損なわれてしまいます。 怒りをうまくコントロールして上手に付き合うと、職場の人間関係が円滑になるなどのメリットがあります。 9 怒りを感じた原因・状況を整理しよう。 何に怒りを感じているのか、どうしたいのかを考えることによって、その後の行動を選択できます。怒りの対処策は1つではありません。いろいろな選択肢をあげてみましょう。 皆さんなら、どのような対処方法を考えますか?動画を止めて、周囲の方と意見交換をしましょう。 意見交換の時間は終了です。これから、怒りへの対処方法を紹介します。 10 怒りへの対処には、その場の怒りを鎮めるための対処と、もやもやした気持ちを和らげるための対処の2種類があります。 その場の怒りを鎮めるための対処は「6秒数える」「その場を離れる」「深呼吸する」「水分をとる」「セルフトークをする」等です。セルフトークは、自分自身を落ち着けるための言葉を自分に語りかけることです。 11 もやもやした気持ちを和らげるための対処は「ストレッチをする」「心が安らぐ風景を思い浮かべる」「好きなものや人の写真を見る」「入浴する」「一晩眠る」「書き出す・見える化する」等です。 怒りを翌日に持ち越さないことが大切です。 12 これから、怒りを見える化する方法の1つである、アンガーログを紹介します。アンガーログは、怒りを感じたときに、その気持ちを書き出すシートです。 「日時」「場所」「出来事」「思ったこと」「感情の強さ」「実際にとった行動」「その結果」を記入します。 「感情の強さ」の欄には、怒り以外にも生じた感情があれば合わせて記入します。 シートに沿ってしてほしかったことや、自分はどうしてほしかったのか、「願望」や「希望」などの本音を記入します。 13 〈記入のポイント〉 アンガーログはすべての欄を埋める必要はありません。 「出来事」は、起きたことをそのまま書きましょう。 14 アンガーログを書くことで「クールダウンできた」「自分の怒りを客観的に見つめることができた」「自分で選んだ対処方法を実際に試すことで、怒りの感情に振り回されることなく行動できた」と効果を感じた方もいました。 15 怒りとうまく付き合うために、自分の怒りのパターンを把握し、自分にあった対処方法をみつけておきましょう。 自分にあった対処方法を検討する際の参考資料として、〈怒りへの対処方法リスト〉をご紹介します。職業センターのプログラム受講生が対処方法として実践し、効果があったものをリストにまとめました。周囲の人の対処方法も参考にしてみてください。 これで、怒りのしくみと付き合い方を終わります。 ウ.双方向のコミュニケーションを図るきっかけづくりとして工夫している点 怒りの奥に隠れている本当の気持ちに気がつきにくい方は「上司の言葉にムッとしたのは?」等の具体例を通して、自分自身に問いかけやすくする工夫をしています。また、「誰しも思い当たるような経験があるのではないでしょうか?」「思い起こしてみましょう」と字幕でさらに問いかけることで、思い起こした内容を共有しやすくする効果を期待しています。 また、怒りとの付き合い方を考える上での対処方法として、参考資料「怒りへの対処方法リスト」を添付しています。参考資料をもとに「私はこんな対処をしているよ」「この対処って効果はあるのかな?」等意見交換のきっかけの一つとしてご活用ください。 エ.意見交換にあたってのヒント  意見交換を行う際の会話の例を紹介します。ご自分の話しやすいセリフや内容にアレンジする際の参考にしてください。 (例) ●「思い当たる経験はありましたか?」 ●「怒ることってありますか?」「最近、どんなことで怒りました?」 ●「怒りを感じたときに、どんな言葉を自分にかけたいと思う?」 ●「私はあまり怒らないタイプだと思っていたけど、対処方法リストの『深呼吸』はよくしているかもしれない。○○さんはどう?」 ●「(対処方法リストを見ながら)すでに取り組んでることはありました?」 【参考文献一覧】 ◆睡眠 1)「健康づくりのための睡眠ガイド2023」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/content/001305530.pdf) 2)「カフェインの過剰摂取について」(農林水産省)(https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/hazard_chem /caffeine.html) ◆食事 3)「考える やってみる みんなで広げるちょうどよいバランスの食生活」(農林水産省)    (https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/wakaisedai/attach/pdf/balance-8.pdf) ◆運動 4)「成人版アクティブガイド-健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023-」 (厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/content/001361383.pdf) ◆習慣化をめざそう 5)「健康日本21アクション支援システム~健康づくりサポートネット~行動変容ステー  ジモデル」(厚生労働省) (https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/exercise/s-07-001) 6)障害者職業総合センター職業センター:支援マニュアルNo.26「職場適応を促進する ための相談支援技法の開発~ジョブコーチ支援における活用に向けて~」(2024) ◆怒りのしくみと付き合い方 7)障害者職業総合センター職業センター:支援マニュアルNo.26「職場適応を促進する ための相談技法の開発~ジョブコーチ支援における活用に向けて~」(2024) 8)障害者職業総合センター職業センター:支援マニュアルNo.12「気分障害等の精神疾 患で休職中の方のためのアンガーコントロール支援~講習編~」(2015) おわりに  本実践報告書の作成にあたり、当初は当センターでこれまで開発してきた様々な教材等の支援ツールを、企業の障害者の雇用管理場面においても活用できるよう、企業担当者向けに改良することに主眼を置きました。  改良を検討するにあたって実施した調査の際に、企業担当者から「障害のある社員とどのように関係を築いていけばいいのかわからない」といった意見が少なからずあり、障害のある社員に対して慎重に接していることが窺えました。  また、当機構の令和6年3月発行調査研究報告書№176「障害者の雇用の実態等に関する調査研究」によると、障害のある社員の4割以上が職場に対して合理的な配慮を求めることに躊躇しているとの状況が浮かび上がり、障害のある社員も少なからず、企業の担当者に対して壁を感じていることが想像されます。  「心のバリアフリー」が提唱されて久しく、風通しの良い職場環境づくりや、最近では、障害者の雇用支援の現場でも、心理的安全性の確保の重要性等といったことが指摘されることが多くなっています。しかし、いざ、障害のある社員と良好な関係を築こうとした際に、職場の人間関係が希薄になっている中で、どのようなことから始めればいいのか、「言うは易し行うは難し」といった状況に置かれている企業担当者の悩みはとてもよく理解できます。  このような背景から、本実践報告書は、企業の担当者と障害のある社員が、日ごろの雑談もできるような関係づくりのための「初めの一歩」を踏み出すための視聴覚教材等を開発し、取りまとめました。 本視聴覚教材が媒介となり、障害のある社員が働く職場が互いに尊重し合える空間となることを願っています。 障害者職業総合センター職業センター実践報告書No.44 雇用管理場面における職場適応を促進するための相談技法 ~自社社員との相互理解を図る視聴覚教材~ 発 行 日 令和8年3月 編集・発行 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター職業センター 所在地:〒261-0014 千葉県千葉市美浜区若葉3-1-3 電 話:043-297-9043(代表) U R L:https://www.nivr.jeed.go.jp 印刷・製本 株式会社 コームラ この成果物の著作権の取扱いについては、著作権法及び当機構の規程(独立行政法人高 齢・障害・求職者雇用支援機構のホームページを参照)の定めるところによるものとし、 ご利用なさる方は著作権法で認められている範囲を逸脱しないように、文化庁の著作権に 関するサイト等をご確認いただき適切なご利用をお願いします。 当機構ホームページ「著作権・免責・リンク」 https://www.jeed.go.jp/general/copyright/index.html ISSN 1881-0381 リサイクル適性A この印刷物は、印刷用の紙へリサイクルできます。 (表紙とCDを除く)